赤い光に貫かれる自尊心、未熟な指先が奏でる絶望の旋律
放課後の進路指導室は、もはや教育の場としての体裁を完全に失っていた。
窓の外の残照は消え入り、代わりに室内を支配したのは、坂口が手にするスマートフォンのレンズから放たれる、冷徹なまでの無機質な光だった。
「……撮るんですか。それを、撮るんですか」
美琴の声は、もはや震えることさえ忘れたかのように、乾いてひび割れていた。
膝を突き、下半身を完全に露わにしたままの彼女。その白く滑らかな太ももは、冷たい床に触れているせいか、あるいは極限の緊張のせいか、小刻みに痙攣し続けている。
「記録だ、御坂。お前が自発的に、俺の指導を受け入れたという証拠が必要なんだよ」
坂口は椅子に深く腰掛けたまま、右手に持った端末を美琴の股間へと向けた。
画面の中には、羞恥に染まり、涙をこぼしながら脚を広げる「常盤台の超電磁砲」の姿が、鮮明に映し出されている。
「さて、選ばせてやろう。このまま俺の肉棒をその中に受け入れるか、それとも……自分の指で、俺が満足するまで、お前自身を絶頂(イキ)に導いてみせるか。好きな方を選べ」
残酷な二択。
美琴の脳裏には、先ほど口腔内で暴れ回った、あの熱く猛々しい肉の塊の感触が蘇った。
あんなものが、一度も異物を受け入れたことのない自分の「中」を貫く。想像するだけで、内臓がせり上がるような恐怖に襲われる。
けれど、もう一つの選択肢は――。
「……っ……、……し、たこと……ない……です……」
「何がだ?」
「……そんな、……自分、で……なんて……」
美琴の告白は、坂口の嗜虐心をさらに煽った。
自慰(オナニー)の経験さえ皆無の、純白の処女。
その無垢な精神が、自分の指で、自分の身体を汚していく過程を記録する。坂口にとって、これ以上の悦楽はなかった。
「……それなら、今日がその初体験というわけだ。光栄に思え。さあ、始めろ。……自分でやる方を選んだんだろう?」
美琴は、絶望の淵で「自分で行う」方を選択した。
少なくとも、他人の肉体によって蹂躙されるよりは、自分の手で完結させる方が、まだ「自分」を保っていられる気がしたのだ。
それが、さらなる深い地獄への入り口だとは知らずに。
「……っ……あ……」
彼女は、震える右手の指先を、先ほど観察されたばかりの縦線へと伸ばした。
自らの手で、自らの恥部に触れる。
それは、彼女のこれまでの倫理観を真っ向から否定する行為だった。
指先が、自分の体温を宿した粘膜に触れる。ぬるりとした、愛液の粘り気が指の腹に伝わった。
「……は、ぁ……、……ん、く……」
美琴は、どこをどう触ればいいのかさえ分からなかった。
ただ、先ほど坂口が指摘したクリトリスと思われる、上部の小さな突起に指を当ててみる。
一度も直接的な刺激を受けたことのないその器官は、指先がかすめただけで、美琴の背筋に稲妻のような鋭い刺激を走らせた。
「ひ……っ……! ……あ、……な、に……これ……」
快感、と呼ぶにはあまりに強烈すぎた。
まるで神経を直接針でつつかれたような、剥き出しの刺激。
美琴は思わず手を離しそうになったが、坂口の持つカメラが、彼女の逃げ場を塞いでいる。
「手を止めるな。もっと丁寧に、お前の中にある『女』を掘り起こしてみろ」
坂口の冷淡な声。
美琴は、溢れる涙を拭うこともせず、再び指を秘部へと沈めた。
今度は、中指と人差し指の二本を使い、左右の小陰唇を軽く擦りながら、中央の突起を執拗に弄る。
クチュ、クチュリ……。
静まり返った部屋に、彼女自身の指が粘膜を掻き回す、卑猥な音が響き始める。
美琴は、その音が自分の身体から発せられているという事実に、顔を覆いたくなるような羞恥を感じた。
画面越しにその音を、その表情を、その指の動きを全て記録されている。
彼女のプライドは、指を動かすたびに摩耗し、消えていく。
「……あ、……は、ぅ……、……ん、んん……っ」
次第に、刺激は苦痛から、逃れられない「熱」へと変容していった。
