催眠の夜――お兄ちゃんだけが好き
リビングの時計の針が、いつもよりもゆっくりと時間を刻んでいるように感じられる。
両親はまだ帰らない。
静まり返った家の中、ひろしはひとり、遥の部屋の扉の前で立ち止まっていた。
さっきまで自分でも信じられない“能力”のことを考えていた。
昼間、偶然目覚めた精神の力――
それが、単なる偶然なのか、それとも本当に何かが変わってしまったのか。
ひろしは、鼓動の高鳴りを感じながら、
扉の向こう側で遥が何をしているのかをぼんやり想像していた。
しばらくして、静かにノックをする。
――返事はない。
だが、不思議と躊躇いはなかった。
自分の中にある“力”が、今はどこか背中を押しているような、そんな奇妙な感覚。
「遥、ちょっといいか?」
扉をそっと開くと、遥はベッドの上で膝を抱えて座っていた。
驚いたように顔を上げる遥。
その瞳は、どこかぼんやりと、意識が霞んでいるように見えた。
「……お兄ちゃん、どうしたの?」
遥の声は、普段の彼女とは違い、どこか夢を見るような柔らかさを帯びている。
ひろしは一歩、部屋に足を踏み入れた。
静かに、心の中で念じる――
“自分の言葉が、遥の心に届くように。
遥の感情を、そっと操ることができるように。”
自分でも不思議なほど、
意識を集中すると、遥の瞳がふっと揺れるのがわかる。
それはまるで、湖面に小石を投げ込んだ時のような繊細な波紋。
「遥、こっちを見て」
ひろしの声に、遥はゆっくりと顔を向ける。
その瞬間、ふたりの世界には、他の何も入り込まないような静寂が降りた。
「遥は……お兄ちゃんが、好きになる。
心の奥から、どうしようもないほど、
お兄ちゃんのことだけが好きで、好きで、たまらなくなる……」
囁きのように、ひろしは言葉を紡ぐ。
遥の瞳の奥に、淡い光が灯る。
その瞳が、ひろしを捉え、離さない。
「……お兄ちゃん……」
遥の声が震える。
その響きは、今までに聞いたことがないほど甘く、
胸の奥をじんわりと焦がす。
「お兄ちゃん、どうしてだろう……
なんだか……お兄ちゃんのこと、好きで好きで……
ずっと見ていたい……」
遥の小さな指が、ベッドの上で震えている。
その仕草さえも、今夜の遥はどこか違って見えた。
ひろしは一歩、彼女に近づく。
“兄”としての理性が、ほんの一瞬だけ抵抗を見せるが、
それも遥の呼吸、遥の甘い視線に溶かされていく。
遥は、両手でひろしの袖を掴む。
そして、まっすぐに見上げる。
その瞳には、迷いも拒絶もなかった。
「お兄ちゃん……どうして、こんなにドキドキするの……?」
遥の声は、ためらいと熱をはらみ、
そのまま空気を震わせて部屋いっぱいに広がる。
ひろしは、遥の顔に手を伸ばし、そっと頬を撫でた。
「大丈夫だよ。怖くないよ。」
自分自身に言い聞かせるような、静かな声。
遥の身体が、熱を帯びていく。
彼女の指先が、ひろしの手を追いかけて、そっと重なる。
その瞬間、遥の口元に柔らかな笑みが浮かぶ。
「お兄ちゃん……私、どうしようもなく……お兄ちゃんが好き……」
その言葉が、心の奥の何かを、はじけさせた。
遥はそっと立ち上がり、
ひろしの胸元に自分の身体を預ける。
その体温が、二人の間に密やかな距離をつめていく。
「お兄ちゃん、私……もっと、近くで、見てほしい……」
その声は、まるで恋人のように甘い。
ひろしは、遥の肩にそっと手を置き、
ゆっくりと彼女の身体をベッドに導いた。
これまで“妹”としてしか見てはいけないと、
自分に言い聞かせていた遥の、素肌のぬくもりが、
今、確かに自分の手のひらに伝わっている。
遥は、うっすらと頬を染めながら、
自分の手で制服のボタンに指をかける。
「お兄ちゃん……私、全部見てほしいの……」
その声は、熱を帯びた囁きとなって、ひろしの耳朶をくすぐる。
ボタンがひとつ、またひとつと外されていく。
下着のレース越しに、柔らかな膨らみが夜の空気に浮かび上がる。
遥は目を逸らすことなく、ひろしだけを見つめていた。
「お兄ちゃん……私、変なの。ずっと、胸が苦しいの……」
その言葉は、羞恥と欲望が絡み合い、
まるで秘密の魔法のように、部屋を官能的に染めていく。
ひろしの手が、遥の肩越しにゆっくりと滑る。
初めて触れる素肌の感触に、
彼の息が自然と浅くなっていく。
遥の指が、震えながら自分のスカートに触れる。
ゆっくりと、ためらうようにスカートを膝までたくし上げると、
可愛らしい下着のリボンが露わになった。
「お兄ちゃん……見て、ほしいの……」
その声が、ひろしの頭の中で繰り返される。
自分がこれまで「兄」であろうと、何度も抑えてきた衝動が、
遥の“お兄ちゃん”という呼びかけとともに、
すべて解放されていく。
彼は震える手で、遥の太ももにそっと触れた。
その肌は、夜の静寂よりも柔らかく、
遥の体温が火照りとなって、ひろしの指先に染み込んでくる。
「お兄ちゃん……うれしい……」
遥は両手で自分のシャツを脱ぎ、
レースの下着だけを身にまとい、ひろしの目の前に立つ。
ひろしはその姿に、思わず息を呑んだ。
これが、女の裸――
自分が初めて、現実として見る「妹」の身体。
「恥ずかしいけど……お兄ちゃんだけには、全部見てほしいの」
遥の瞳には、とろけるような熱が灯っていた。
ひろしは、遥の肩をそっと抱き寄せ、
彼女の唇に、ゆっくりと口づける。
「遥……可愛いよ」
自分の声が、どこか遠いところから聞こえてくるようだった。
遥は、柔らかく笑いながら、
ひろしの首に腕をまわす。
「もっと、触れて……お兄ちゃん」
その言葉とともに、ふたりの距離は、もう戻れないほど近づいていた。
熱と官能が混ざり合い、
今夜、誰にも邪魔されない、兄妹ふたりきりの世界が
静かに、けれど確かに幕を開けるのだった――。


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