木々の葉が風に揺れ、遠くでカサリと枝の音がした。
空は薄曇り、湿り気を含んだ空気が肌にまとわりつく午後。
遥は、人気のない山道をひとり歩いていた。
軽いハイキングのつもりだった。
自然の中に身を置きたくて、週末を使って山へと足を運んだのだ。
だがその選択が、地獄の入り口になるとは思ってもみなかった。
ふいに足を滑らせ、遥の身体は前のめりに斜面を転がり落ちた。
乾いた落ち葉が舞い、細い枝が肌をかすめる。
心臓が喉から飛び出しそうな恐怖。
叫ぶことさえできなかった。
「――危ないッ!」
低く太い声と共に、遥の腕が誰かの手に掴まれた。
がっしりとした男の腕に抱き留められ、彼女の身体は寸前で転落を免れた。
「大丈夫か?」
見上げると、ひとりの男がいた。
日焼けした顔、短く刈られた髪。
体格は大きく、登山用の服に身を包んでいる。
「助けてくれて……ありがとうございます……っ」
遥は震える声でそう告げた。
その瞬間は、本当に救われたと感じた。
だが。
それが、罠の始まりだった。
男――ひろしと名乗ったその人物は、遥を「近くの山小屋で休ませてやる」と言った。
足首を軽くひねっていた遥は、抵抗できずに頷いた。
「無理しちゃいかん。今日は泊まっていけ。誰も来ないし、安全だ」
その言葉に、不安を覚えるべきだったのかもしれない。
だがあのときの遥は、ただ「助けてくれた恩人」だという認識しか持っていなかった。
小屋は、木々の奥にひっそりと建っていた。
古びてはいたが、中は清潔で、最低限の生活用品は整っていた。
だが――ドアには鍵がかけられ、窓は木の板で覆われていた。
「……あの、帰る手段は……?」
遥がそう尋ねたとき、ひろしの表情が変わった。
「無理だよ。今日はな。暗くなるし、あんたひとりじゃ滑落するだけだ」
「でも……連絡だけでも……」
「電波なんか入らないよ。ここは、そういう場所だ」
その声は、どこか冷たかった。
そして遥は気づく。
この男が、自分を助けたのではなく、捕らえたのだと。
じり、と近づいてくる男の影に、遥の背中は壁に貼り付いた。
足が震える。
心臓が、強く強く鳴る。
「こっち来ないで……っ」
「怖がらなくていいよ。優しくするから」
低い声が耳元に落ちてくる。
その吐息さえも、湿っていて粘つくようだった。
遥の肩に触れた指が、ぞわりと皮膚の上を這う。
反射的にその手を振り払おうとするが、力の差は歴然だった。
「やめて……ほんとに、やめてください……っ」
「こんな山奥に、処女のまま来たのか?」
「……えっ」
耳元で囁かれたその言葉に、遥の身体が凍りつく。
どうしてそれを――?
「わかるよ。歩き方、声、体つき……初々しすぎるんだよ。しかも、今日は危険日だろ?」
「……っ!」
下腹部が、キュウと疼いた。
知られてはいけない本能の情報を、なぜこの男が――
「女はわかりやすい。今日は、受け入れやすい日なんだろ? ほら、身体がそう言ってる」
言葉の端々が、じわじわと遥の精神を侵していく。
その目には、優しさも理性もない。
ただ、自分を雌として見る目だけがそこにあった。
押し倒された布団の上、遥は身体を硬直させたまま、逃げられないことを悟る。
重なる体温。
暴かれる衣服。
露わになる肌。
唇に触れる、粗い男の指。
涙が滲む目の端に、吐息が熱く吹きかかる。
「怖がらなくていい。処女、ちゃんと大事にしてやるから」
その言葉が、何よりも恐ろしかった。
大事にされたいわけじゃない。
望んでなんかいない。
だが、身体は恐怖と興奮の境界で、言葉を失っていた。
背筋を撫でる手、秘所に触れそうで触れないもどかしさ。
舌先が、鎖骨を這う。
「いや……あっ……や、だめ……っ」
震える声に重なるように、ひろしの舌が遥の耳朶を舐め取った。
「やっぱり、柔らかいな……ここも、こっちも……」
敏感な場所ばかりを狙うその手は、遥の防御本能をゆっくり溶かしていく。
拒絶の声が、次第に細くかすれていく。
「もう濡れてる……正直だね、身体は」
「ちがっ……うそ、そんなわけ……」
「嘘じゃないよ。ちゃんと、ほら……」
男の指が、湿り気を帯びた証拠を絡めとり、遥の目の前に突きつける。
絶望が、視界を覆った。
処女で、逃げ場のない密室。
しかも今日は、もっとも妊娠しやすい、排卵期。
「今日は、おまえの身体が受け入れるって言ってるんだ。拒めるわけがないだろ」
「やめて……っ、ほんとに……っ」
遥の抵抗は、涙に濡れた声と、指をかすかに掴むその細い腕だけ。
だが――その無力さすらも、ひろしにとっては最高の興奮材料だった。
「このまま、奥まで入れるぞ。いいな?。それとも、乱暴されるか奉仕するか選べ」
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