指先がクリトリスの周りを円を描くように動くたび、下腹部の奥深くが、きゅん、と切なく締め付けられる。
それは、彼女が十四年の人生で一度も経験したことのない、不快で、それでいて抗いがたい「疼き」だった。
「……もっと奥だ、御坂。中にも指を入れろ。……自分で自分をかき回せ」
坂口の命令は、止まることを知らない。
美琴は、愛液でぐっしょりと濡れた指を、自らの膣口へと押し込んだ。
先ほど自分で観察した、あの狭い入り口。
そこに指が入っていく感覚。
自分の内側を、自分の指が侵食していく。その奇妙な違和感に、美琴の腰がガクガクと震えた。
「……あ、……い、う……、……はい、……ってる……」
「……指を動かせ。自分の膣壁を、指の腹でなぞってみろ」
美琴は、指示されるがままに、膣内の襞(ひだ)を指でなぞった。
複雑に重なり合った粘膜の感触。
奥へ行くほど、熱は高まり、締め付けは強くなる。
指を出し入れするたびに、クチュッという濡れた音が大きくなり、床には彼女の蜜が滴り落ちた。
「……ふ、ぅ……、……あ、……ぁぁ……っ!」
自分で行う自慰(オナニー)は、他人にされるのとは違う、独特の恐怖があった。
自分のどこを触れば、どのような反応が返ってくるのか。
それを自分自身で発見していく過程は、美琴にとって、自分の聖域を自らの手で汚していく自傷行為にも似ていた。
呼吸が、次第に浅く、激しくなっていく。
喉の奥が乾き、視界がチカチカと明滅する。
クリトリスへの刺激と、膣内への侵入。
その波状攻撃に、美琴の未熟な神経系は完全にキャパシティをオーバーしていた。
「……ひ、っ……、……ぁ、……もう……む、り……、……おかしく、なる……っ」
「いいぞ、御坂。……そのまま、果てるまで続けろ。……カメラを逸らすな」
坂口は、一歩も動かずに美琴を追い詰める。
美琴は、もはや羞恥心さえも快感の渦の中に飲み込まれ始めていた。
(嫌だ、と叫びたい心とは裏腹に、身体が……指が勝手に動く。……止まらない、止められない……!)
身体は、より強い刺激を求めて指の動きを速めていく。
それは、生物としての本能が、理性の制御を奪い取った瞬間だった。
「……あ、……あ、あ、……っ、ん、んんっ……!」
腰が浮き、背中が弓なりに反り返る。
美琴の指は、今や狂ったように自らの秘部を掻き毟っていた。
クリトリスははち切れんばかりに勃起し、膣内からは際限なく愛液が溢れ出し、彼女の手を、床を、そして精神を汚染していく。
「……い、く……っ、……なに、これ……、……あ、あああああ……っ!」
絶頂の予感。
それは、今まで経験したあらゆる感覚とも異なる、破滅的な爆発だった。
美琴の視界が真っ白に染まり、全身の筋肉が一斉に硬直する。
膣壁が、中に挿入された自分の指を、千切らんばかりの力で締め付けた。
「……っ……、……ぁ、……あああ……っ!」
声にならない叫び。
美琴の身体は、激しく数回跳ね上がった後、力なく崩れ落ちた。
指はまだ、秘部の中に挿入されたまま、痙攣を繰り返している。
鼻にかかった甘い喘ぎ声と、荒い息遣いだけが、静寂の戻った室内に響いた。
坂口は、その一連の「処女の初自慰」を、余すところなくレンズに収めきった。
「……実に見事だったぞ、御坂」
坂口がスマートフォンを収めると、美琴は床に突っ伏したまま、静かに、けれど激しく泣き崩れた。
自分の指に残る、自分の体液の生臭い匂い。
股間の、ヒリヒリとした熱い痛みと、残響のような虚しい快感。
そして何より、それを記録されたという、取り返しのつかない現実。
太陽は完全に沈み、夜の帳が進路指導室を包み込んでいた。
美琴の誇りは、放課後の密室で、赤い録画ランプの瞬きと共に、永遠に失われたのだった。
(……もう、元には戻れない。私の、一番大切なところが……記録の中に……。……私、……どうしたら……)
足元に広がる愛液の池が、月光に照らされて鈍く輝いていた。


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