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時間停止中に犯される新入社員の屈辱(悪魔の囁き)vol.1

時間停止・催眠・操り
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静止した夜の前奏曲――寿子に焦がれる課長の罪

柏の街は、秋の気配を纏いながら、オレンジ色の街灯の下で静かに賑わっていた。
仕事帰りの人々がすれ違う駅前、トンカツ屋の明るい看板が部署の面々を誘うように灯っている。

今夜は、珍しく皆が揃った慰労会だった。
ざわめく店内、次々と運ばれる山盛りのキャベツと熱々のとんかつ。ジョッキの中で弾けるビールの泡。寿子の明るい声が弾むたび、空気がやさしく和らいだ。

「課長、唐揚げおかわりどうですか? あ、こっちのヒレカツも美味しいですよ!」

寿子はどこまでも無邪気で、何気ない会話の中で誰にでも笑いかけている。その笑顔が、ひろしの胸を静かにかき乱す。

ひろしは、職場でも評判の「真面目な課長」だ。年齢より少し若く見られることもあるが、既婚者として自分を律してきた。
なのに——寿子を前にすると、抑えてきた感情がじわじわと溢れ出し、胸の内側を焼き焦がしていく。

同僚たちの盛り上がる話題にも、上の空だった。

(また寿子ばかり見てしまう……バカみたいだ、俺は)

ビールを口に運びながら、横顔を盗み見る。寿子はグラス片手に、同僚と笑い合い、ときおりひろしにも何気なく微笑む。その無防備さが、ひろしの心に小さな罪悪感と、どうしようもない欲望の火種を灯す。

(本当は、この気持ちを見せてはいけない。彼女は部下だ。俺は、上司で、しかも結婚している……)

彼女の唇が、グラスの縁を軽やかに撫でる。その様子を見ているだけで、喉が渇き、身体が熱を持つのを感じてしまう。

寿子の笑い声が、遠い夏の日差しのように、ひろしの世界に差し込む。

(もし、俺が独身だったら。もし、彼女が俺の気持ちに気づいてくれたら——いや、駄目だ、考えるな)

隣席に座る寿子の横顔は、酔いのせいでほんのりと赤い。その赤みさえ、ひろしの理性をざらつかせる。

寿子はまったく気づいていない。ただの飲み会、ただの慰労会だと思っている。
けれど、ひろしの心臓は——ただ、寿子を想うためだけに高鳴っている。

歓談の声が少しずつ小さくなり、仕事の愚痴や昔話に花が咲いていく。
寿子はみんなの話に大きな声で頷いたり、ツッコミを入れたり。
明るくて、無邪気で、少しお調子者なところがある。

(きっと、寿子に特別な意味はない。ただ、彼女は誰にでもやさしく、フレンドリーなだけだ)

それでも、ひろしは自分の中で膨れ上がる妄想と渇望を、もてあましていた。
寿子がすぐ横で楽しそうに笑っている。その声が、ひろしだけに聞こえているように感じてしまう。

(駄目だ……こんな風に、欲しがるなんて……)

グラスのビールを何度も飲み干し、焼酎も頼み、意識が少しずつ遠くなる。
(酔ってる……いや、酔いたいだけだ。寿子を見つめる理由がほしいだけだ)

気づけば、周囲の同僚たちは少しずつ帰り支度をはじめている。
一次会で帰る者、二次会へ行くと言い合う者、酔っ払って店主に絡む者——みんながそれぞれの夜を始めていた。

寿子は最後まで、明るい笑顔を崩さない。

「課長、今日はほんとにありがとうございました!すっごく楽しかったです!」
「……俺もだよ。みんな頑張ってくれてるから、こうやって集まるのが楽しいんだ」

それだけの会話。それ以上、何か特別なことは何もない。

(それでも、寿子の笑顔を独占したい……この距離で、ずっと見つめていたい……)

全員で記念撮影。
寿子がひろしの横でピースサインを作る。
肩がほんの少しだけ、彼の腕に触れた。

——そのわずかな接触が、ひろしの内側に、危険な熱を点火する。

店の外へ出ると、秋の夜風が酔いと火照りを冷ますはずだった。
だけど、ひろしの身体の奥はむしろ熱を増していく。

駅前はネオンの灯りとタクシーのテールランプ。
寿子は同僚とじゃれ合いながら、元気に手を振り帰っていく。

(みんなの前では、普通の課長でいられる。だけど……)

最後にひろし一人だけが、トンカツ屋の前に立ち尽くした。
冷たい空気の中、胸の奥だけが熱く、喉の奥が渇くような感覚。

(もう、我慢できない……どうしてこんなに、寿子に惹かれてしまうんだ)

その時だった。

胸ポケットに入れたスマートフォンが、ふいにブルブルと震えた。
画面には「妻」からのLINEが表示されている。
「今日は遅くなるの?」「お酒はほどほどにね。」

(そうだ。俺には妻がいる。寿子はただの部下だ。今夜もこのまま帰って、何事もなかった顔で明日を迎えればいいだけなのに)

スマートフォンをポケットに戻し、ゆっくりと歩き出す。
足取りは重く、心臓だけが激しく脈打っている。

柏の駅ビルのガラスに、ひろし自身の姿が映る。
情けなく、頼りなく、欲望に飲まれそうな男の顔だ。

その時、ふと胸元の奥深くで、もう一つの「力」が疼く。

——俺には、「時間を止める力」がある。

誰にも言ったことがない。
いつからか、その能力は自分だけの秘密になっていた。
普段は決して使わない。
職場でも、家庭でも、その力に頼らないと心に決めていた。

(だが、もし……もし、今夜だけはこの禁断を犯してしまったら……)

寿子の無邪気な笑顔、華やかな声、酔いでほんのり色づいた頬。
そのすべてを、この手で独占できるのなら。

足が自然と動き出す。
寿子の帰る方角を、脳裏で辿りながら、ひろしはふらつく足取りのまま歩みを進めていく。

飲み過ぎたアルコールが、理性をぼやかしていく。
(止めろ、やめておけ、これはいけないことだ)
——心の中で叫ぶ理性の声は、どんどん遠ざかっていく。

寿子の姿が脳裏から離れない。
あの笑顔、あの唇、あの柔らかな髪。

(俺のものにしたい……誰にも渡したくない……)

妻の顔が頭をよぎる。
けれど、そのたびに欲望が膨らみ、
この夜、この瞬間だけでも、「禁断の力」を解き放ちたくなる。

いつしか、寿子の姿が目の前に現れる。
駅前のベンチで同僚に手を振り、ひとりで歩き出す後ろ姿。

(今夜だけ、今夜だけ……!)

ひろしの心臓は、今にも破裂しそうだ。
「時間を止める」能力を、今日だけは使いたい——
その想いが、ついに理性の枷を打ち砕く。

この瞬間から、全ての理性と善悪を超えた、ひろしだけの「禁断」が始まろうとしていた。

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