週末の支配、駅前の約束――外で楽しむ命令に震える遥
朝の空気は静かだった。
休日のはずの部屋、カーテンの隙間から差し込む光が、
遥の眠りを浅く揺さぶる。
けれど、心は全く休まらない。
ここ数日、携帯の着信音がトラウマになっていた。
枕元で震えたスマートフォンを手に取る。
ひろし――
見慣れた名前が、画面の通知に並んでいる。
指が勝手に震えだす。
どこにも逃げ場はない。
メッセージを開くと、
短く冷たい命令が並んでいた。
『遥
週末は外で楽しもうか。
駅前に10時。
スカートのがいいぞ。
遅刻厳禁、忘れ物厳禁。
またよろしくな。』
その瞬間、
遥の心臓はどくんと大きく跳ねた。
休日のはずだった今日。
友達や家族と過ごすはずだった日常は、
もうとっくにどこかへ消えている。
かわりに現れたのは、
男からの命令と“またよろしく”という、
冷たい支配だけ。
「今日は外で」――
その言葉が、遥の脳に突き刺さる。
「外で……
人の目があるところで……?」
恥ずかしさと恐怖が全身を支配する。
あの日以来、遥は家で震えながら過ごしていた。
シャワーを浴びても消えない、
膣の奥に残る精液の違和感。
部屋の隅に置かれた一万円札。
使う気にもなれず、
ただの証拠品のように、部屋の空気をよどませている。
「行かなきゃ……
行かなきゃ、
またあの動画や写真をバラされる……
会社も家族も、全部……
壊される……」
遥はベッドから抜け出し、
鏡の前で制服のスカートを広げる。
「スカートがいいぞ」
その一言に逆らう勇気は、もうどこにもなかった。
制服のスカートを選ぶ。
太ももがむき出しになることの屈辱。
人の目が怖い、でも従うしかない。
カーテンを閉め切った部屋で、
ブラウスのボタンを留め、
膝上丈のスカートに着替える。
太ももの素肌、
かつて自分のためだった“おしゃれ”が、
今はただの「男の命令」に変わってしまった。
「行ってきます」
誰にも聞こえない独り言を呟く。
靴を履き、
震える指で携帯を握る。
「10時、駅前」
秒単位で刻まれるタイムリミット。
外の空気は、思ったより冷たい。
「誰かに見られたらどうしよう……
何をさせられるの……
どうして、
どうして私が……」
バス停まで歩く足が、重い。
制服のスカートが風に揺れ、
太ももが冷たい空気に晒される。
駅前までの道のり、
遥は何度も自分の影を見下ろした。
そこには、もうかつての自分はいなかった。
「外で楽しむ」
“何を”楽しむのか――
想像するだけで、膣の奥がきゅっと縮まる。
「今日は、
どこで、
何を、
誰と……
全部、男の気分次第なんだ……」
バスが駅前に近づくたび、
鼓動が速くなる。
カバンの中には、
ひろしからもらった一万円札が入っている。
金額は軽い、
でも、その重さは体に沁みついて離れない。
駅前のロータリー。
人混みの中に、
男がいるかもしれない。
時計は9時57分を指していた。
「遅刻厳禁」
その一言が、遥の背中を強く押す。
制服のスカートで、
何も知らないふりをして歩く自分。
カバンの中で携帯が震える。
ひろしからの着信。
「もう着いたか?」
画面に文字が浮かぶ。
遥は慌てて、「はい、着きました」とだけ返す。
「改札前で待ってろ。
すぐに見つけるからな」
改札の前に立つ。
人混み、
通学の制服姿、
サラリーマン、家族連れ――
みんな普通の一日を始めようとしている。
その中で遥だけが、
全く違う意味で
“制服のスカート”を穿いている。
「どうして……
なんで……
私は、
“商品”なんだ……?」
太ももに風が当たり、
膣の奥に冷たい痛みが残る。
制服の裾を引っ張り、
自分の身体を必死で隠す。
「お願い……
今日は何もありませんように……
誰にも見られませんように……
何もされませんように……」
その祈りも空しく、
スマートフォンの画面に再び
「ひろし」の名前が光る。
「こっち見ろよ。
すぐ後ろにいるから」
背筋がぞくりと冷える。
振り向くと、
人混みの中に、
ひろしの姿があった。
制服姿の遥をじっと見つめ、
にやりと笑う。
「いいな、そのスカート。
今日も“ちゃんと命令通り”だな。
さあ、
“外で”楽しもうか――
ちゃんと、
“楽しませて”くれよ」
遥は、
声も出せず、
震えながらうなずくしかなかった。
駅前の雑踏の中で、
遥の週末はもう、
男の手の中で始まっていた。
逃げ場のない日常。
外の世界でさえ、
もう自由にはなれなかった。


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