【店長の脅迫】万引き一度の過ち:vol.35(遥、否応なく溢れる欲望と涙)

万引きの代償 犯罪・強制

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【店長の脅迫】万引き一度の過ち:vol.35(遥、否応なく溢れる欲望と涙)

音が、途切れた。

ローターが蕾から離れ、洗面台の縁へ置かれる。低い唸りが止まると、狭い個室には、水栓から落ちる雫の音だけが残った。

遥は、洗面台の脇の壁に額を預けたまま、動けずにいた。タイルの冷たさが、火照った額にだけ、はっきりと伝わってくる。掴んでいた縁から指が剥がれ、腕が、糸の切れたように震えている。

呼吸が整わない。吸うたびに胸の奥が引きつれ、吐くたびに、喉が細い音を立てた。

洗面台と壁が作る角に、遥の身体は追い詰められていた。左の肩は壁に、右の腰は洗面台の縁に押しつけられ、逃げるための隙間は、もうどこにもない。

白いブラウスは汗で背中に貼りつき、その下で、肩甲骨が浅く上下している。胸元の名札のピンが壁に当たって、かちりと小さく鳴った。

背後の体温は、離れていなかった。肉棒を深く埋めたまま、ひろしは動きを止め、荒い息を遥のうなじに落としている。

「終わったと思ったか」

汗に濡れた背中を、掌がゆっくりと撫で下ろしていく。その指先が腰骨に触れただけで、遥の身体が跳ねた。

触れられた場所が、痛いほど敏感になっている。達したばかりの皮膚は、わずかな圧にも耐えられず、薄い刃で撫でられているようだった。

「……さわら、ないで……お願い……いま、は……」

言葉が、途中で震えて崩れた。

「今は、か。さっきは自分から尻を押し付けてきたくせに」

そんなことはしていない。そう言い返したかったが、喉が動かなかった。壁に突っ伏した身体が、絶頂のあいだにどう動いていたのか、遥自身にも、はっきりとは思い出せない。

その空白が、ひろしの言葉に、奇妙な重みを与えていた。

ひろしは片手でスマートフォンを取り出し、画面を遥の視界の隅へ差し出した。再生されているのは、広場の木陰に立ち尽くす、自分の青ざめた横顔だった。

小さな音声が流れる。噛み殺しきれなかった息の音。それが自分の声だと理解するまでに、少し時間がかかった。

広場で受けた視線の数が、頭の中で、数字になりかける。ベンチの家族連れ。風船を持った子供。すれ違った学生たち。誰かがひとりでも振り返っていたら。その仮定だけで、背筋が冷えた。

遥は、画面から目を逸らした。

指が、スカートの裾を腰の上までたくし上げる。プリーツの生地が、汗ばんだ背中に触れて、皺を寄せた。

脚の間から、熱いものがまた一筋、伝い落ちる。太ももの途中で止まった純白のショーツは、濡れて肌に貼りついていた。拭うことも、隠すこともできない。

水栓から、雫がひとつ落ちた。その音の間隔が、自分の脈より遅いことに、遥は気づく。

ひろしがそれを見下ろして、低く笑った。

「見ろよ。止まらないな」

遥は、目を閉じた。

だが、瞼の裏でも、その感触は消えなかった。太ももを伝う熱。脈を打つ肌の奥。まだ収まりきらない、小刻みな震え。自分の身体が、自分の意思とは無関係に、何かを溢れさせつづけている。

涙も、同じだった。

悲しいのか、恐ろしいのか、屈辱なのか。理由を数える前に、目の縁から熱い雫がこぼれ、頬を伝い、顎の先から洗面台の白い陶器に落ちた。止めようとして瞬きをするほど、次の雫が押し出される。

涙の温度が、頬の上で汗と混ざって、区別がつかなくなる。塩の味が、噛んだ唇の傷に触れて、遅れて疼いた。

洗面台の縁に、スマートフォンが立てかけられた。赤い録画灯が、鏡の中の遥の顔を、正面から捉えている。

「さっきの広場の動画より、こっちのほうがずっといい。あれは遠すぎた」

「顔を上げろ。手は、そこに置け」

指示されるまま、遥の手が洗面台の縁を探した。指先が、濡れた陶器の上で滑る。額は壁に預けたまま、どうにか縁を掴み直すと、ひろしの手が腰を引き上げ、爪先が、床から少しずつ浮いていく。

