▶ 名前変換:入力フォームを開く
【自ら仕上げる】未熟な律動、飲み下す屈辱
(……自分で、動く……その方が、早く終わるはず……)
美琴は、絶え間なく溢れる涙の膜が張った瞳で、坂口の顔を見上げた。声は出せなかった。ただ、恐怖でガタガタと震える下顎を僅かに縦に動かして、それが絶望的な二択に対する彼女なりの答えの代わりだった。
この最低な男の手で、無理やり頭を動かされでもしたら、精神が完全に粉々に壊れてしまう。それだけは避けたかった。
「そうか。賢明だな。ならば、お前の意思で、自分から終わらせろ、御坂」
坂口の、顎の下を強制的に押し上げていた太い指が、ゆっくりと離れた。彼は窓際の椅子の背に、巨体を深く預け直した。両手を腹の前で緩く組み、まるで生徒の出来の悪い発表を上から見下ろして聞くかのような、ひどく傲慢で支配的な姿勢だった。
美琴の口の中には、坂口のその異物の先端の丸みが、いまだに不気味な存在感を放って留まっていた。
口が塞がっているため、鼻からしか息ができない。だが、息を吸い込むたびに、男の饐えたような皮膚の脂の悪臭と、生乾きの汗の匂いがダイレクトに鼻腔を突き抜け、胃袋を強烈に下から蹴り上げてくる。
塩気と、古い鉄錆のような不快な味が混ざった、生温かい拍動。
それが自分自身の口腔の粘膜に直接触れているという事実が、十四歳の彼女の精神を狂いそうなほどの生理的嫌悪感で締め付けていた。
(……私が……自分で動くの……この不潔なものを……)
その事実の持つおぞましい意味の重さを、彼女は正面から噛みしめることができなかった。まともに向き合えば、恐怖と吐き気でその場に倒れ伏してしまう。
彼女は、意識の蓋を無理やりきつく閉めた。心を完全に殺し、ただの機械になろうとした。閉めたまま、震える下顎に力を込め、ゆっくりと頭を下に傾けた。
坂口の異物が、美琴の口の、更に奥の暗がりへと侵入してくる。
舌の根元が、無遠慮に強い力で押し潰された。
「うぐっ……ごっ……」
反射で、喉の奥が強烈に絞まり、激しくえずいた。胃液が喉元までせり上がってくる。目尻から、痛みを伴うほどの生理的な涙が大量に押し出された。
それでも、彼女は自分から頭を前へ押し込んだ。
これ以上は奥に入らない、喉が完全に詰まるという限界のところで一度止め、そこから、吐き気を堪えながらゆっくりと頭を引き上げた。
震える唇の内側が、彼のそれの皮膚の脈打つ不気味な隆起を、ザラリと擦って離れた。
一往復。
(……できた……なんとか……できたけど……気持ち悪い……)
たった一回動かしただけだというのに、彼女の頬の内側のデリケートな粘膜は、既に坂口の異物の先端で擦られて鈍くヒリヒリと痛んでいた。
舌の上に、饐えた、透明で粘り気のある粘液の点がポトリと落ちて増えていた。その生臭い匂いに、彼女の下顎の付け根が極度のストレスで鈍く痺れ始めた。
二往復。三往復。
美琴は、震える両手を、床の冷たいリノリウムの表面にペタリとついた。四つん這いになり、更に頭を床に近づけた、完全な屈服と服従の姿勢。常盤台中学の誇り高きプリーツスカートの裾が、床の上に無防備に広がっていた。
(……早く……早く終わって……お願いだから……)
彼女は、震える頬の内側の粘膜を、ひたすら機械的に坂口のそれに擦りつけた。舌を根元から先端に向かって、ただひたすらに、自分が早く解放されたいという一念だけで動かした。頭の上下の不器用な動きと、舌の動きを、必死に組み合わせる。
そこには快感など一欠片も存在しない。ただ、圧倒的な恐怖と、喉の奥を突き破られるような息苦しさと、とめどなく溢れる涙だけがあった。
「……ほう」
坂口の、静かな、しかし確かな感嘆の息。
美琴の耳の後ろで、そのたった一音が、熱した鉄を押し当てられたように不快に響いた。
(……この人……満足してる……私が……こんな薄汚い男を……)
強烈な自己嫌悪の鋭い刃が、彼女の胸の奥をグサグサと無数に突き刺した。自分の尊厳が、音を立てて崩れていくのが分かった。
それでも、彼女は頭を動かすのを止めなかった。止めれば、この地獄が終わらない。動き続ければ、いつか必ず解放される。彼女の中には、その細い一本の蜘蛛の糸のような希望だけが、辛うじて千切れずに残っていた。
四往復。五往復。
頭を振るだけの単調なリズム。息が続かず、鼻からゼイゼイと苦しげな呼気を漏らす。
頬の内側の粘膜の痛み。擦れる皮膚のグロテスクな感触。鼻を塞がれる圧倒的な息苦しさ。全部が、彼女の神経を擦り減らしていく。
(……もう嫌……助けて……黒子……)
涙がとめどなく頬を伝った。伝った大量の涙が、彼女の下顎の先で集まり、床のリノリウムの上にボタボタと音を立てて落ちていく。口から溢れ出た涎が、純白のセーラー服の襟を汚らしく濡らしていった。
極度の肉体的・精神的ストレスにより、指先の微弱な放電がまた暴れかけた。パチッ、と、床についた掌の下で青白い火花が走る。
彼女は奥歯を砕けるほど強く噛み締め、超電磁砲のその強大な力の暴走の芽を、意識の鎖で必死に縛り直した。
