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契約書の罠、遥の撮影(序章)vol.1

撮影
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普通の大学生・遥に忍び寄る罠 ― 清楚系イメージモデルの募集

  • 真面目な文学部生・遥の素顔
  • 「清楚系モデル」高額バイトへの応募
  • 簡単な面接と、契約書の罠
  • 下着姿の「演出」と、逃げ場のない現実

遥は、ただ普通の大学生活を送りたかっただけだった。

小さな頃から真面目で、人に迷惑をかけるのが何よりも嫌いな性格。
文学部に通う二十歳の大学生で、派手な付き合いはなく、バイトと授業を淡々とこなす日々。
恋愛経験も乏しく、男性に対してどこか警戒心を抱いていた。
処女、ということを隠す気はないが、誰かに打ち明けるほどの親しさを持つ相手もいない。
男が怖い――という感覚に近い。

そんな遥が、とある日、学内掲示板で見つけたモデルのアルバイトに目を留めた。

「清楚系イメージモデル募集」
「学生・未経験歓迎」
「交通費支給、1日で3万円」

──3万円。

生活費の足しにと、食費を切り詰めていた遥の目に、その金額は魔法のように魅力的に映った。

撮影内容の説明は曖昧だったが、「清楚系」とはっきり書かれていることが安心材料となった。
水着程度なら、大学の友人もインスタに上げている。
それくらいなら……と、自分に言い聞かせて応募フォームを送信した。

返信は早かった。
その日のうちに面接が決まり、遥は翌日、小さな撮影スタジオに足を運んだ。

面接は、拍子抜けするほど簡単だった。
部屋の中は清潔で、応対したスタッフの男も柔らかい物腰で丁寧だった。

「遥さんならぴったりだと思いますよ。清楚で、透明感があって。探してたイメージにまさに合致してます」

言葉を褒められ慣れていない遥は、赤くなりながら頷いた。
警戒心よりも、まさか自分が選ばれるとは――という小さな高揚感が勝っていた。

「こちら、契約書になります。一応、撮影における基本的な取り決めでして……」

男が差し出したのは、一枚のA4用紙だった。
そこには細かい文字がびっしりと並んでおり、「第5条:演出に同意すること」という文言が、ひときわ目立たない場所に紛れていた。

「何か不安な点があれば聞いてくださいね。でも基本的には、こちらで用意した衣装や演出に問題がなければ大丈夫です」

遥は、深く読み込むことなくサインをした。

なにせ「清楚系イメージモデル」と書いてあったのだ。
そんな自分が、過激なことをさせられるわけがない。
そう、疑うことすら思いつかなかった。


清楚系モデル撮影の現実 ― 逃げられない契約

撮影当日。
用意された衣装は、遥の予想を軽く超えていた。

レースのついた白い下着。
ブラジャーの布地は薄く、肩紐も細い。
ショーツに至っては、下着というよりも紐のような形をしていた。

「……これ、清楚系……ですか?」

遥の声は震えていた。
だが、スタッフは笑顔のまま言った。

「大丈夫、演出ですから。演出に同意いただいた契約書、覚えてますよね?」

その言葉に、遥の背筋が凍った。

「もし今キャンセルされる場合、違約金が発生してしまいます。こちら、読んでいただいた契約書にも記載されてますよ。……50万円

「っ……」

遥は、言葉を失った。
50万円――大学生の彼女にとって、それは絶対に払えない金額だった。
後ろにはスタッフ、そしてカメラ。
逃げ道はなかった。

「でも大丈夫。少し慣れてきたら、すぐ平気になりますよ」

遥は首を横に振ったが、衣装を持ったスタッフが、静かに扉を閉めた。

閉ざされた空間、逃げ場のない現実。
心臓の鼓動がやたらとうるさく響き、喉が渇いていく。

彼女の「普通の生活」は、この瞬間から静かに崩れ始めていた。

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