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救助者を装った罠。山小屋で逃げ場を失う遥:vol.1(二つの選択)

犯罪・強制

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救助者を装った罠。山小屋で逃げ場を失う遥:vol.1(二つの選択)

木々の葉が風に揺れ、遠くでカサリと枝の音がした。
空は薄曇り、湿り気を含んだ空気がにまとわりつく午後。
その息苦しいほどの空気の重さは、まるでこれからの遥の運命を暗示しているかのようだった。

遥は、人気のない山道をひとり歩いていた。
軽いハイキングのつもりだった。
都会の喧騒から離れ、自然の中に身を置きたくて、週末を使って山へと足を運んだのだ。
まさかそれが、自分自身を深い絶望の淵に突き落とすことになるとは、この時の遥には知る由もなかった。

だがその何気ない選択が、逃げ場のない地獄の入り口になるとは思ってもみなかった。

 

ふいにぬかるみに足を滑らせ、遥の身体は前のめりに斜面を転がり落ちた。
乾いた落ち葉が舞い、細い枝が肌を激しくかすめ、衣服を引き裂く。
心臓が喉から飛び出しそうな、死の恐怖。
悲鳴すら喉の奥でつっかえ、叫ぶことさえできなかった。

(……っ! いや……っ、だれか……っ、たすけて……!)

「――危ないッ!」

低く太い声と共に、遥の細い腕が誰かの手に強く掴まれた。

がっしりとした男の無骨な腕に強引に抱き留められ、彼女の身体は寸前で谷底への転落を免れた。

「大丈夫か? 立てるか?」

見上げると、ひとりの男がいた。
日焼けした顔、短く刈られた髪。
体格はひどく大きく、厚手の登山用の服に身を包んでいる。
その服の隙間から覗く筋肉の隆起が、遥にはひどく威圧的に見えた。
しかし、命を救われたばかりの彼女に、彼を疑う余裕などあるはずもなかった。

「助けてくれて……ありがとうございます……っ、ほんとに……っ」

遥は震える声で、涙ぐみながら必死にそう告げた。
その瞬間は、本当に命を救われたと感じたのだ。
だが。

それが、遥を永遠の暗闇に縛り付ける、巧妙な罠の始まりだった。

 

男――ひろしと名乗ったその人物は、安堵の息を吐く遥に「近くに俺が使ってる山小屋があるから、少し休んでいこう」と言った。
足首を軽くひねっていた遥は、自力で下山することもままならず、その申し出に頷くしかなかった。
少し休めば、痛みも引くだろう。そう安易に考えてしまったのだ。

「無理しちゃいかん。とりあえずあそこで一息つこう。安全だからな」

その言葉の裏に潜む不気味な湿度に、本来なら不安を覚えるべきだったのかもしれない。
だがあのときの遥は、痛みと恐怖で思考がひどく鈍り、ただ「危機を救ってくれた親切な恩人」だという認識しか持っていなかった。

小屋は、木々の奥深く、日も当たらない薄暗い影に身を潜めるようにひっそりと建っていた。
古びてはいたが、中は意外なほど清潔で、最低限の生活用品は整っていた。
まるで、あらかじめ「獲物」を迎え入れるために準備されていたかのように。
外界から完全に隔離されたその空間は、どこか異様な静けさを保っていた。

だが――ふと気がつけば、唯一の出口である重いドアには外側から厳重な鍵がかけられ、わずかな明かり取りの窓は分厚い木の板で完全に覆われていた。

 

「……あの、少し休ませていただいたので……そろそろ帰らないと……」

遥がおずおずと、不安を押し殺しながら立ち上がろうとしたとき、ひろしの表情が、ぬるりと変わった。
先ほどまでの人の良さそうな笑顔が、氷のように冷たく張り付いたものになる。

「帰る? 何言ってんだ。今日はもう遅い。泊まっていくしかないだろう」

「でも……連絡だけでも……家族が、心配します……っ」

「電波なんか入らないよ。ここは、そういう特別な場所だ。俺とあんただけのな」

 

その声は、先ほどまでの親切な男のものとは思えないほど、どこか冷たく、そして酷薄だった。

そして遥はついに気づく。
この男が、自分を善意で助けたのではなく、自分の手元に捕らえるために待ち構えていたのだと。
周囲には何もなく、助けを呼ぶ声は分厚い木々の葉に吸い込まれるだけだ。
ここは、彼が支配する完全な密室なのだ。

じり、と一歩、また一歩と近づいてくる男の大きな影に、遥の背中は冷たい壁に貼り付いた。
足がガクガクと小刻みに震え、立つことすら辛くなる。
心臓が、恐怖で肋骨を突き破るかのように強く強く鳴る。

「こっち来ないで……っ、近づかないで……っ!」

「怖がらなくていいよ。優しくするから。おとなしくしてれば、悪いようにはしない」

 

