オフィスレディーが堕ちる夜:vol.36(送られたDVDと終わらない地獄)

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オフィスレディーが堕ちる夜:vol.36(送られたDVDと終わらない地獄)

誰かの視線が自分の身体を舐め回すような錯覚に、ふいに立ち止まってしまうことがある。

スマートフォンの通知音が鳴るたび、息が詰まり、鼓動が嫌なリズムで跳ね上がる。自分が人間として最低の汚物になってしまったあの夜から、遥の精神は常に薄氷を踏むような極限状態にあった。

そして――ついに、最も恐れていたその日がやってきた。

仕事から帰宅した遥を待っていたのは、郵便受けに放り込まれていた差出人不明の厚い封筒だった。手に取ると、中には真新しいDVDのケースが入っていた。

白いパッケージにはタイトルも何も記されていない。ただ、無機質な透明ケースの内側に光るディスクと、一枚のメモだけが添えられていた。

『“遥の乱交”――ライブ配信もチェックしろよ』

ご丁寧に、遥の名前だけが真っ赤なサインペンでなぞられていた。指先が小刻みに震え、足の力が抜けていく。静まり返ったリビングの空気が、いつもより何倍も重く、冷たく感じられた。

「……うそ……いやっ……」

ディスクを持つ手が震え、プレイヤーのトレイにうまく乗せられない。それでも、見ないわけにはいかなかった。何が録画されているのか、確認しなければという強迫観念に突き動かされるように、遥はおそるおそる再生ボタンを押した。

テレビの画面が黒く揺れ、すぐに極彩色の地獄が映し出される。

そこに映っていたのは――まぎれもなく、あの夜の遥自身の姿だった。

薄汚れたベッドの上で、四つん這いに突き出されたあられもない裸体。前と後ろ、そして口。すべての穴という穴を太く黒光りする異物に貫かれ、涙と嗚咽、限界を超えた痛みと暴力的な快楽にまみれて絶頂を繰り返す哀れな女の姿。

カメラは執拗に、彼女の涙や粘着質な唾液、恥知らずに溢れ出す愛液に濡れた太もも、そして未開の産道をこじ開けて注ぎ込まれた大量の精液が、だらしなく零れ落ちる様をねっとりとズームアップしている。

画面の向こうから、自分の口から出たとは思えないような醜い嗚咽と獣のような悲鳴が響き渡る。強引に子宮口を抉られる強烈な鈍痛の記憶が、フラッシュバックとなって下腹部を焼いた。見知らぬ男たちの暴力的な肉塊に、自分の柔らかな粘膜が蹂躙され、尊厳をズタズタに引き裂かれたあの瞬間の感覚が、今まさにそこにあるかのように蘇ってくる。

(……嘘……私じゃない……こんなの、私じゃない……っ)

必死に目を背けようとしても、耳を塞いでも、生々しい水音と肉が激突する破廉恥な音が、遥の心を容赦なく締め上げていく。

けれど、画面の中の自分は、髪を振り乱して泣き叫びながら、カメラに向かって懇願し続けていた。

『見てください、全部……っ!』

『ありがとうございました……っ!』

『また、してください……っ!』

人間の尊厳を完全に打ち砕かれ、男たちの玩具として這いつくばる無残な顔。処女であったはずの純白の肌が、数え切れないほどの痣と手垢にまみれ、おぞましい男たちの肉棒に群がられて貪られる姿が、あまりにも生々しく、高画質で映し出されていた。

手からリモコンが滑り落ち、床に乾いた音を立てる。

「……あぁっ……ひっ……ぐすっ……」

遥は、自分の身体が完全に誰かの所有物であり、公衆便所として消費されるだけの肉塊になったことを改めて痛感させられた。あの夜、痛みと恐怖で頭がおかしくなりそうになりながら、強引に絶頂へと引きずり込まれた自分が、今も世界のどこかで、見ず知らずの男たちの視線に舐め回され、自慰のオカズにされているのだ。

『これが、自分の現実になった』

絶望という言葉すら生ぬるい。自室のフローリングの上にへたり込み、遥は両膝を抱えて小さくうずくまることしかできなかった。目からは止めどなく涙があふれ、ボロボロと落ちていく。けれど、もう誰にも、この流出を止めることはできない。

そして――さらなる絶望が、スマートフォンの通知音とともに投下された。

画面に表示された短い文面は、ズタズタになった遥の心をさらに深く、致命的にえぐり取った。

『課長にも、匿名で送っといたよ』

一瞬、脳がすべてを拒絶した。

(……か、ちょう……?)

