サークル新歓コンパ ― 甘い空気と羞恥の罠
- 豪奢な先輩・ひろしの部屋で新歓コンパ
- 遥、酎ハイで酔いが回る
- 罰ゲームで次第に服を脱がされ、羞恥の的に
- 男たちの視線とスマホが遥を追い詰める
ふわりと甘い香水のような空気が部屋を包んでいた。
大学のサークル新歓コンパは、先輩・ひろしの家で行われていた。金持ちの家庭に育った彼の部屋は、大学生の住まいとは思えないほど広く、天井の高いリビングには大きなソファがいくつも置かれ、間接照明が柔らかい光を落としている。
遥は多香子と並んでソファに腰かけ、最初は緊張しながらも、酎ハイを一口、また一口と口に運んでいた。
「遥ちゃん、もっと飲んで飲んで〜」
ひろしの笑顔は優しくて、どこか包み込むようだった。けれど、どこかで違和感を覚えた。視線が、服の奥へとじっと潜り込んでくるような、そんな感覚。
「えへへ……もうちょっとだけなら……」
遥は断れなかった。昔からそうだった。空気を読むことばかりに慣れてしまって、自分の気持ちを後回しにしてしまう。隣にいる多香子も、同じように笑って、グラスを手に取っていた。
最初は普通の飲み会だった。乾杯をして、ピザやチキンを食べて、大学生活の話をして――。
だが、時間が経つにつれて、先輩たちのテンションが徐々に上がり、空気が変わっていった。
「そろそろ……罰ゲーム、始めよっか」
誰かがそう言った瞬間、場の空気がピンと張り詰めた。酔いのせいか、それとも照明のせいか。遥の頬が赤く染まっていくのが、自分でもわかった。
「遥ちゃん、多香子ちゃん、じゃんけんしよっか。負けたほうは……何か、する!」
それが軽いノリに聞こえたのは、酒が入っていたからかもしれない。
じゃんけん――遥が負けた。
「じゃあ遥ちゃん、上着脱いで?」
「……え……?」
冗談めいた声に、周囲が笑う。けれど、そこに含まれる命令の重さは、本気だった。
遥は戸惑いながらも、断れず、そっとカーディガンに手をかける。
「大丈夫、みんなやってるし、ノリノリ〜」
そう言われれば、何も返せなかった。遥はゆっくりと腕を動かし、白いカーディガンを肩から滑らせた。
下には、シンプルなブラウスが一枚。薄い生地が肌に貼りつき、胸のふくらみがうっすらと浮かび上がる。
その瞬間、誰かの喉が鳴った気がした。
「いいねえ……次、またじゃんけんしようか」
飲み会は、すでに通常のテンションを超えていた。だが遥も多香子も、途中で逃げ出すことができなかった。
「ほら遥、ちょっと前に出て。はい、ピースして」
スマホのシャッター音が、部屋に響いた。
最初の一枚。
それが、終わりの始まりだった。
シャッター音が切られた瞬間、遥の肩がびくりと震えた。
スマートフォンを構えていたひろしが、にこりと笑う。
「ほら、かわいい。こういう素朴な子って、逆に映えるよね」
何気ない一言のように聞こえたその言葉が、遥の胸の奥をざらりと撫でた。
羞恥。焦り。混乱。
それらが熱となって喉元に溜まり、遥は自分の呼吸が少しずつ荒くなっていくのを感じていた。
白いブラウス一枚になった自分の姿が、見られている――それも、何人もの男たちに。見つめられ、撮られ、笑われている。
それが、どうしようもなく恥ずかしかった。
「もうやめたい……」という言葉が喉まで来た。けれど、それは声にならなかった。空気を壊す勇気がなかった。
逃げれば、空気が凍る。仲間外れになる。
……遥は、それが怖かった。
「さ、次いこうか。またじゃんけんね」
無情なテンポで進むゲーム。次に負けたのは多香子だった。だが彼女は、やや俯きながらもおどけて笑って、スカートの裾をほんの少しだけまくりあげてみせた。
場が湧いた。
「遥ちゃんも、そろそろブラウス、脱いでみよっか?」
その一言に、遥の心臓が大きく跳ねた。
「……え……?」
笑い声に紛れて、言葉が宙に溶けていく。ひろしの目が、優しい笑みをたたえながらも、有無を言わせぬ力を持って遥を見つめていた。
「大丈夫だよ、嫌ならやらなくてもいいし」
そう言いながら、拒否を許さない空気を作る――それが一番ずるい。
遥の指先が震える。何も言えない。逃げられない。
静かに、ボタンに指をかける。
ぷち。
一つ外れるたびに、部屋の空気が変わっていく。
露わになる肌。純白のブラジャーが、照明の下でほんのりと輝く。
ひろしの目が、確かにそこに吸い寄せられていた。
遥は自分の胸元を腕で覆いながら、ゆっくりと視線を伏せた。
唇が震える。頬が赤くなる。
そして――
目尻に、涙がにじんだ。
「遥……?」
多香子が小さく声をかける。
遥は首を横に振る。何も言わない。ただ、涙をこぼさないように、必死に堪えていた。
恥ずかしい。つらい。けど、笑わなきゃ。そうしないと、この場所にいられない。
そう思って、無理に笑おうとしたけれど、頬はひきつり、唇は噛み締めたままだった。
「ちょっと撮るね」
ひろしが、またスマホを構えた。
ぱしゃ。
その音が、遥の心を深く切り裂く。
羞恥の炎が、ゆっくりと内側から広がっていく。
吐息が細く漏れる。
目線の先に、男たちの視線と、冷たく光るスマートフォンのレンズ。
遥は、自分が“見世物”になっていることを、肌で感じていた。
けれど――それでも逃げなかった。
いや、「逃げられなかった」というほうが正しいのかもしれない。
社会のルール、大学の人間関係、空気を読む文化。
それらが遥を縛り、声を奪い、身動きを封じていく。
このまま、どうなってしまうのか。
胸の奥が、怖さと、そして……得体の知れない熱で、じんわりと疼いていた。


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