▶ 名前変換:入力フォームを開く
【自発】一度だけなら――頭を下げた少女に、まず走った男の手
常盤台中学の学生寮。
相部屋である白井黒子の規則正しい穏やかな寝息だけが響く暗い部屋で、美琴の身体はシーツの中で冷たい汗にまみれ、何度も寝返りを打っていた。
目を閉じても、進路指導室という密室で嗅いだ古い紙と安っぽい芳香剤の匂いが鼻の奥にへばりついて離れない。心臓が不規則に、ひどく重い音を立てて早鐘を打ち、胃の底が鉛を飲み込んだように重く、吐き気がするほど気持ち悪かった。
(……やだ……嫌だ……)
得体の知れない強烈な恐怖が、じんわりと手足の指先から全身の血を冷たくしていく。坂口のあのねっとりとした濁った目が、暗闇の中から自分を這いずるように舐め回しているような錯覚に陥り、美琴は毛布を頭まですっぽりと被って自分の細い身体をきつく抱きしめた。
翌朝。寮の廊下に出たところで、黒子に「お姉様、なんだかお顔色が」と声をかけられた時も、喉の奥がカラカラに干からびていて、掠れた声で適当な嘘を吐き出すのが精一杯だった。窓から差し込む太陽の光が目に痛く、いつもなら心地よい制服のブラウスが肌に擦れる感触すら、今日の美琴にはひどく神経に障り、苛立ちと不安を増幅させた。
一時間目。運悪く坂口の授業中。
教壇に立つ彼の視線が、時折、舐めるようにこちらへ向かってくる。その度に、美琴の首筋から背骨に沿って、ぞわりと這うような不快な悪寒が下りた。制御しきれない微弱な放電が指先でぱちぱちと青白い火花を散らして鳴る。右手で左の手首を白くなるほど強く握りしめて放電を抑え込むが、指先の異常な冷たさとは裏腹に、手のひらにはじっとりと嫌な汗が滲んでいた。
そして、長く苦しい放課後。
進路指導室の分厚い扉の前で、美琴は過呼吸気味になっていた。ドアノブを握る手がカタカタと震え、冷たい金属の感触がやけにリアルに感じられた。
部屋に入ると、坂口は既に窓際にある自分の椅子に深く腰掛け、待ち構えていた。
「……一度、だけ、なら」
乾き切った唇から、血を吐くような思いで、絞り出すようにその言葉を吐き出した。
「一度だけなら……従います。それで、単位の件は……」
「ああ。一度で済ませてやる」
坂口はゆっくりと立ち上がった。
「だがな。お前が録音機などを隠し持っていないか、今から身体検査をさせてもらう」
「……え……」
断れば、進級が取り消され、人生が終わる。その強烈な脅しを前に、美琴の足は床にボルトで縫い付けられたように動かなくなった。
「そこの机に両手をついて前傾姿勢になれ。俺の方を向くな」
言われるがまま、机の縁に両手をつく。制服のプリーツスカートがふわりと揺れた。
背後に坂口が立つ。男の低い体温と、ツンとする整髪料の匂いが、美琴の背中を直接撫でるように覆い被さってきた。
坂口の分厚く硬い掌が、美琴の華奢な両肩にガシッと乗せられた。
「……っ……」
ビクッと肩が大きく跳ねる。男の掌の嫌な圧迫感が、ブラウス越しに骨まで伝わってくるようだった。
「動くな。電磁波を漏らしたら、その瞬間にお前の人生は終わるぞ」
耳元で囁かれる低くねっとりとした声。その生暖かい吐息がうなじに触れ、美琴の全身の毛穴が一気に粟立った。首筋から肩にかけて、ぞわぞわと激しい鳥肌が立ち並ぶ。
坂口の手が、肩から腕の外側をゆっくりとなぞり、そのまま脇の下へと滑り込んできた。
「あ……や……」
硬い指の関節が、敏感な脇腹の骨を強く擦る。くすぐったさなど微塵もなく、ただ異物が這い回るような強烈な不快感に、美琴の身体がビクンと大きく震え、膝からガクッと力が抜けそうになった。
坂口の掌が、そのまま強引に前へと回される。制服のブラウスと薄い下着の上から、美琴のまだ平坦で未成熟な乳房を、両側から無遠慮に鷲掴みにした。
「ああっ……ちょ、やめ……」
(……うそ……なんで……)
身体検査などというのは卑劣な建前だ。坂口の分厚い掌は、薄い布越しに柔らかいふくらみを完全に包み込み、極めてゆっくりと、執拗に揉みしだき始めた。
外側から内側へ。そして下から掬い上げるように。
恐怖と強烈な嫌悪感で、美琴の全身がガチガチに硬直する。男の異常なほど分厚い掌の感触がブラウスを透かして直接肌に染み込んでくる。まだ誰にも触れられたことのない未熟な胸が、その無骨な指の動きに合わせて、ぐにゃぐにゃと無様に形を変えさせられる。