学園都市第三位という最強の矛を持ちながら、こんな密室の床の上で、卑劣な男の言いなりになって力を封じ続けている自分が、彼女はただただ惨めで、無力で、たまらなかった。
やがて、坂口の呼吸の間隔が狭くなり始めた。
腹筋の緊張。太腿の微かなこわばり。彼女の顔のすぐ近くで、その男の身体の生理的な変化の兆しが、嫌でも伝わってきた。
「そのまま続けろ、御坂。絶対に止めるなよ」
坂口の声が低く掠れた。その声に含まれた獣のような響きに、美琴の全身の毛穴が恐怖で粟立った。
美琴は、固く目を閉じた。閉じたまま、頭の上下の速度を僅かに上げた。一秒でも早くこの地獄から抜け出すために。頬の内側の圧を僅かに強め、舌の根元で脈打つ不気味な隆起を必死に擦った。
坂口の巨体が、ビクンと一度大きく震えた。
ドクン、と、異様なほどの熱が脈打った。
次の瞬間。
美琴の口の奥、喉の手前のデリケートな粘膜に、坂口の得体の知れない生温かい液体が、勢いよくビュッと叩きつけられた。
生温かい。ひどく粘度が高い。
饐えたような、生臭い鉄気と強烈な塩気が混ざった、経験したことのないグロテスクな味が、口腔内いっぱいに広がった。
「んぐっ……げっ……うぇっ……」
美琴の喉の奥が、強烈な異物に対する拒絶反射で激しく絞まった。胃袋が完全に裏返りそうになる。
だが、坂口の異物は、まだ彼女の口の中に深く突き刺さったまま留まっていた。彼は頭を抜くことを許さなかった。抜かないまま、二度、三度、四度、とビクビクと脈打ち、彼女の口腔の内側の粘膜の全域に、そのおぞましい液体を容赦なく吐き出し続けた。
「一滴も零すなよ、御坂。全部、飲み込め」
坂口の絶対的な命令。掠れているが、冷酷で正確な音。
美琴の喉の奥が、恐怖と吐き気でヒクヒクと痙攣した。震えたまま、彼女はパニックになりそうな意識の蓋を更に深く閉め、強引にそれを飲み下した。
喉が、ごくり、と嫌な音を立てて鳴った。
饐えた、粘度の高いドロドロとしたソレが、彼女の細い食道をゆっくりと這うように下っていく感触が、あまりにも生々しく、鮮明に残った。
一度。二度。三度。喉が鳴った。
吐き気を堪えながら、全部を無理やり飲み下した。飲み下し終わって、彼女は這うようにして後ずさり、坂口のそれを口から離した。
離した瞬間、堪えきれなくなった大量の涙と涎が、床のリノリウムに滝のようにこぼれ落ちた。
(……終わった……やっと……終わった……)
激しく咳き込みながら、彼女の意識の蓋の内側で、その一言だけが呪文のように繰り返された。
震える両手で床の縁を掴み、彼女はフラフラと腰を起こそうとした。ここから立ち上がれば、この地獄は終わる。「一度だけ」という屈辱の契約は果たされた。彼女は、そう固く信じたかった。
しかし。
美琴の、涙でぐしょぐしょに滲んだ視界の真正面で、坂口のそれは、信じられないことにまだ全く萎えていなかった。
先端に、彼女が飲み残した粘液の光る雫を汚らしくぶら下げたまま、脈打つ太い血管の青緑の筋を怒張させたまま、坂口のそれは、彼女の目の前で、二度目の不気味な熱を宿してそそり立っていた。
「……よく出来たな、御坂」
坂口の、感情の読めない静かな声が、頭上から降ってきた。
「だが、俺はまだ、一度は終わっていないと感じている」
「……え……」
美琴の視線が、カタカタと震えながら、ゆっくりと坂口の顔に向けられた。
何を言っているのか全く理解できない、信じられない、という、絶望と涙で縁取られた大きな瞳。
「口内で吐き出しても、飲ませても、この契約における一度の数え方は俺が決める。当然だろう」
坂口の太い指が、床に這いつくばる彼女の栗色の髪の後頭部を、再びガシッと力強く掴んだ。今度は、先程のような選択を与える余裕はない。逃げ場を一切与えない、完全な暴力的な圧迫。
「……い、や……嘘でしょ……もう、飲んだから……約束……」
美琴の、恐怖で完全に掠れ切った声。涙でヒックヒックと引きつる声。だが、坂口の指の力は一切緩まなかった。
「もう一度、口を大きく開けろ、御坂。一度の、続きだ」
坂口の異物の先端が、彼女の震える唇の正面に再び突きつけられた。饐えた鉄気の粘液の悪臭が、彼女の鼻を無慈悲に直撃した。飲み下したばかりの、食道を焼くような不快な余韻が、まだ彼女の胃の底に重く残っているというのに。
(……続き……終わってないってこと……嘘……)
美琴の涙が、堰を切ったように激しく頬を伝い落ちた。涙目のまま、彼女は首を振って逃げようとしたが、後頭部を掴む坂口の強い指の圧に無理やり下顎を押し下げられ、二度目の口を、無防備に開かされた。
飲み下したばかりの、饐えた粘液の生々しい余韻の上に、二度目の坂口の異物が、ズリリと静かに押し込まれた。
連続で、二回戦が強制的に始まる。休憩など無い。絶望から這い上がる暇すらない。契約の「一度」という言葉の意味が、この卑劣な教師の匙加減一つで、完全に書き換えられてしまった。
美琴は、ぼろぼろと涙をこぼし続けながら、坂口の脈打つ熱を、二度目の舌の上に絶望とともに載せた。今度は、自我を保つための意識の蓋を閉める余裕さえ、彼女には残されていなかった。

コメント