▶ 名前変換:入力フォームを開く
【職場・OL】オフィスレディーが堕ちる夜:END(海辺の密室と救いの口づけ)
自分は取り返しのつかない罪を犯してしまったのかもしれない。
家庭を持つ、誠実で尊敬できる上司。そんな彼の腕の中に抱きしめられながら、遥の心は激しい罪悪感と、それを上回る圧倒的な安堵感に引き裂かれそうになっていた。自分がどれほど汚らわしい存在になってしまったのか、わかっているはずなのに。
(……罪だとしても……私……この人に抱かれたいと、思ってる……)
ひろしの大きく温かい指が、遥の冷え切った頬にそっと触れる。
震える肩を抱き寄せたまま、乱れた髪を優しく撫で、額に慈しむような唇を落とした。
「……寿子……」
静かに、絞り出すように名前を呼ばれるたび、遥の胸の奥深くがひどく疼く。
重なり合う手、絡み合う指。言葉もなく、ただ彼の体温だけを感じる時間が、ゆっくりと過ぎていく。かつて見知らぬ男たちに力ずくで開かされ、汚濁の精液を注ぎ込まれ続けたことで氷のように固く閉ざされていた遥の心が、ひろしの温もりによって少しずつ、けれど確実にほどけていった。
その日の夕方、ひろしの運転する車は、人気のない海辺に停まっていた。
穏やかな波の音だけが聞こえる、静かな海。
助手席のドアが重い音を立てて閉じられた瞬間、世界は再び、二人だけの密室になった。
外から聞こえるのは、一定のリズムで寄せては返す波の音。かすかに冷たい海風が窓を叩く音が、車内の時間の流れをひどく遅く感じさせている。
遥はシートに深く腰を下ろしたまま、自分の膝の上で両手をきつく握りしめていた。ブラウスの下の素肌が、緊張と期待で微かに粟立っている。
「……静か、ですね……」
「うん……でも、俺はこの静けさが好きだ」
ひろしの声は低く、落ち着いていて。それだけで、遥の胸の奥、まだ誰にも触れられていない柔らかい場所がくすぐられるように疼いた。
ふと強い視線を感じ、顔を上げる。ひろしの真っ直ぐな目が、逃げ場のない車内で遥をじっと見つめていた。
とても、優しい瞳。
けれど、その奥に確かな熱を帯びた、大人のオスの眼差し。理性と衝動が激しくせめぎ合っているのが痛いほど伝わってきて、遥の心臓がきゅうっと音を立てて締め付けられる。
彼の優しさが、ひどく苦しい。
彼の沈黙が、途方もなく怖い。
自分は、もう取り返しがつかないほどに汚れているのだ。誰にも言えないような異常な行為を、見知らぬ男たちに何度も強要されてきた。美しいままであったはずの純潔の蕾は無惨に引き裂かれ、男たちの欲求を満たすための卑猥な肉壺へと成り下がってしまった。
それなのに、こんなにも汚れた身体で、彼に触れられたいと、彼にめちゃくちゃにされたいと思ってしまう。この歪んだ感情が、たまらなく罪深く、おぞましいものに思えた。
だからこそ――もう、戻れないのだ。
「……キス……しても、いいですか……?」
その恥知らずな一言は、恐怖と熱情で震える唇から、ぽろりとこぼれ落ちていた。
ひろしは少し驚いたように眉を上げたが、すぐに微かに微笑み、遥の白い頬にそっと手を伸ばした。
「……寿子がいいなら……俺は、お前を拒まないよ」
その瞬間、遥の胸の中にギリギリのところで積み上げられていた理性の壁が、音を立てて完全に崩れ去った。
遥は震える両手でひろしの頬を包み込み、抗いがたい衝動に突き動かされるように、ゆっくりと、すがるように顔を近づけていった。
そして――そっと、唇が重なる。
最初は触れるだけの、羽のように柔らかく優しいバードキス。だが、次第に抑えきれない熱情が溢れ出し、遥の唇が意思を持ったように動き始める。
ひろしの少し荒れた下唇を、ゆっくりと、けれど確かに吸い上げる。互いの荒い吐息が交じり合い、濃密な熱が直接伝わってくる。
