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【眠る妹への禁断の夜】兄の歪んだ衝動と睡眠薬の罠:vol.5(唇に近づける)
ひろしの視線は、遥の唇から離れなかった。
今夜すでに三度触れた。そのたびに遥は眠ったままで、何も知らないままだった。唇の柔らかさと温もりが、まだひろしの唇に染みついている気がした。でも唇に唇を重ねることと、これからしようとしていることは、別の話だ。ひろしはそれをわかっていた。わかっていて、止まれなかった。
遥の口が、わずかに開いている。
眠っている人間の口は力が抜けて、自然に少し開く。薄いピンクの唇の隙間から、規則正しい吐息が漏れている。遥の吐息がひろしの肌にかかる距離まで、ひろしは顔を近づけていた。アルコールの甘い匂いと、眠っている人間の体温の匂いが混じっていた。
ひろしは自分の下着の中のものに、手を当てた。
硬い。ずっとそのままだった。深夜に入ってからずっと、ひろしの全身はそういう状態で動いていた。遥の頬に触れたときから。唇に触れたときから。服を脱がせたときから。遥の胸に触れたときから。遥の手に触れてもらったときから。すべてが積み重なって、今がある。童貞の二十年間で溜まってきたものが、今夜一度に噴き出そうとしている。
ひろしはゆっくりと自分のズボンを膝まで下げた。充血して熱を持っている。先端から、透明な液が滲んでいた。遥の手に触れてもらったときの感触が、まだ残っていた。指先の柔らかさが。体温が。女性の手に触れてもらったのは、今夜が初めてだった。
ひろしの視線は、わずかに開いた遥の口元へ固定された。
ひろしは自分の思考が形になるのを、少し遅れて自覚した。これがやりたかったのか。今夜最初からそこに向かっていたのか。わからなかった。でも身体は動いていた。ひろしはソファの位置を調整するように膝をずらして、遥の顔の前に腰を落とした。
遥の唇が、すぐそこにある。
距離が近い。ひろしの先端と、遥の口の距離が、数センチになった。そこから先に進む前に、ひろしは数秒間、動けなかった。心臓が耳の奥でうるさく鳴っている。手が震えている。膝も震えていた。自分がこれほど震えやすい人間だとは、今夜初めて知った。
遥は眠っている。まつ毛は閉じたまま。呼吸は変わらない。
ひろしは遥の顎に、そっと左手を添えた。親指が顎の下に入って、人差し指が頬に沿う。顎を支えるように、わずかに角度を変えた。遥の唇が、少し開いた。その隙間から、温かい吐息が漏れてくる。遥が生きている証拠がひろしの指先に伝わってくる。心臓の音はしないが、顎を支える指先から、首筋の脈が微かに感じ取れる気がした。
ひろしの中で、残っていた何かが崩れた。崩れた、というより、消えた。ここまで来て引き返すという選択肢が、もうひろしの頭の中に存在しなかった。
ゆっくりと、腰を前に傾けた。
先端が、遥の唇に触れた。
「……っ」
ひろしの全身が、一瞬固まった。遥の唇の柔らかさが、先端に伝わってくる。それが唇だとわかる感触。キスとは全く違う感触。唇に唇を重ねたときの感触は、口全体で感じるものだった。今は先端だけで感じている。その違いが、ひろしの呼吸を乱した。数秒間、ただそこに触れているだけでいた。動けなかった。動かなかった。
遥の唇が、わずかに動いた。
「……ん……」
夢の中から届いたような声だった。抵抗でも受け入れでもない、ただ何かを感じた声。遥の唇が反射的に微かに動いて、先端に押し当てられた形になった。その動きが、ひろしの全身に細かい震えを走らせた。
ひろしは息を止めた。
数秒間、何も動かなかった。時計の秒針だけが刻む。遥の呼吸は変わらなかった。眠り続けている。起きていない。
