兄妹ふたり、重なる視線と止まらない鼓動の間で
残業明け、重い疲労を抱えて向かったホテルの一室。
まさかの再会から、ただ重い沈黙が流れていた。
妹・遥の姿は、照明の下でより鮮明に浮かび上がる。
どこか他人行儀な制服姿、そして不安げな表情。
ベッド脇の椅子に静かに座り、遥はしばらく俯いたまま何も言わなかった。
ひろしも、何を話せばいいのかわからない。
自分が予約した“新人”がまさか妹だったなんて、そんな偶然はドラマでも見たことがない。
けれど現実に、こうしてふたりだけの密室にいる。
お互いの呼吸、鼓動、指先の小さな動きさえ、すべてが過敏に伝わってしまう距離感だった。
遥は一度深呼吸し、ゆっくりとマスクを外す。
顎のラインから頬、首筋、そして胸元へと自然に視線が落ちる。
制服の襟元がわずかに開き、薄い肌色とふくらみがちらりと見えた。
普段、家で見慣れているはずの妹のはずなのに──
なぜか、今夜はまったく違う女の顔に見える。
ひろしは目を逸らそうとした。
だが、見てはいけないものに吸い寄せられるように、再び遥の胸元を盗み見てしまう。
禁断の思いが、じわじわと頭の奥に染み込んでくる。
遥がふと、こちらに気づいた。
「……どこ見てるの?」
からかうような、けれど少しだけ震えた声。
ひろしは咄嗟にうつむき、膝の上で手を握りしめた。
「いや、別に……」
視線を外した拍子に、思わず身体を前かがみにしてしまう。
けれどその動作で、今度は遥の胸元がさらに目の前に近づき、ますます意識してしまう。
気づけば、自分の股間が膨らみ始めているのを自覚した。
制服越しに、遥の小さな呼吸、首筋の血管の動き、その奥にある柔らかなふくらみ。
どれも普段は目に入れたくもなかった“妹”の身体が、今夜だけは妙に艶やかに見えてしまう。
息を潜めたまま、腰を引く。
けれど、遥の視線がぴたりと自分に向いているのに気づき、慌てて体勢を戻そうとした。
「……ふふ、お兄ちゃん、そんなに前かがみになってさ」
「もしかして、興奮してる?」
からかうような、けれどどこか幼さの残る声音。
ひろしは顔を赤らめ、言葉が出ない。
反論しようとしても、喉がつまってしまい、うまく声にならない。
「違うよ……そんなわけ……」
「へぇ? 本当に?」
遥は、椅子からそっと立ち上がる。
ベッドに腰掛けているひろしの正面に、距離を詰めて腰を下ろした。
すぐ目の前、胸元がちらりとのぞく距離。
香水とも汗ともつかない、生々しい匂いがふんわりと漂ってきた。
部屋の空気は静まり返り、時計の秒針だけがやけに大きく響く。
「お兄ちゃん、私のこと女として見てるの?」
遥の目は、不安と興味と、そしてどこか期待を含んだ複雑な色をしている。
ひろしはますます身体を硬くし、思わず股間を両手で隠すようにして前かがみになる。
それを見て、遥はまた少し声を落として笑った。
「本当は……こういうお仕事でも、こんなふうになることって滅多にないんだけどな」
「でも、今日のお兄ちゃん、なんか……かわいい」
その言葉に、ひろしは自分の心臓が壊れそうなほど高鳴るのを感じた。
「……やっぱり、目的あって呼んだんでしょ?」
遥の言葉は、妙に現実的で、けれどどこか寂しそうでもある。
「ねぇ、どうせお店には取り分持ってかれるんだよ」
「だからさ、……お兄ちゃんから直接もらえる方が、私も嬉しいんだけど」
遥がそっと手を差し出す。
指先が少し震えているのが見える。
「お小遣いくれたら、サービスしてあげるよ」
「本当に……それでいいんだよ?」
茶化すような、でもどこか本気の声。
家で見る遥とはまるで違う、大人びた響きがあった。
ひろしは、胸の奥で何かが弾けるような感覚に襲われていた。
普段なら絶対に踏み込まない“間”が、目の前にぽっかりと空いている。
妹の、女の表情。
目線。仕草。声のトーン。
全てがいつもとは違い、どうしようもなく心が乱されていく。
股間の膨らみはもう隠しようがなかった。
それを遥もはっきりと見ている。
そのうえで、またひとこと、からかうように笑った。
「もしかして、お兄ちゃん、もう……我慢できない感じ?」
そう言いながらも、遥の頬はほんのり赤く染まっていた。
その言葉に、ひろしは覚悟を決める。
これ以上、このままの空気でいるのは無理だった。
財布を取り出し、現金を数え始める。
「……今日のお店の分、二万円……」
一枚、二枚、ゆっくりとテーブルに重ねていく。
「それから……遥に、直接のお小遣い。二万円」
さらに新しい札をそっと差し出す。
「……全部で、四万円だよ」
手渡した札束が、遥の手の中でふわりと震える。
遥は、そのまま静かに受け取り、
少しだけ、顔を伏せて笑った。
「やっぱり、お兄ちゃんって……優しいんだね」
茶化すようでいて、どこか安堵と嬉しさが混じる声。
兄妹の距離は、もはや元には戻らない。
触れてはいけない“何か”が、確かに生まれようとしている。
胸元のふくらみ、柔らかな息、指先の熱、
そして、止まらない興奮。
部屋の外では、夜の街のざわめきが遠く響く。
しかし、この小さな密室だけは、
禁断の間となって、
ふたりだけの秘密と欲望が静かに膨らみ続けていた。
ひろしの視線と、遥の微笑み。
交わらなかったはずの感情が、
今、確かに絡み合い始めている──
官能の一線を越える“直前”。
すべての鼓動と呼吸が重なったまま、
時間はゆっくりと、だが確実にその境界線へと近づいていく。
夏のヤリなおし6
1,188円

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