遥の湿った舌が、極度の緊張で震えながらも、遠慮がちにひろしの唇の隙間を探る。すると、ひろしもそれに応えるように力強く舌を伸ばし、遥の口内へと侵入してきた。
ちゅ……ぬちゅ……んっ、ちゅ、るるっ……。
くちゅくちゅと、いやらしく湿った水音が静寂の車内に響き渡る。静かだった空間が、瞬く間に濃密な情欲の色に塗り替えられていく。
遥の口内深くに入り込んだひろしの舌が、上顎をなぞり、歯列を舐め、柔らかい舌先を優しく、けれど確実に制圧していく。
ぬらぬらと熱く絡み合う舌の生々しい感触が、遥の背筋に強烈な電流を走らせ、きつく閉じた内ももの奥底にジンジンとした熱を発生させる。
「んっ……っ、はぁ……っ、んちゅ……っ」
身体を少しずつひろしの方へと傾けながら、遥は自分の心が快楽と安心感の中でドロドロに崩れていくのを感じていた。
(――こんなに汚れた自分でも……彼が、欲しいと思ってしまう……)
ディープキスが深まるたび、頭の中の酸素が奪われ、理性が真っ白に焼き切れていく。
彼の、男らしい舌。
彼の、タバコとコーヒーの混じった大人の息。
彼の、火傷しそうなほどの高い温度。
「課長……っ……はぁっ、んっ……」
激しいキスの合間、息継ぎの瞬間に、遥は喉の奥から絞り出すように懇願した。
「……こんなに、汚い私でも……っ」
「……抱いて、欲しいんです……っ」
その言葉に、ひろしの目が大きく揺れた。男としての強烈な欲情と、部下を守るべき理性が激しく衝突している。
けれど、もう後戻りできない遥は止まらなかった。
「……いろんな男の人に、めちゃくちゃにされて……汚れてて……弱くて……でも……っ」
その大きな瞳が潤み始め、次の瞬間、限界を迎えた感情が堰を切ったように溢れ出し、ぽろぽろと大粒の涙が頬を伝って落ちた。
「……わがまま、許してください……っ」
「……抱いて欲しいの……もう、ずっと……あなたの温もりだけが、欲しかったの……っ」
彼の優しさが、どうしても欲しい。
恐ろしい暴力を振るう見知らぬ肉棒ではなく、彼という人間に、理性ではなく本能のままに抱かれたい。
もう、何も考えずに、彼の深い愛の中に溺れて沈み込みたい――それは、もはや一般的な恋でも愛でもないかもしれない。でも確かにそこにある、狂おしいほどの“救いの欲望”だった。
ひろしは、悲痛な顔で涙を流す遥の頬を、太い指でゆっくりと拭った。
「……泣かないでくれ」
「お前がどんな理不尽な目に遭って、どんなに汚れたとしても、俺は……そんなことでお前を軽蔑したりしない。絶対にだ」
そして再び、強く、激しく唇が重なった。
今度はひろしの方から、強引に、深く。
絶対的な優しさと、抑えきれないオスとしての欲望が完全に混ざり合った、息もできないほど溺れるようなキスだった。
「……寿子……っ」
唇を重ねたまま、何度も愛おしそうに名前を呼ばれるたび、遥は自分が世界で一番価値のある存在として肯定されているような錯覚に陥り、胸の奥の冷たいしこりがドロドロに溶けていった。
「……こんなに汚れた私でも……本当に、大丈夫ですか……?」
「……大丈夫だ。お前は、ちゃんと俺の腕の中で、生きてる」
言葉よりも、その強く抱きしめる手が、その貪るような口づけが、すべてを物語っていた。
車内の空気は限界まで熱を帯び、二人の荒い呼吸だけが波の音に混じって響き続ける。もう、誰にも止められない堕落の夜が、静かに始まろうとしていた。
狂おしいほどのキスを交わしながら、遥の心はこれまでにないほどの奇妙な平穏に包まれていた。これから先、彼との禁断の愛がどのような破滅をもたらすのか。彼に全てを捧げた後、自分がどうなってしまうのか。そんな未来の不安は、彼から与えられる圧倒的な熱量と快楽の予感の前に、もはや些細な問題へと変わっていた。

コメント