暗闇に晒される純白――遥の肌に触れる悪意の手
リビングの空気は重く、張り詰めた緊張が室内を支配していた。
兄ひろしはうつ伏せのまま床に転がされ、縛られた手足にじりじりと痺れが広がっていく。
声を封じられ、ただ遥の身を案じて見つめるしかない。
その瞳の奥に、無力さと悔しさ、妹への深い祈りが色濃く滲んでいた。
遥は、兄のすぐ隣で床に倒されていた。
腕も足も、きつく縛り付けられ、身動き一つできない。
冷たい床の感触が薄いシャツ越しに背中へと沁みてくる。
鼓動は耳元でやけに大きく響き、呼吸もままならない。
何より、今にも崩れ落ちそうな恐怖と羞恥が、遥の全身を焼き尽くしていた。
目の前に立つ暴漢の男は、すでに金品の探索を終えていた。
現金も貴金属も見当たらず、苛立ちと飢えがその表情ににじむ。
「……金目の物がないな」
重く低い声が部屋を満たす。
それだけで遥の背筋は凍りついた。
男は視線を遥へと向けた。
獲物を品定めするような、ぞっとする熱を孕んだ眼差し。
――ゆっくりと近づいてくる。
リビングの電気の明かりが、遥の身体を淡く照らし出す。
制服ではない、普段着のゆったりしたニットとスカート――
けれどその布の下にある、無垢な肌も、震える柔らかな線も、
この夜だけは何の守りにもならなかった。
「こちらを楽しむとするか」
男の声が、静かに宣告する。
遥は、全身を戦慄させながら小さく身を縮める。
ひろしの目が見開かれる。
声にならない叫びが喉元でつかえたまま、
兄の身体は必死にもがく。
けれど、ガムテープで塞がれた口からは呻き声しか漏れない。
男はゆっくりと遥に手を伸ばす。
指先が、遥の足首の結び目をほどき始めた。
――ぎゅっ、と遥の心臓が強く跳ねる。
恐怖と羞恥に、涙がこみあげる。
でも、泣いたところで何も変わらない。
お兄ちゃんが見ている――それが、遥の心にさらなる絶望を落とす。
男は、遥の膝を強引に立たせると、
動揺で固まった身体を無造作に引き起こす。
「や、やめて……」
震える声で遥はつぶやく。
その声はまるで空気に吸い込まれるように消えていく。
男は、遥の肩をつかむと、手早く上着のニットをまくりあげる。
柔らかい生地が首もとを越え、遥の顔をかすめて脱がされる。
「こんな格好で男を油断させるとはな……」
遥の素肌があらわになる。
下着の肩紐、華奢な鎖骨、そして怯えに細く震える腕。
羞恥で顔を背けようとする遥を、男は無理やり自分の方へ向き直させる。
その視線が、裸の肌の一点一点に突き刺さるようだ。
次に、スカートのファスナーが下ろされる。
鈍い音が、遥の頭の中に響く。
腰のあたりで、布がずるりと下がる。
太ももをなぞるように、冷たい空気が滑っていく。
下着一枚だけの姿で、遥は床に立ち尽くす。
――お兄ちゃんが、すぐ隣にいる。
見られたくない。
だけど、抗えない。
男の手が、遥の下着へと伸びる。
「や、だめ……見ないで……」
囁きにもならない弱い声。
羞恥が、涙になって瞳の縁を濡らす。
男は、ブラジャーのホックを片手で外す。
ぱちり、と乾いた音が響き、肩紐がゆるむ。
遥の胸元を包んでいた淡い布が、すべり落ちる。
遥の胸が、冷たい空気に晒される。
乳首が硬くなる。
寒さと羞恥、そして得体の知れない恐怖。
男は、その柔らかい膨らみに手を伸ばすことなく、
ただ、じっと見つめて嗤う。
遥は必死に腕で胸元を隠そうとする。
だが、縛られた手首が自由を奪う。
もどかしさと絶望が絡みつき、身体が細かく震える。
