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【店長の脅迫】万引き一度の過ち:vol.35(制服の奥、激しく貫かれ)
膝が、先に折れた。
壁に突っ伏していた身体が、支えを失って、タイルの上を滑り落ちかける。その腕を、ひろしの手が掴み、乱暴に引き戻した。
手から離れたローターが、洗面台の縁で跳ね、床に落ちた。低い唸りを上げたまま、タイルの上を小さく回りながら転がっていく。
「誰が、座っていいと言った」
遥は、答えられなかった。喉から出るのは途切れた息ばかりで、それが言葉になる前に、肩を掴まれ、身体を反転させられた。
繋がっていたものが抜け落ちる感触に、脚の内側が震えた。
背中が、壁に当たる。冷えたタイルが、汗に濡れたブラウス越しに、肩甲骨へ食い込んだ。
壁の冷たさと、背中に残る熱。その落差に、身体が追いつかない。
目の前に、ひろしの顔があった。至近距離で見る男の目は乾いていて、どこも見ていないようで、それでいて、遥の全身をひとつずつ確かめている。
両の手首がまとめて掴まれ、頭の上の壁へ押しつけられる。指の関節がタイルの目地に当たって、鈍く痛んだ。
「動くなよ。制服が汚れる」
冗談のような声色だった。だが、掴む力に冗談はなかった。
ブラウスは、胸元のボタンがいくつか外れ、汗で濡れた布が肌に貼りついている。名札が片側だけ傾いて、胸の上に垂れていた。プリーツスカートは腰まで捲れ、太ももの途中で止まった純白のショーツが、脚の動きを縛っている。
ひろしの膝が、遥の脚のあいだに割り込む。閉じようとした内腿を、強い力が押し開き、片脚が、膝の裏から抱え上げられた。
抱え上げられた膝の裏に、男の腕が食い込む。持ち上げられた脚は、自分のものではないように軽く、力の入れ方さえ、思い出せなかった。
爪先が、床から離れる。体重のほとんどが、壁と、ひろしの腕にかかった。
「……や……っ……お願い、です……もう、立てません……」
「立たなくていい。支えてやる」
もう一方の腕が、遥の腰を引き寄せる。壁と男の身体に挟まれて、逃げる角度は、どこにもなかった。
低い声が、耳のすぐ横で言った。
その言葉が、慈悲でも配慮でもないことは、次の瞬間に分かった。
ひろしが、遥の奥へ、一息に押し入った。
遥の指が、壁を探した。頭の上で押さえられた手は、掴む場所もなく、空を握る。爪が、タイルの目地を短く掻いた。
達した直後の身体は、拒む力を持たなかった。抵抗のかわりに、濡れた粘膜が、彼の形を、深いところまで受け入れてしまう。
腹の底が、押し上げられる。息が、喉の途中で潰れた。
背中が壁に打ちつけられ、その衝撃が後頭部まで伝わる。天井の蛍光灯が、視界の上で揺れた。
水の音も、扉の外の音も、聞こえない。聞こえるのは、壁に打ちつけられる背中の音と、自分の喉が漏らす掠れた息だけだった。
一度。もう一度。
そのあいだ、遥の視線は、天井の一点に縫い留められていた。蛍光灯の傍らの、小さな黒い染み。数えられるはずのないものを、数えようとしていた。
繰り返されるたびに、タイルが冷たく軋み、ブラウスの布が擦れて、乾いた音を立てる。
制服のスカートの裾が、ひろしの腰の動きに合わせて揺れる。その布の下で何が起きているのか、遥の目からは見えない。見えないことが、かえって、生々しかった。
遥の頬に、ひろしの髪の匂いが触れた。汗と、安い整髪料の匂い。それが、嫌になるほど近い。
「制服の奥が、こんなに熱いとはな」
ひろしの唇が、遥の耳朶に寄る。
「バイト先で、何度も見てた。真面目な顔して、レジに立ってるお前を。制服の下がこうなってるとは、誰も思わないだろうな」
その言葉は、遥の胸の奥を、冷たい爪で撫でた。
レジの前に立つ自分。差し出される商品。何も知らない客たちの、退屈そうな顔。そこに、いまの自分が重なる。
接客用の笑顔。丁寧なお辞儀。ありがとうございました、という声。毎日、何度も繰り返してきた仕草のひとつひとつが、いま、別の意味で塗り替えられていく。
遥は、首を横に振った。
