時を操る男、ひろし──日常の狭間にひそむ倒錯の快楽
――昼下がりの駅前。
太陽は高く、ガラス張りのオフィスビルを白く照らしていた。
平日の日中、忙しなく行き交う人々。そのなかで、ひろしは静かに歩いていた。
スーツ姿に、飾り気のない黒髪。年齢は三十代半ば。
一見、どこにでもいるサラリーマンにしか見えない。
けれど、彼はその内に、誰にも知られてはいけない“力”を秘めていた。
それは「時を止める力」。
どんなに騒がしい街中でも、ひろしがほんの少し集中し、指を鳴らせば――
世界の音も、動きも、呼吸さえも、ぴたりと静止する。
その中で、彼だけが、好きなように好きな女を選び、好きなだけ弄ぶことができるのだった。
ひろしが歩く通りは、カフェやショップが軒を連ねる繁華街。
人の流れに目を走らせると、色とりどりの服をまとった若い女たちが目につく。
学校帰りの制服姿の少女、OL風のタイトスカートにヒールの女、
ママ友同士で賑やかに歩く主婦たち……
ひろしの視線は、彼女たちの膨らみや柔らかそうなラインを、舐めるように眺めた。
彼には、もうひとつの“特別な技”がある。
それは、「操り」──
ひろしの意のままに、相手の体を自由に動かし、意識も残したまま快楽を植えつけることができる。
時間を止めて好きなように弄ぶこともできるし、
時を動かしたまま、本人の意識を保ったまま恥ずかしいことをさせることもできる。
羞恥、困惑、恐怖、快楽……
女たちの様々な反応を、この世で唯一、ひろしだけが堪能できるのだ。
今日のひろしは、じっくり“最高の一人”を見定めたい気分だった。
だから、足を止めては店先で立ち話をする女たち、
急ぎ足で信号を渡る女性たちを、いやらしい目つきで眺めていく。
――たとえば、ひときわ目を引く女がいた。
黒髪を一つ結びにし、深緑色のワンピースを着こなした女性。
年齢は二十代半ば。
真面目そうな顔立ち、凛とした眉。だが、胸元から覗く肌は意外と白く、透き通るような柔らかさ。
肩には上品なトートバッグ。左手に小ぶりの文庫本を持っている。
きっと、昼休みの時間にお気に入りのカフェに向かう途中なのだろう。
彼女の名は、まだ知らない。だが、その雰囲気から漂う“清潔感”と“奥ゆかしさ”が、
ひろしの中に、征服したい衝動を湧き上がらせた。
──いい女だ。こういう、心の隙間に手を突っ込みたくなる女を、どう崩していくか……
どんな顔で、どんな喘ぎ声をあげるのか、想像するだけで、ゾクゾクする。
そのほかにも、
友達と楽しげにスマホを覗くミニスカの女子大生、
高級ブランドバッグを腕にかけ、自信ありげに歩くキャリアウーマン風の女、
親子連れの奥で控えめに歩く、どこか儚げな未亡人のような人妻……
どの女も、それぞれに「壊し甲斐」のありそうな艶やかさを秘めていた。
ひろしの“悪い癖”は、ターゲットを決めるまで、
じっくりと観察し、女の性格や生い立ち、表情、仕草を想像して、
脳内で何度も何度も犯し尽くしてから、本当に行動を起こすことだった。
どの女にしようか……
今日は、一体どんな声を聞かせてくれるのだろうか。
――彼の目は、まるで新しいオモチャを探す子供のように輝いていた。
心の奥から湧き上がる期待と興奮が、ひろしの身体をじわじわと熱くさせる。
「……さて、そろそろ“遊び”の時間だ」
ひろしは小さく呟いた。
指先が、軽く弾かれる。
世界の色が、音が、すべて止まる瞬間――
ひろしだけが、狩人のように街を闊歩する。
次に、どの女に手をかけようか……
この“悪魔の午後”が、また始まる。
まだ誰も知らない、世界で一番淫らな遊戯の幕が、静かに上がろうとしていた。
マキマ 時間停止敗北
770円


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