異世界の闇、震える遥の夜――時空を越えた絶望と、山賊の影
大学生の遥は、講義を終えて静かな帰り道を歩いていたはずだった。
夜のコンビニでお気に入りのスイーツを買って、今日は早く寝よう――そう思っていた。
だが、突然足元がふわりと消え、意識が真っ白になったのだ。
どれほど眠ったのか、それとも数秒だったのか――。
遥が目を覚ました時、そこは見知らぬ薄暗い森の中だった。
「え……ここ、どこ?」
視界に映るのは、見慣れた都会の風景ではなく、鬱蒼と茂る木々と獣道。
スマホを取り出してみたものの、画面には「圏外」と表示されている。
何度リトライしても、助けを呼ぶ術はない。
スカートの裾を掴み、遥はパニックに呑まれそうな胸を押さえた。
まるで悪い夢だと信じたかった。
でも、頬をつねると鋭い痛みが返ってきて――
「夢じゃない……」
そう、呆然と呟く。
静寂を破ったのは、乾いた枯葉を踏みしめる重い足音だった。
「……だ、誰か、いるんですか……?」
声が震える。知らない世界。知らない場所。
遥の足元を、恐怖がすくませていく。
やがて、木々の間から二つの人影が現れる。
どちらも、遅れて現れた山の獣のような――
いかにも「山賊」としか思えない中年男たち。
一人は分厚い腹と毛深い腕をむき出しに、もう一人はぼさぼさの髪、油でテカった顔。
体中に、野性と汗と、酒の匂いがまとわりついている。
「おい、嬢ちゃん、こんなところでなにしてんだ?」
「……す、すみません、道に迷って……」
――お願い、普通の人であって。
遥は必死で冷静を装う。
だが、二人の視線が、じろじろと遥の脚や胸元を舐めるように這い回る。
それだけで、心臓が破裂しそうになる。
「道に迷っただと?
ハハハ、面白ぇな、こんな森の奥に女一人で。」
もう一人の山賊も、鼻で笑いながら近づいてくる。
その目つきは、明らかに善人ではない。
「ま、安心しな。オレら、こう見えて人助けも悪かねぇんだ。」
言葉とは裏腹に、太い指が遥の肩へと伸びてくる。
ぞわり――と、肌の上を悪寒が駆け抜ける。
「きゃっ、やめてください……!」
遥の声は、か細い。
二人は顔を見合わせ、にやりと下卑た笑みを交わす。
「嬢ちゃん、そんなに怖がらなくていいって。おい、座れや。」
片方の山賊が、無理やり遥を木の根元へ座らせる。
強引に腕を掴まれ、男の太い手の感触が、遥の肌に食い込む。
「やだ……怖い……どうして……」
逃げようと身をよじるが、彼らの力は遥の非力な身体には逆らえない。
「ほう、こんな綺麗な顔した嬢ちゃんが、こんなとこで……運がいいな、オレらも。」
「うん、可愛いじゃねぇか。泣き顔がまた、そそるんだよなぁ。」
「お願い、やめてください……っ」
必死の叫びも、森の中ではあまりにも無力だ。
「おい、そんな怖い顔すんなって。オレら、優しいぞ?」
大きな手が、遥の髪を乱暴に撫でる。
汗ばんだ掌の臭いが、鼻先を掠める。
ぞくりと、背筋が凍る。
遥の涙が頬を伝う。
「誰か、誰か助けて――!」
けれど、この森にその声が届く者はいない。
男たちは次第に態度を変え始める。
「なあ、もうちょい、近う寄れよ。寂しいだろ?」
「……やめてください……」
片方が遥の手首をがっしりと掴み、もう一人がスカートの裾をちらりとめくろうとする。
遥の体は、緊張と恐怖で強ばっていた。
「や、やだ……!」
森の暗闇の中、無慈悲な中年男たちの笑い声が響く。
服の隙間から、汗ばんだ指がするりと忍び寄る気配。
遥は、恐怖で息が詰まりそうになった。
「どうして私が、こんな目に……」
羞恥と絶望、助けを呼べない無力感。
世界に自分ひとりだけが取り残されたような、心細さ。
男たちは、遥の身体を値踏みするように舐める視線を交わしながら、ますます近づいてくる。
「なあ、いい子だから、じっとしてな。オレたち、あんまり怒らせたくないんだよ。」
声は優しげでありながら、底知れぬ欲望が滲む。
手は次第に、遥の太ももへと――。
遥の瞳は絶望に染まり、震える唇からは、悲痛な祈りだけが零れた。
「やめて、お願い……!」
その哀願すらも、ただの興奮材料として二人の耳に届くのみ。
「助けて……帰りたい……」
そう心で何度も叫ぶ遥だったが、男たちは容赦なく距離を詰めていく。
森の中、夜の静寂を打ち破るのは、遥の震える息と、中年男の荒い鼻息だけだった。
彼女はまだ何も知らない。
これから訪れる絶望と羞恥、快感の予感――そのすべてを。



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