「……いや……見ないで……そんな、こと、言わないで……っ……」
「見せてるのは、お前だろ。制服のまま、そんな声を出して」
反論する言葉は、喉の途中で砕けた。
自分がどんな声を出していたのか。遥には、分からなかった。喉から漏れる音は、悲鳴とも、息とも、区別がつかない。
抱え上げられた脚が、痺れはじめる。壁に押さえられた手首が、感覚を失っていく。
それなのに、身体の奥の一点だけが、まだ熱を持って、ひろしの動きのたびに、細かく応えていた。さっき通り過ぎた絶頂の余熱が、消えきらずに残っている。
認めたくない事実が、認める前に、身体のほうで確定していく。
ひろしの視線が、遥の顔から胸元へ、抱え上げた脚の付け根へと、ゆっくり降りていく。その視線が通った場所だけ、皮膚が冷えた。
ブラウスの襟元で、名札のピンが皮膚に食い込んでいた。その痛みに気づいたのは、ひどく遅れてからだった。
「まだ締めてくるな。もう、痛いくらいだ」
ひろしの呼吸が、乱れはじめた。
汗が、彼の額から遥の頬へ落ちる。その温度さえ、他人のものだった。
動きが、深く、短く、速くなる。壁に押しつけられた背中がそのたびに擦れ、ブラウスの生地が、肌の上で熱を持った。
「奥に出すぞ。逃げるなよ」
「……っ……ゃ……」
逃げられるはずがなかった。
腰が、限界まで押しつけられ、その奥で、肉棒が脈を打つ。
「……っ、あ」
重い熱が、腹の底へ、ゆっくりと広がっていく。間隔を置いて、何度も、送り込まれる。遥は、天井の蛍光灯を見つめたまま、瞬きさえできずに、それを受け止めた。精液の温度が、内側から、身体の輪郭を塗り替えていくようだった。
流れ込む熱の量と、脈の長さが、逃げようのない事実として、遥の中に刻まれていく。
彼の吐息が、遥の髪を揺らす。荒く、湿った息。それが遠ざかるまでの数秒が、ひどく長かった。
終わりの合図のように、彼の腕から力が抜けた。それでも、その熱は、遥の中に留まったままだった。
手首を掴んでいた指が、ほどける。抱え上げられていた脚が、解放される。
支えを失った身体が、壁に沿って、崩れ落ちた。
冷たいタイルが、めくれ上がったスカートの下の素肌に触れる。膝を抱えようとして、腕が上がらない。
床の上で、ローターが、まだ低い唸りを上げていた。爪先のすぐ近くで、小さな円を描いて、止まる。
唸りは、少しずつ弱まりながら、それでも止まらなかった。
脚の付け根から、熱いものが、ゆっくりと伝い落ちていく。純白のショーツを、太ももの途中で濡らしながら。
頭の上から、荒い息が降ってくる。
床に落ちた自分の影が、照明を受けて、小さく丸まっている。
ひろしは、乱れた前髪をかき上げ、肩で息をしながら、遥を見下ろしていた。その目は、満足というより、乾いた確認のようだった。
視線が、遥の胸元の名札に、一瞬だけ留まった。「高橋」という二文字。それが、この男にとって、ただの記号でしかないことを、遥は知っていた。
「悪くなかったぞ、遥。制服のままで、これだけ乱れるとはな」
遥は、その言葉に、反応することができなかった。褒められているのか、貶められているのか、区別する力さえ、もう残っていない。
ひろしの指が、遥の顎にかかり、顔を上げさせた。涙の跡が、乾ききらないまま、頬に残っている。
「泣くほどのことでもないだろ」
遥は、視線を落とした。
制服は、着たままだった。外れたボタン、傾いた名札、皺だらけのスカート。ほんの少し前まで、ただの制服だったものが、いまは、何かの残骸のようだった。
洗面台の下の配管が、天井の光を、細く反射している。
遠くで、館内放送の柔らかな旋律が流れている。
耳の奥では、自分の鼓動だけが、まだ壁を叩いていた。
扉の向こうの笑い声が、水の底から聞こえてくるように、歪んで届く。
頭の上で、ベルトの革の擦れる音がした。
遥は、床の冷たさの中で、動けずにいた。
ここまで読んでくれてありがとう
選択を変えれば、結末は変わります。
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