呼吸の仕方を忘れたように、胸の奥が激しく痙攣する。現実はあまりにも冷酷で、指先から心臓までが一気に凍りついたように冷たくなっていく。

「……まさか、そんな……っ。嘘、嘘ですよね……っ?」

誰もいない部屋に向かって虚しく問いかける。だが、ひろしのデスクの上に、先ほどと同じ白い封筒が無造作に置かれている光景が、あまりにも鮮明に脳裏に浮かび上がってしまった。

『“遥の乱交”』

あの地獄のような映像が記録されたDVDが。自分が、大勢の男たちの前で四つん這いにされ、前後の穴を同時に貫かれて白目を剥き、よだれを垂らしながら絶頂に狂っているあられもない姿が。尊敬するひろしの手によって再生される。

職場の静寂。コピー機の音。誰かが近くを通る気配。

これまで当たり前だった日常のすべてが、一瞬にして自分を嘲笑う地獄へと変貌していく錯覚に陥った。

ひろしが封筒を開ける。ディスクをプレイヤーに差し込む。あの夜の自分が、ひろしの部屋のテレビ画面に映し出される。未開だった産道を暴力的にこじ開けられ、腹の底を容赦なく打ち据えられる痛みに泣き叫ぶ姿。そして、無理やり快楽を刻み込まれ、女としての本能をさらけ出して喘ぎ狂う姿。

全てが鮮明に映し出され、あの優しいひろしの視線に舐め尽くされるのだ。自分がいかにだらしなく、下劣な女へと堕ちていったのか。激しいピストンに揺らされる度に飛び散る汗も、快感と痛みで不様に歪んだ顔も、その全てが克明な映像記録として課長の網膜に焼き付けられてしまう。

「……いやっ……いやぁっ……! だめ、それだけは、だめぇっ……!」

声にならない叫びが喉を裂く。名前は伏せられているかもしれない。けれど、映像の中の泣き濡れた顔は、どこからどう見ても遥自身だ。ひろしがそれを見て、どんな表情をするのか。軽蔑するか、あるいは……性欲を刺激されて自分を汚物のように見るのか。

それを理解してしまった瞬間、遥の心臓は破裂しそうなほど激しく打ち鳴らされた。

明日、会社でひろしと顔を合わせるのが怖い。

コピー機の前。会議室。給湯室。どこにいても、あの夜の自分が誰かの頭の中で再生されている気がして、息をすることすら恐ろしい。

『匿名で送っといたよ』

その一言は、一生消えることのない呪いとなって、遥の精神を完全に破壊した。

誰かが、どこかで自分を見ている。ひろしだけではないかもしれない。職場の同僚たち、すれ違う見知らぬ男たち。すべてが、自分を「いつでも犯せる慰み者」として見ているのではないかという恐怖。

「……だれにも、しられたく、なかった……っ。ぐすっ……ひぐっ……」

胃液がこみ上げるような吐き気と嗚咽。しかし、もう二度と元の人生には戻れない。ひろしが、あの夜の映像を見たあとで、自分にどんな視線を向けてくるのか。それを想像するだけで、遥の心も身体も、修復不可能なほどに砕け散っていった。自分の一生が、あの一夜の過ちによって永遠に取り返しのつかない泥沼へと沈み込んでいくのを、ただ無力に受け入れることしかできない。

いつか、会社中に、そして世界中に自分の恥態が知れ渡ってしまう。その絶対的な絶望の中で、遥は冷たい床に顔を押し当て、己の人生が完全に終わったことを悟りながら、声も出せずに泣き叫び続けるしかなかった。

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