霞ヶ浦の夜に消える声――絶望と快感の狭間で
霞ヶ浦の湖面に、冬の夜が静かに広がる。
寿子は玄関の鍵を手に、焼けるような胸の疼きを隠しながら、
(なんで……私、こんなに……)
と、自分でも知らない熱に戸惑い続けていた。
コーポのドアを開け、玄関の薄暗い灯りのなかに足を踏み入れる。
ふと、背中に風とは違う気配――
それに気づいたとき、彼女の身体は再び「時の檻」に囚われていた。
ひろし課長は、寿子が家に入るのを見届けると、
静かにドアの隙間からその後ろ姿に近づいていく。
誰にも邪魔されない密室。
世界は完全な静止に包まれ、
ただ、ひろしの欲望だけが赤く脈動していた。
(今夜だけは、
もう誰も俺を責められない……)
ゆっくりと寿子の後ろに回り込むと、
彼女の青いセーターの袖をそっとたくし上げ、
シルクのようなスカーフを手早く取り出す。
(君の瞳に俺の正体を映させない――
そのほうが、きっと、全身で「感じる」から……)
ひろしは、寿子の目元にスカーフを巻き付ける。
視界が、完全な闇に塗りつぶされていく。
次に、彼女の両手首を柔らかいロープで縛り上げ、
その細い手が自由を奪われる瞬間の緊張感を、
指先でじっくりと味わう。
寿子の身体は、
青いセーターと白いズボンに包まれ、
今や、目も手も、どこにも逃げ場がない。
(この恐怖、緊張、
すべてが――君の「快感」になる)
全ての支度を終え、
ひろしはそっと玄関のドアを閉め直す。
そして――
「時よ、動け」
静寂を破り、
世界が再び流れ出す。
寿子は、
突然の暗闇と、
両手首の冷たい感触に、
身体を大きく震わせた。
「……えっ、なに、
どうして――わたし……見えない……?」
恐怖と混乱で声が上ずる。
「だれ? だれかいるの?
やだ、お願い、助けて……!」
彼女の両手は後ろ手に縛られ、
もがくたび、細い腕が痛々しくきしむ。
玄関の外灯だけがかすかに差し込み、
部屋の奥はほとんど漆黒の闇だった。
(こわい……なにこれ……わたし……)
寿子の声は震え、
まつ毛の奥から涙が零れ始める。
「やめて……お願い、やめて……」
泣き声が、土浦の夜に静かに響く。
だが、ひろしは背後からそっと寿子の身体を抱きしめる。
その温もりが、
彼女の恐怖をさらに強くする。
「やだ……やめて! だれなの……?」
寿子の身体は、
恐怖と屈辱に固くこわばる。
だが、その胸の奥には、
(さっきの……あの人の、手……?)
と、どこかで「既視感」も滲んでいた。
ひろしはそっと彼女の顎を持ち上げ、
その唇に自分の唇を重ねる。
寿子の口元を、
ぐいと押し開き、
舌を深く差し込む。
最初は拒絶しようとした寿子も、
強引なディープキスに息を奪われ、
悲鳴が喉の奥でかき消されていく。
「ん……やだ、やめて……やめて……」
だが、ひろしの舌は彼女の奥まで侵入し、
唾液が絡み合い、
そのぬめりと熱が寿子の中に流れ込む。
涙があふれる頬に、
男の唇が這う。
首筋に唇を落とし、
耳元で囁く。
「静かに……
声を出しても、誰も助けてくれない」
寿子は肩を震わせながら、
必死に身体をよじらせる。
「いや……お願い……やめて、
誰か、助けて……お願い……」
その涙は、
闇に溶けていく。
ひろしの手は、
寿子の青いセーターをゆっくりとめくり、
先ほどの余韻が残る胸元へと伸びる。
手のひらが乳房を包み、
親指が乳首の上をそっと転がす。
寿子は、強い恐怖と羞恥で、
声にならない嗚咽を漏らす。
「やだ、やめて……やめて……」
泣き声はますます弱く、
やがて諦めと絶望の色に染まっていく。
だが、
身体の奥では、なぜか、
微かな熱が残り続けていた。
ひろしの唇が、乳首に触れ、
舌で舐め、甘噛みする。
「や……いや、やめて……!」
叫びはむなしく闇に消え、
乳首がびくびくと震える。
彼の手が、乳房を揉みしだき、
下着ごしに執拗に愛撫する。
涙と唾液、
快感と屈辱、
すべてが混ざりあい、
寿子の心をぐしゃぐしゃに掻き乱す。
「誰なの……やめて、
お願いだから……」
寿子の声は嗚咽まじり、
呼吸は荒く、
もはや自分がどこにいるのかもわからない。
恐怖と混乱、
そして、
否応なく高まっていく身体の快感。
ひろしの手が、ゆっくりと白いズボンの裾をなぞる。
その指先が太ももを撫で、
やがて股間に近づいていく。
「やめて……いや……お願い、お願い……!」
寿子は最後の力を振り絞って身をよじるが、
縛られた手は、どこにも逃げられない。
ひろしは彼女の脚をそっと開き、
内腿に唇を這わせる。
寿子は声を上げて泣いた。
「やだ……やだ……
お願い、もうやめて……誰か……」
涙が止まらない。
だが、
その叫びさえも、
闇に溶けて、湖の静けさのなかに消えていく。
玄関のすぐそば、
霞ヶ浦の夜風が、どこか遠くで湖面を撫でる音。
彼女の心も、
夜の湖に沈んでいく――
絶望と快感が交差する、
終わらない静寂のなかで。
やがて、
寿子の声は弱々しい囁きに変わる。
「もう……やめて……
お願い、やめて……」
それでも、
ひろしの手は愛撫をやめない。
強引に、
けれど、どこか歪んだ愛情をこめて、
彼女の身体に爪痕を残していく。
寿子の涙、
恐怖と苦痛、
快感の混じった嗚咽――
霞ヶ浦の夜は、
二人だけの背徳と絶望で静かに染め上げられていった。


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