(お兄ちゃん……助けて……見ないで……お願い……)
男の次の動作は、遥のショーツに指をかけることだった。
ゆっくり、慎重に、まるで遥の反応を楽しむように。
ゴムが太ももに食い込む。
ぐい、と引き下ろされていく。
やがて、遥の下半身も無防備に露わになる。
「おお、これは……清楚な顔して、なかなか……」
男は、遥の体を観察するように舐めるような視線を向ける。
遥は目を閉じ、歯を食いしばっている。
涙が頬を伝う。
ひろしは、隣でただ絶望的な眼差しを遥に向ける。
目の奥に、怒りと悔しさ、そして哀しみが混ざっていた。
男は、脱がせた下着を指で持ち上げ、
遥の前でひらひらと揺らして見せた。
「こんな可愛いの、穿いてるんだな」
その言葉が、遥の羞恥をさらにあおる。
無理やり立たされ、丸裸にされた遥は、
全身が火照るような屈辱と恐怖に包まれていた。
男はしばらくその姿を楽しんだあと、
遥の身体をゆっくりと床に座らせた。
背中はひろしのすぐ隣。
縛られているせいで、姿勢を変えることもできない。
(こんな……こんなこと……いやだ、お願い、誰か、助けて……)
男の手は遥の髪に触れる。
さらりとした黒髪をつかみ、顔を自分の方に向けさせる。
「お兄ちゃんも、妹がこんなに綺麗な身体してるなんて知らなかっただろう」
その声は、ひろしの羞恥心と怒りを同時に刺激した。
だが、何もできない。
遥も、視線を合わせることができず、
ただ下を向いて涙をぽたぽたと落とす。
男は、遥の首筋や肩にゆっくりと指先を這わせ始める。
皮膚がぞくりと粟立つ。
何もされていないはずなのに、
すべてを暴かれた羞恥が遥の身体を敏感にさせていく。
「ここが一番、恥ずかしいよな」
男は、遥の太ももをなぞりながら、
鼠径部ぎりぎりの部分を指で撫でていく。
遥は、思わず身体をよじろうとした。
しかし、縛られた手足がそれを許さない。
「ほら、もうちょっと足を開いて見せてくれよ」
男は強引に遥の膝を割るように開く。
遥の中心が、はっきりと明かりに晒される。
(見ないで……見ないで……お兄ちゃん、私……)
羞恥の極み。
息が詰まるような静寂のなかで、男の息だけが異様に大きく聞こえた。
遥の肌は、白く薄く、今にも溶けそうに震えている。
男は、遥の身体を様々な角度から眺めて楽しんでいるようだった。
時折、口元に冷笑を浮かべ、ひろしを挑発するような目つきで見返す。
ひろしは、妹の裸に直視できず、
それでも何度も視線を送ってしまう自分に、さらに苦しんだ。
――家族として守りたいはずだった。
けれど、現実はあまりに非情で、
今、妹は目の前で何もかもを奪われている。
男は遥の胸に再び指を伸ばした。
乳首の周囲をゆっくりと円を描くようになぞる。
遥の身体は、小さくぴくりと跳ねた。
「可愛いな」
男の指先は、遥の身体のラインを一つ一つ確かめる。
肩、腕、胸、腹、太もも、そして――
中心の秘められた場所までも、目だけで貪る。
遥はもう、なすすべもなく、
涙を流し続けるしかなかった。
その夜、遥の純白は静かに、しかし確実に闇に侵されていった。
――次第に、部屋の空気は粘りつくような湿度を帯び始める。
男の手は執拗に、遥の身体を撫でていく。
羞恥と恐怖、そしてどうしようもない無力感。
だが、遥は心の奥で小さく願った。
(お兄ちゃんだけは……無事でいて……)
暗い部屋の中、遥の肌だけが異様に白く浮かび上がっていた。


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