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【デリヘル妹】小遣い欲しさの背徳の夜:vol.1(ホテルのドアの向こうにいたのは──妹だった)
▶ 選んで結末が変わる物語(全43話・19結末)
深夜のホテルの一室。息の詰まるような沈黙が、重く澱んだ空気と共にひろしの全身にのしかかっていた。
日々の仕事の重圧と拭いきれない疲労。それらをほんの一時だけでも忘れさせてくれる、行きずりの温もりを求めて呼んだはずのデリヘルだった。
だが、ドアを開けた先に立っていたのは、他でもない、彼の実の妹である遥だった。
その信じがたい現実を前に、ひろしは頭の中が真っ白になり、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
女子大生である妹の遥は、兄の視線を避けるように俯き、安っぽい派手なコスプレ衣装に身を包んだまま、居心地悪そうに身体を縮こまらせている。
二人の間に流れる時間は、まるで泥のように重く、そして決定的に冷え切っていた。
「……どうして、お兄ちゃんがここにいるの……?」
遥の震える声が、静寂を破った。兄を責めるというより、目の前の現実を処理しきれずに本気で混乱している様子だった。
ひろしは下を向いたまま、乾いた喉からどうにか言葉をひねり出した。
「……仕事で色々あってさ。なんか、こう……普段はやらないようなことを、衝動的にしたくなっただけだ。まさか、お前が来るなんて思わなかったし」
言い訳としてはあまりにも情けなく、空虚な響きを持っていた。
風俗嬢を呼んだ兄と、デリヘル嬢としてホテルにやってきた妹。どちらにも、正当化できる理由など存在しないのだから。
遥は少しの間を置いてから、ふう、と細い息を吐き出した。
「……なんか、やだな」
それだけ呟くと、遥は自分が着ている短いスカートの裾を、指先で所在なげにいじり始めた。
再び訪れた長い沈黙。部屋の備え付けのエアコンが立てる単調な作動音だけが、耳障りなほど大きく響いてくる。
どれだけの時間が経っただろうか。不意に、遥が顔を上げ、ひろしの方へと少しだけ身を乗り出した。
その瞳の奥には、どこかヤケになっているような、危うい決意の色が浮かんでいた。
「ねぇ、お兄ちゃん。……せっかく呼んだんだから、無駄にしたくないんでしょ?」
その言葉は、無理して大人ぶっているような、仕事で教え込まれたばかりの台詞をそのまま口にしているかのようだった。
「……お小遣いくれたら、わたしがサービス、するよ」
サービス──。
そのたった一言の生々しい響きが、今までかろうじて保たれていた兄妹という絶対的な境界線を、音を立てて揺るがしていく。
ひろしは、予想だにしなかった妹の提案に、息を呑んで固まった。
「お兄ちゃん、そういう目的あって呼んだんでしょ? ……どうせお店に代金の半分以上、取られちゃうし。それなら、私に直接ちょうだいよ」
遥の声は微かに震えていたが、そこには後戻りできない開き直りのようなものが確実に混じっていた。
ひろしは知っている。遥が昔から、一度言い出したら絶対に譲らない頑固な一面を持っていることを。
「……もちろん、私なんかとやりたくなかったら、いいけど。でも、今日の分のお小遣いは、絶対に私がもらわなきゃいけないから……っ」
本音と建前がに混ざり合った、複雑すぎる感情の吐露。
ひろしは無意識に手元の財布へと視線を落としたが、頭の中はまだ混乱の極みにあり、決断など到底下せる状態ではなかった。
(妹が、こんな場所で、俺に身体を売ろうと提案してくるなんて……)
想像すらしたことのない狂った夜。
部屋の空気は、少しでも動けばガラスのように粉々に割れてしまいそうに張り詰めている。
それでも、二人とも逃げるように席を立とうとはしなかった。
密室の息苦しいほどの静けさの中、ひろしの重く早い鼓動と、遥のかすかな、だが明らかな緊張を含んだ吐息だけが、じっとりと重なり合っていく。
遥はまだ、男の人の肌にまともに触れたことさえないはずだ。