地を這いずるような低い声が耳元に落ちてくる。
その吐息さえも、湿っていてひどく粘つくようだった。
獣の臭いが鼻腔を突き、遥の胃の腑が嫌悪感でねじれる。

遥の震える肩に触れた無骨な指が、ぞわりと薄着の皮膚の上を這う。
反射的にその手を振り払おうとするが、力の差は歴然だった。
男の太い指は、まるで鉄の万力のように、遥の細い手首をいとも容易く拘束した。

 

「やめて……ほんとに、やめてください……っ、お願い……っ」

「こんな人気のない山奥に、女が一人で来ればどうなるか……わかってるだろ? そんな甘い考えで来る方が悪いんだ」

「……えっ」

耳元で囁かれたその露骨で下劣な言葉に、遥の身体が完全に凍りつく。
血の気が一気に引き、視界がぐらりと揺れた。

「いい身体してんな……男の扱いに慣れてそうな、そそる色気がある」

男の言葉の端々が、じわじわと毒のように遥の精神を侵食していく。
必死に否定したいのに、男の荒い吐息がかかるたびに、処女ではない経験豊富な身体の芯が微かに反応してしまう自分が、何よりも恐ろしかった。

その目には、優しさも理性も、もはや微塵もない。
ただ、自分を犯し尽くすべき雌として見る、粘着質で凶悪な目だけがそこにあった。

 

強引に押し倒されたカビ臭い古びた布団の上、遥は身体を硬直させたまま、もはや絶対に逃げられないことを悟る。
いくら必死にもがいても、男の圧倒的な体重の下では、虫けらと同然だった。
ただ無様に組み敷かれることしかできない。

重なる不快で熱い体温。
無情に、そして手慣れた手つきで暴かれる衣服。
冷たい小屋の空気に露わになる柔肌に、鳥肌が立つ。

震える唇に触れる、粗い男の指先。
涙が滲み、恐怖で見開かれた目の端に、獣のような吐息が熱く容赦なく吹きかかる。

 

その下劣な振る舞いが、何よりも恐ろしく、屈辱的だった。
大事にされたいわけじゃない。
こんな乱暴な真似、見知らぬ男に犯されることなど、絶対に望んでなんかいない。

心ははっきりと激しく拒絶しているのに、男の手つきの異様な生々しさと的確さに、経験のある身体は恐怖と興奮の境界でひどく混乱し、言葉を失っていた。

背筋をねっとりと這うように撫でる手、秘所に触れそうで触れない、じれったくも意地悪なもどかしさ。
湿ったざらつく舌先が、華奢な鎖骨をゆっくりと這う。

「いや……あっ……や、だめ……っ、ひっ……」

震える抗議の声に被せるように、ひろしの舌が遥の敏感な耳朶をじゅるりと下品な音を立てて舐め取った。

 

「やっぱり、柔らかいな……ここも、こっちも……極上だ」

遥の身体の最も感じやすい敏感な場所ばかりを的確に狙うその手は、彼女の必死の防御本能と理性をゆっくりと、しかし確実にドロドロに溶かしていく。
拒絶の声が、男の巧みな愛撫の前に、次第に細くかすれ、抗えない甘い吐息へと変質していく。

 

「もう濡れてる……正直だね、身体は。俺に抱かれたがってる証拠だ」

「ちがっ……うそ、そんなわけ……あっ……」

「嘘じゃないよ。ちゃんと、ほら……見てみろ」

男の指が、湿り気を帯びた恥ずかしい証拠を絡めとり、遥の涙ぐんだ目の前に残酷に突きつける。
トロリと糸を引く蜜が、そこにあった。

深い絶望が、視界を真っ黒に覆った。
自分の身体が、心とは裏腹に、憎むべき男の愛撫に反応してしまっているという紛れもない事実が、遥の心を完膚なきまでに打ち砕く。

「こんな少し触っただけで濡れるなんて……とんでもねえ名器隠してたんだな。俺を満足させてみろ」

 

逃げ場のない、完全に閉ざされた山の密室。
男に抵抗する術は、もう何も残されていなかった。

「おまえの身体が受け入れるって言ってるんだ。このままじゃ、どうせ最後には鳴いて喜ぶんだろ。拒めるわけがないだろ」

「やめて……っ、ほんとに……っ、いや……っ、ゆるして……」

遥の最後の抵抗は、涙に濡れた掠れ声と、男の太い指をかすかに掴むその細い腕の惨めな震えだけ。
もはや抵抗する気力すら奪われかけていた。

だが――その痛ましいほどの無力さと怯えすらも、ひろしにとっては、よりサディスティックな支配欲を掻き立てる最高の興奮材料でしかなかった。

 

「このまま、一番奥の突き当たりまでぶち込むぞ。いいな?。それとも、無理やり手荒く乱暴されるか、お前の方から大人しく跪いて奉仕するか、選べ」

 

暗闇の密室に響く、悪魔のような選択肢。
どちらを選んでも、待っているのは陵辱と堕落の道だけだ。
遥の目から、取り返しのつかない絶望の涙が静かにこぼれ落ちた。

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