「まだ、終わりにしていいと言ってない」

ひろしの腰が、ゆっくりと動きはじめた。

達した直後の粘膜は、わずかな摩擦にも耐えられなかった。引き抜かれる感覚に腹の底が縮み、押し戻される圧に、息が押し出される。痛みに近い。それなのに、痛みだけでは説明のつかない熱が、その奥から、ゆっくりと立ち上がってくる。

彼の手が、遥の腰骨の両側を掴み直す。指の腹が皮膚に食い込む。痕が残るだろう、とどこか他人事のように思った。

腹の底に、重い圧迫が戻ってくる。内側の壁が、彼の形をなぞるように広げられ、また押し戻される。熱、硬さ、脈。遥はそのすべてを、皮膚の内側で、ひとつずつ数えさせられていた。

「……ゃ……もう、ゆるして……ください……」

「許してほしいなら、もっと声を聞かせろ」

「それとも、外の連中に聞かせてやるか。ここの壁は、意外と薄いぞ」

遥は、息を呑んだ。

遥は、制服の袖口を口に押し当てた。白い布地に、噛んだ唇の痕が薄く滲む。

扉の向こうから、遠い笑い声が聞こえた。壁一枚を隔てた場所で、休日の午後が、いつもの速度で流れている。

ひろしの動きが、一度、深いところで止まった。押し込まれたまま、遥の内側が、ゆるやかに脈を打つ。それが彼の脈なのか、自分のものなのか、もう区別がつかない。

ひろしの手が、腰から前へ回った。指先が、縁に置かれたローターを探り当てる。

「これ、気に入ってたよな」

スイッチの入る、小さな音がした。

低い唸りが、洗面台の陶器を通して、遥の腹のあたりまで響いてくる。

陶器が共鳴して、洗面台の縁を掴む指先にまで、細かな震えが伝わった。

艶のある陶器の表面に、吐息が白く曇り、すぐに消えて、また曇る。

拒もうと身体をよじる。けれど、洗面台の縁と、背後の体温に挟まれて、逃げ場はどこにもなかった。

ローターの先端が、蕾に触れる。

触れただけで、脚の内側に、細かな震えが走った。達したばかりの場所が、わずかな刺激にも、勝手に応えてしまう。

「……や……っ……それ、は……」

「ほら。もう、こんなに」

床のタイルに落ちた雫が、小さな染みを作っている。汗と涙と、もうひとつ、名前をつけたくないもの。

石鹸の乾いた匂いと、汗の匂い。息を吸うたびに、それが肺の底まで沈んでいく。

動きは、一定の間隔で繰り返された。深く入り、浅く引く。その繰り返しのたびに、遥の呼吸が、少しずつ、彼の拍に合わせられていく。

時間の感覚が、また曖昧になっていく。個室に時計があるのかどうかさえ、確かめる余裕がなかった。

遥の目から、また雫が落ちた。泣いているのに、腰の奥から熱が引かない。拒んでいるのに、濡れた粘膜が、彼の動きに合わせて、勝手に受け入れる形になっていく。身体だけが、否応なく応えている。

その食い違いを、ひろしは見逃さなかった。

「泣きながら濡らすなんて、器用だな」

遥は、首を振ることしかできなかった。

鏡の中で、髪が頬に貼りついている。赤くなった目元、かすかに開いた唇、上下する胸元。ブラウスの名札が、動くたびに小さく揺れた。

頬に貼りついた髪を、払うこともできない。蛍光灯の白い光が、鏡に反射して、目の奥を刺した。

「お前の身体は、俺のを、ちゃんと覚えてる」

ローターの震えが、一段、強くなる。

「いい顔になってきたな。さっきの続きだ。今度は、ここで、最後までやる」

最後まで、という言葉の意味を、遥の身体は、もう理解していた。

膝の内側が、熱い。爪先が、また床から離れかける。

遠い場所で、何かがふたたび形になりはじめていた。さっき通り過ぎたはずの波が、引き返してくる感覚に似ている。

膝の力が、少しずつ抜けていく。腰を支える腕がなければ、とうに崩れ落ちていた。

耳の奥で、自分の鼓動が、ローターの唸りと重なりはじめる。二つの拍が、少しずつずれながら、同じ場所へ収束していく。

洗面台の縁を、握りしめた。指が白くなる。けれど、その力がいつまで続くのか、身体のほうが先に知っていた。

二度目の波が、ゆっくりと近づいていた。

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