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時間停止中に犯される新入社員の屈辱(構内で時間停止)

時間停止・催眠・操り
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駅の静寂に抱かれて――寿子の青いセーターの温もり

「寿子、駅まで一緒に歩こうか?」
「いいですよー、柏の駅、夜はちょっと寂しいですもんね」

煌めく街灯の下、駅前の大きな時計が静かに時を刻む。

――彼女の青いセーターは、冬の夜の冷たい空気に、優しく溶け込んでいた。

駅構内、吐く息が白い。

ホームへ続くエスカレーターの音が遠く響く中、人影はまばらだった。

寿子は楽しそうにひろしに話しかけてくる。
職場の愚痴、休日の話、他愛もない日常。

ひろしはそんな寿子の横顔を、時折盗み見る。
(ああ、やっぱり俺……こいつのこと、好きなんだ)

だけど、その想いは決して口にできない。
彼女は無邪気すぎるほどに、眩しい存在。

(……触れたい。もっと近くで、この温もりを感じたい)

しかし、社会の規範も、家庭も、全ての理性が、ひろしの肩を押さえつける。

「じゃあ、私こっちなんで。また明日、お願いします!」

寿子は改札を抜ける。
ひろしは駅の構内で、彼女の背中をただ見送るだけだった。

(これでいい……はずなのに)

酒の酔いが、胸の奥をざわめかせる。

(いや……今夜だけは、ほんの少しだけ、許してほしい)

寿子の姿が、ホームへと消えていく。
彼女が青いセーターの肩をすぼめ、小さく息を吐いたとき――

ひろしの心の奥で、何かが切れた。

(もう、我慢できない……)

ポケットの中の、どこか異質な「時を止める能力」。
飲み会の最中、ふいに自分に宿った異能。

ひろしは、その感覚を確かめるように目を閉じる。

――静寂。

駅のざわめきも、アナウンスも、足音も、すべてが一瞬で凍りついた。

世界が、止まる。

寿子の姿だけが、ひろしの視界に鮮明に残る。
ホームへ歩きかけたその背中。青いセーターのぬくもりが、ひろしを誘う。

(誰にも、知られない。誰も、俺を止められない)

ゆっくりと、寿子に近づく。
彼女は歩みを止めたまま、まるで彫像のように、凛とした美しさをたたえていた。

ひろしはそっと、寿子の肩に手を伸ばす。

その瞬間、温かさが指先に伝わった。
(ああ、やっぱり寿子は生きている。今だけは……)

寿子の身体を、そっと、自分の胸へと引き寄せる。

駅の静寂の中、ひろしは寿子を強く、抱きしめた。

彼女の青いセーターから立ち上る、石鹸のような淡い香り。
白いズボンに包まれた腰に、優しく腕を回す。

(寿子……好きだ。本当は、毎日ずっと、君のことを想っていたんだ)

彼女の耳元に、そっと顔を寄せる。

「寿子……君のことが、ずっと……」

でも、寿子は何も答えない。
それでも、ひろしの鼓動だけが、二人の間に激しく鳴り響く。

彼女の髪を指に絡め、青いセーター越しに背中を撫でる。
肌に残る温もりが、まるで電流のように全身を駆け抜ける。

(これが最後だ。これ以上は、絶対に踏み越えない……)

だが、寿子の柔らかな輪郭が、ひろしの欲望をさらにかき立てる。

胸元へ、頬を埋める。
彼女の体温が、じんわりとひろしを包み込む。

世界が止まったこの瞬間、二人だけの密室。
誰にも邪魔されない、誰にも気づかれない、背徳の時間。

「寿子……君のこと、どうしようもなく愛してしまったんだ」

声に出しても、彼女の耳には届かない。
だけど、思いのすべてを、抱きしめるこの腕に託す。

時間が、静かに流れ始める。

寿子の体がふっと震える。

「……え?」

彼女はなにか、不思議そうに自分の胸元を押さえる。
(今のは……? 誰かに、強く抱きしめられたような……?)

寿子の顔が、赤く染まる。
(なにこれ、胸が、こんなに熱いの……?)

ひろしは少し離れた場所で、静かに寿子の後ろ姿を見守っている。

抱きしめた余韻が、二人の心にじんわりと残る――
背徳と切なさが交差する、駅の静寂のなかで。

――本当は、このまま抱きしめ続けたかった。

でも、ひろしは寿子のために、もう一歩踏み込まなかった。
それでも、背徳の夜に抱いた温もりは、きっと明日からも、彼の心を焼き続けるだろう。

寿子は気づかない。
だけど、あの瞬間だけは、二人だけの秘密だった。

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