胸の先端の小さな乳首が、下着の布地と坂口の硬い掌の間に挟まれ、ギリギリと無神経にこすりつけられる。
「ひっ……あ、う……んっ……」
ただただ、痛みに近い強い不快感と、得体の知れない異物が自分の身体を侵犯しているという絶望。
嫌だ。こんな男に触られて、吐き気がするほど気持ち悪い。
強烈な精神的苦痛に、美琴の呼吸が浅く、荒く乱れ始める。喉の奥から、恐怖で引きつった泣き声のようなものが漏れそうになり、慌てて自分の下唇を強く噛み締めた。血の味が口の中に広がるが、それでも身体の震えは止まらなかった。
「上半身には無いな。次は下だ」
坂口の手が胸から離れた。ほっとしたのも束の間、その手は脇腹をなぞり落とし、プリーツスカートの裾の内側へと、ためらいもなく潜り込んできた。
「いや……そこは、だめ……お願い……」
美琴は腰をよじって逃げようとしたが、坂口のもう片方の手が美琴の後頭部と首筋をガッチリと掴んで押さえつけた。
「動くなと言ったはずだ」
冷酷な声と共に、スカートの中に入り込んだ坂口の掌が、太ももの外側の柔らかな素肌にべったりと貼り付けられた。
「あ……く……あ……」
夏服の薄い生地の下。無防備な太ももに、男のざらついた皮膚と硬いタコのある指先が、生々しく擦れ合う。
坂口の手は、太ももの外側から、ゆっくりと、無遠慮に内側へと這い回ってきた。敏感な内股の薄い肌を、分厚い指の腹が撫で上げる。
その度に、美琴はあまりの気味悪さに内股の筋肉をビクン、ビクンと小刻みに痙攣させ、反射的に両足をきつく閉じようとした。
気持ち悪い。男の手が通った後の肌が、まるで泥でも塗りつけられたように不潔な感触を残している。
指が膝上から徐々に上へと上がり、純白のショーツの縁に触れた。
「ひあ……」
ショーツのゴムのラインをなぞるように、坂口の指が意地悪く動く。
足の付け根の、皮膚が最も薄くデリケートな部分。そこを硬い指の腹でぐいっと強い圧力をかけて擦られ、美琴の腰が恐怖でガクッと落ちそうになった。
「ここも、隠すには丁度いいからな」
坂口の指が、ショーツの布地の上から、彼女の最も秘められた部分の割れ目を、直接なぞり上げた。
「ああっ……いやっ……あ、あっ……ひっ……」
(……やだ……やだ……)
脳髄が恐怖で真っ白に弾けた。
布越しとはいえ、男の骨張った硬い指先が、最も無防備で純潔な粘膜の形を押しつぶすように確かめ、下から上へ、容赦なく擦り上げてくる。
「はあっ……ふ、あ……ん、ああ……」
快感など一欠片もない。ただ、自分の最も個人的で守られるべき領域が、薄汚い泥足で踏み躙られているという圧倒的な蹂躙感。
指の腹が擦れ合う物理的な摩擦と、ショーツの布地が食い込む僅かな痛み。そして何より、男の指の動くグロテスクな感触が直接脳に叩き込まれる。
恐怖と嫌悪感で涙がぼろぼろとこぼれ落ち、胃袋が強烈にせり上がって吐き気を催した。
両手で縋り付いている机の縁に冷や汗がポタポタと落ちる。身体は極度の緊張で氷のように冷え切り、足のつま先から首筋まで、全身の筋肉が岩のようにガチガチに硬直していた。
十四歳の、まだ性というものを何も知らない純粋な少女にとって、それはただただ理解の範疇を超えた、暴力的な恐怖と汚濁の泥沼だった。
ガクガクと震える両足で辛うじて立っている美琴を残し、坂口の手がゆっくりとスカートの中から引き抜かれた。
「……よし。何もないな」
坂口は自分の椅子に戻った。
「さて。返事を聞こうか。一度の中身だ。口で俺を慰めるか、それともお前の初めてを俺に差し出すか。選べ」
机に手をついたまま、美琴は荒い息を繰り返していた。涙と冷や汗でぐしょぐしょになった顔。震える太ももの間では、先ほどの強烈な接触のせいで、未だに不潔な指の感触がべったりと張り付いているように感じられ、胃液が喉元までこみ上げていた。
口で慰めるか。初めてを差し出すか。
突きつけられた残酷な二択の前で、美琴の頭は絶望で完全にショートしそうだった。
(……くちなら……いちばんだいじなものはまもれる……でも……あんなものを……)
(……それならいっそ……いたみにたえて……さしだせば……きょうのいっかいで、すべておわる……)
挿入されるのは無理。でも、口に入れるのも無理。
どちらを選んでも地獄しかない。その究極の選択を前に、彼女の震える唇が、ついに小さく開いた。

コメント