暴かれた夜──操りの終焉、絶望の覚醒
スイートルームのベッドは、快楽と淫靡の残滓で重く沈んでいた。
沙耶香の身体には、男に与えられた愛撫や肉棒の痕が生々しく残り、
肌は汗と愛液、精液にまみれている。
だが、沙耶香の瞳は、未だに虚ろだった。
「……はぁ、はぁ……」
彼女の喉から漏れるかすかな息遣いだけが、
夜明け前の静寂を切り裂いていた。
ひろしはベッドの端に立ち上がり、
シャワールームで手早く身体を拭き、
静かに服を身につけていく。
白いワイシャツを羽織り、ネクタイを締め、
スーツを完璧に整えてゆく彼の横顔は、
先ほどまでの支配と欲望にまみれた男のものとは思えないほど、冷静で整然としていた。
沙耶香は、ぐったりとベッドにうずくまり、
未だに自分の内側に残る余韻に身を委ねていた。
けれど、その瞳の奥では、
薄い霧がゆっくりと晴れていくように、
ほんの僅かな違和感が芽生え始めていた。
ひろしは、ベッドサイドに置かれたスマートフォンを手に取る。
その画面には、
沙耶香が自らを慰め、男根をしゃぶり、
快感に喘ぐ淫靡な映像が克明に録画されている。
支配は、ここで終わりじゃない
お前のすべてを、世界に暴いてやる
ひろしは静かに、
SNSアプリのアイコンをタップした。
沙耶香自身のアカウントページを開く。
彼女のフォロワー数は何千にものぼり、
そのほとんどが、ファッション業界の関係者やファンだ。
「沙耶香、起きて」
彼女の肩をやさしく揺らしながら、
ひろしは命令する。
「スマートフォンを持て」
「……はい」
ひろしの“操り”はまだ続いている。
沙耶香は、うつろなままベッドから身体を起こし、
素裸でスマートフォンを受け取る。
瞳には光がなく、
指先だけが不気味に正確に動く。
「動画をアップロードしろ」
「……はい……」
まるでプログラムされた人形のように、
沙耶香はSNSの投稿画面を開く。
カメラロールに保存された淫らな映像を選び、
アップロードボタンを押す。
「タイトルをつけろ。“本当の私”と打て」
「……本当の私」
公開ボタンを押す。
その瞬間、沙耶香のSNSアカウントには
自分自身が男に犯され、
快楽に溺れて奉仕し、
自らを慰めている生々しい映像が全世界に向けて投稿された。
投稿完了を知らせる小さな音が、部屋に響く。
「よくやった。
――これで、すべてお前の“本性”が暴かれた」
ひろしは満足そうに頷くと、
スマートフォンを沙耶香の手から取り戻し、
何気なくベッドサイドに置いた。
彼は、部屋を見渡し、
乱れたシーツ、床に落ちた下着、
濡れたタオル、
沙耶香の崩れた髪――
そのすべてを一瞥し、
スーツ姿で、扉の前へと向かった。
ドアノブに手をかける直前、
ひろしは最後に、
操りの“呪縛”を静かに解く。
「……さあ、すべて思い出せ。
お前自身の“意志”に戻れ」
ドアを静かに閉め、
ひろしは廊下の奥、エレベーターホールへと消えていく。
――その瞬間、
沙耶香の全身に、凍りつくような衝撃が走った。
心の奥底で、
これまでの数時間――いや、
自分がこの部屋に入った最初の瞬間からの
すべての出来事が、
まるで濁流のように、一気に鮮明に蘇る。
なに……?
いま、なにが起きて……
私……私は……!
ホテルの天井を見上げたまま、
沙耶香は全身を小刻みに震わせた。
脳裏には、ひろしに命じられるまま身体を弄ばれ、
服を脱がされ、何度も挿入され、
快感に喘ぎ、自分で自分を慰めながら
男根をむさぼるようにしゃぶり尽くした
すべての映像と感触が――
隅々まで、いやらしく、鮮やかに蘇ってくる。
やめて……
こんなの、嘘……
嘘だ……!
けれど、現実は何ひとつ変わっていなかった。
沙耶香は、恐る恐るベッドサイドのスマートフォンを手に取り、
画面を開いた。
SNSアプリの通知欄には、
無数の新着コメントや“いいね”の通知が、
絶え間なく届いている。
「まさか、そんなはずが……!」
自分のプロフィールページを開くと、
そこには見覚えのある、
自分の顔、自分の身体――
男をしゃぶり、愛液にまみれ、
本能むき出しの雌として喘ぐ姿が、
動画として公開されていた。
「いや……いや、いやぁ……!!」
喉の奥から、
これまで味わったことのない絶望の悲鳴がこぼれる。
動画は、
自分が自分の意思で投稿したことになっている。
削除しようと必死で画面をタップするが、
フォロワーからの通知、
知人たちからの驚きや嘲笑のコメント、
恐ろしいほどの拡散の速度――
全てが、
もう取り返しのつかない現実になっていた。
ああ、なんてこと……
私は、自分で、自分の手で、
こんな動画を――
こんな恥ずかしい姿を――
世界中に晒してしまった……!
涙が頬を伝い、
沙耶香はベッドの上でうずくまり、
嗚咽を抑えられないまま、
身体をぎゅっと丸めるしかなかった。
思い出すたび、
自分の快感に負けて身体を震わせ、
男に尽くし、何度も自分で慰めた淫らな瞬間。
それがすべて、
取り消せない“事実”として――
映像として――
この世界に刻み込まれてしまった。
「いやだ、いやだ、
いやぁぁ……!」
沙耶香の悲鳴は、
誰にも届かず、
夜明け前のスイートルームに虚しく響き渡った。
誇り高く、知的で、誰にも屈しなかったはずの女社長は――
ひとつの淫靡な投稿によって、
自らの“本性”と“絶望”を
全世界に暴かれたのだった。
その先に、
どんな未来が待ち受けているのか――
今の沙耶香には、
考える余裕すら残されていなかった。
ただ、
喉の奥から止まらぬ嗚咽とともに、
その夜のすべてを、
鮮明に、痛烈に、
繰り返し思い出すしかなかったのだ。
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