ひろしはゆっくりと腰を前に押し出した。
遥の唇が開いていく。押し開いていく。狭い。でも身体の力が全部抜けているので、抵抗はない。ただ柔らかく、温かく、中に入っていく。先端が、遥の口の中に入った。唇の粘膜が先端を包んだ。
「……ッく……」
声が漏れた。遥の口の中の温度が、先端全体を包んだ。温かい。手のひらとも、内腿とも違う。粘膜の感触が違う。密度が違う。体温が違う。ひろしの呼吸が乱れた。全身に熱が走った。これが本物だと思った。何度想像しても、本物はいつも違う。
遥の意識の底に、口の中の異変が届いていた。何かが入ってきている。熱い。硬い。脈打っている。口の中がそれで塞がれているような感覚。でも意識が形を結べない。アルコールと睡眠薬が、思考のすべてを溶かしていた。身体が動こうとする信号を出しても、筋肉が応答しない。夢の中で、誰かに口を塞がれている気がした。苦しいような、変なような。でも目が開かない。
遥の舌が、無意識に動いた。
唾液の反射で、舌先が先端に触れた。その感触が、ひろしの腰を大きく震わせた。意図した動きではない。遥の身体がただ反応しただけ。でもそれが、ひろしにはすべてだった。
「……遥……」
掠れた声が口から漏れた。妹の名前。嫌いな兄の名前を知っている遥が、今、何も知らないまま口の中にひろしを入れている。その事実が、ひろしの全身に熱を送り込んでいた。こんな場所にいる自分を、遥は想像もしていないだろう。バイトから帰って、紙コップを受け取って、ソファで眠って、それだけが遥の今夜の記憶のはずだ。
ひろしはゆっくりと、腰を引いた。それから、また少し前に押した。遥の口の中を、わずかに動いた。粘膜が先端を包む感触が、動くたびに変わる。遥の唾液が、先端を濡らしている。自分の液と遥の唾液が混じっている。
ひろしはその感触を、できる限り長く脳に刻み込もうとした。童貞の二十年間で、一度も想像しなかったわけではない。でも実際は、想像の何倍も、全部が違った。質感が。温度が。こちら側の感覚が。
遥の呼吸が少し乱れた。苦しいのかもしれない。でも目は開かない。意識は戻らない。睡眠薬が遥を深い眠りの底に縫い止めていた。
ひろしはゆっくりと腰を引いて、遥の口から出た。
遥の唇が、元に戻った。唾液で微かに濡れている。遥は何も知らないまま、また穏やかな呼吸を続けていた。
時計が深夜一時半を回っていた。両親は明日の夜まで帰らない。遥はまだ眠っている。バイト帰りの疲れとアルコールと睡眠薬が重なって、遥は深い眠りの中にいる。ひろしには時間があった。今夜、この部屋には二人しかいない。ソファに横たわる遥と、その傍らに膝をつくひろしだけが、深夜の住宅街の静寂の中にいる。
ひろしは遥の顔を、改めて見下ろした。眠っているとき、遥はひろしを嫌いではない。正確には、眠っているときの遥は、ひろしのことを何も思っていない。意識がないからだ。いつもの冷淡な視線も、壁を作る動作も、今夜はない。ただ静かに、無防備に眠っている。その顔が、普段より無防備に見えた。華奢な体型と言われたことがある。眠っているとさらにそう見えた。
ひろしの欲望は、もはや下腹部の重さとして全身を支配していた。遥の身体の多くに触れてきた。でも、まだ触れていない場所がある。ひろしの視線は、遥の下着の方へと移動した。ずっと下着一枚のままでいる場所。今夜の、本当の目的がそこにあった。
ひろしは、ゆっくりと遥の膝に手を当てた。
ソファの革が指の動きに合わせてわずかに軋んだ。静かな部屋では、その小さな音さえ後戻りを促す警告のように響いた。
ここまで読んでくれてありがとう
選択を変えれば、結末は変わります。
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