それなのに、こんな密室で、よりにもよって実の兄を相手に、自らの身体を差し出そうとしている。
「……お兄ちゃん、どうするの……?」
遥が、不安げに上目遣いでひろしを見る。
その真っ白な柔肌は、ホテルの仄暗い間接照明に照らされて、ひどく無防備で、そして残酷なまでに魅惑的に思えた。
まだ男を知らない、純潔そのものの妹。
ひろしは、何かに操られるかのようにゆっくりと立ち上がり、ベッドから数歩歩いて、遥の目の前に立った。
遥はびくりと肩を大きく震わせたが、逃げることはしなかった。
ただ、ぎゅっときつく目を閉じ、震える両手で自らのスカートの端を握りしめている。
ひろしの震える手が、遥の華奢な肩に触れる。
薄いブラウス越しに伝わってくる体温は、驚くほどに熱かった。
「……っ、ん」
ただ肩に触れられただけで、遥の形の良い唇から小さく怯えたような声が漏れる。
極度の緊張からか、彼女の身体は石のように強張っていた。
(俺は、狂っているのか……? 実の妹だぞ……)
心の中で何度もためらい、何度も倫理の距離をはかり直す。
頭では、絶対に越えてはいけない一線だとわかっているのに。
目の前で目を閉じ、ひたすら自分に身を委ねようとしている妹のそのいじらしい姿が、ひろしのズボンの奥で熱を持ち始めた肉棒の猛烈な疼きを、どうしても抑えきれなくさせていた。
兄妹の背徳と、男としての抗いようのない本能とが、ひろしの理性を少しずつ、確実に蝕んでいく。
ひろしは、吸い込まれるようにゆっくりと、遥のブラウスの第一ボタンに指をかけた。
遥は小さく息を呑み、さらに身を硬くして身構えた。
外されたボタンの隙間から、まだ誰にも見られたことのない蕾を隠す、清廉な白い下着が微かに覗き見える。
二人の距離は、まだ決定的な一線を踏み越えることなく、ただ圧倒的な不安と期待、そして決して許されない禁断の緊張感だけが、部屋の隅々にまで静かに満ちていく。
──この夜の過ちが、ふたりに何を残すのか。まだ、誰にもわからなかった。
ただ、静かに開かれた背徳の扉の先には、もう後戻りできない深い暗闇が口を開けて待っていることだけは、確かだった。
遥の小さな震えが、指先を通じてひろしに伝わってくる。
「……お小遣いくれたら、サービスするよ」
先ほど遥が放った言葉が、頭の中で何度も反響していた。
サービスという響きが、あまりにも生々しく、密室の空気を決定的に変えてしまっている。
兄妹でなければ、ただの割り切った金銭の取り引きで済んだかもしれない。
だが、目の前にいるのは、幼い頃から守るべき対象であったはずの妹なのだ。
その妹が、金のために身体を売ろうとしている。そして自分は、その買い手としてここに立っている。
ひろしの奥底で、ドス黒い背徳感が精液のように脈打つ。
もう、理性のブレーキは完全に壊れかけていた。
ひろしはゆっくりと、ポケットから財布を取り出し、震える手で中から万札を抜き出した。
それをベッドのサイドテーブルに乱暴に置くと、遥の肩がびくりと跳ねた。
「これで……いいんだな」
かすれた声が出た。遥は、サイドテーブルに置かれた現金をじっと見つめ、それからゆっくりと頷いた。
彼女の瞳には、引き返せない道を選んでしまったという絶望と、それでも金を受け取るという歪んだ覚悟が滲んでいた。
現金という絶対的な対価が支払われたことで、二人の関係は完全に、兄と妹から、客と風俗嬢という最悪の形へと堕ちてしまったのだ。
ひろしは、もう一度遥のブラウスの第二ボタンへと指をかける。
今度は、もう何の迷いもなかった。ただ、目の前にいる妹の身体を暴きたいという強烈な欲望だけが、ひろしの全身を支配していた。
ホテルの分厚い扉の外の世界は、この狂った密室から完全に切り離され、誰一人として彼らを止めることはできない。
禁断の夜が、今、静かに、そして暴力的に幕を開けようとしていた。
ここまで読んでくれてありがとう
選択を変えれば、結末は変わります。
別のルートを試すか、他の物語へ。




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