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【契約】契約書の罠、遥の撮影(エピローグ)vol.11
地獄のような撮影が終わった。
スタジオの無機質な照明が落ち、男たちはただの「仕事」が終わったかのように、事務的に機材を片づけ始めている。
遥は、ひとり薄暗い楽屋のパイプ椅子に崩れ落ちるように腰かけていた。
メイクはすでに、絶望の涙と鼻水、そして男たちのよだれや精液で完全にドロドロに溶け落ちていた。
鏡に映る自分の姿は、もはや人間のそれですらなかった。
虚ろで焦点の合わない死んだ魚のような目。
顔面は腫れ上がり、唇の端にはかすかに血が滲んでいる。
そして頬や首筋には、生臭い精液とよだれの残骸が、テカテカと醜い光沢を放ってこびりついていた。
廊下を歩くスタッフの足音が響く中、
遥は震える手を伸ばし、テーブルの上に置かれた紙コップを掴んだ。
中に入っていたのは、ぬるくなったミネラルウォーター。
一気に口に含む。
しかし――。
水を飲んだ瞬間、たった今、男の大量の精液を強制的に飲み下させられた喉の奥に、まだその強烈な悪臭と不気味な熱がへばりついていることを痛感させられた。
(……ごぽっ……おぇぇっ……)
舌の奥に、あの独特のドロリとした粘り気と、吐き気を催すほどの生臭さがフラッシュバックする。
遥は紙コップを落とし、床に這いつくばって激しく胃液を吐き出した。
口を開けるたび、
呼吸をするたび、
喉を通る空気の摩擦さえもが、あの巨大な肉棒で喉を破壊された絶望の記憶を呼び起こしてくる。
「あぁっ……おぇっ……ひっ……ぐすっ……」
遥は汚れた床でうずくまりながら、自分の太ももに触れた。
柔らかな感触の中に、
まだ自分の引き裂かれた膣の奥に残る、“大量の異物感”と“激痛”があった。
危険日。
二回連続の膣内射精。
そして、喉への強制射精。
自分が人間としての尊厳を完全に剥奪され、ただの精液処理用の『排泄口』として使われたという、絶対的な痕跡。
喉の奥にある精液と、子宮の入り口に溜まった精液。
それが、遥の“人間としての精神”を、完全に腐らせ、崩壊させていた。
声にならない悲鳴を上げながら、遥は自分の髪を狂ったように掻きむしった。
「……わたしの人生……おわっちゃった……っ……なんにも、なくなっちゃった……」
涙が枯れるほど泣いても、現実は何一つ変わらない。
契約書という一枚の紙切れによって、彼女の純潔も、未来も、尊厳も、すべてが合法的に略奪されたのだ。
自分の純潔な肉体が、薄汚い大人たちによって強制的にカメラに記録され、世界中の変態たちにバラ撒かれる。
どこかの誰かが、このレイプ映像を見て、下劣な欲望を満たして精液を吐き出すのだろう。
遥の血まみれの膣、よだれまみれの舌、死んだような目、恐怖に震える痙攣――そのすべてを、“エロス”という名目で消費する悪魔たちがいる。
(わたしは、もう……人間じゃないんだ……ただの、ゴミなんだ……)
そう思った瞬間、
遥の心の中で、何かが完全に『プツン』と音を立てて千切れた。
感情が、消失した。
ゆっくりと立ち上がる。
足元には、まだ膣から垂れ落ちた白濁と血の滴が、ドロドロと床を汚していた。
それを見つめ、遥は焦点の合わない目で、ただ呼吸だけを繰り返す肉人形へと成り果てていた。
清純派のイメージなんて、もとより幻だった。
残されたのはただ――悪意と暴力によって完全に精神を破壊された、ひとつの残骸だけだった。
窓の外は重く曇っていた。
九月の終わり。
ほんの少し涼しくなり始めた空気の中、
遥は薄暗い自室のベッドの隅で、ボロボロの部屋着のまま小さくうずくまっていた。
震える手で小さく腹部を撫でながら、何百回目かの絶望の確認をしていた。
「……まだ、来ない……どうして……っ」
生理予定日を、すでに二週間も過ぎている。
もともと生理不順など一度もなかった、正確無比な周期。
それが、今回は完全に止まっていた。
――あの地獄の撮影の日。
一番妊娠しやすい危険日だった。
しかも、二回連続での膣内大量射精。
処女を散らされたばかりの子宮口に、見ず知らずの中年男の不潔な体液が直接、大量にぶちまけられたのだ。
身体の奥底、下腹部がじんわりと重く、微熱を持ち続けている。
それが生理が遅れているだけのストレスなのか、それとも妊娠の初期症状なのか、遥にはもう判別がつかなかった。
だが、本能が最悪の結末を告げていた。
(……もし、ほんとに……お腹の中に……あの男の子供が……?)
想像しただけで、全身の血の気が引き、胃液が込み上げてくる。
自分が強姦された結果として、そのレイプ魔の遺伝子を体内で育てるなんて、絶対に正気ではいられない。
親には当然、何も言っていない。
大学にも行けなくなり、部屋に引きこもって、スマホで
“妊娠 初期症状”
“危険日 中出し 妊娠確率”
“中絶 費用 18歳”
といった検索をしては、絶望して泣き崩れる日々が続いていた。
そんなとき。
――ポトン。
郵便受けに何かが落ちる無機質な音が響いた。
心臓が、嫌な予感でドクンと跳ねた。
鉛のように重い身体を引きずり、玄関へ向かう。
そこにあったのは、見覚えのない無地の白い封筒。
差出人不明。
震える手で封を切ると、
中には、パッケージのない剥き出しのDVD-Rが1枚と、
プリントされた紙が1枚入っていた。
そこにはこう記されていた。
『契約に基づく映像データ(サンプル版)』
※近日中に販売開始となります。親御様への送付は、今後のあなたの態度次第です。
「――っ!! あぁっ……あぁぁぁっ!!」
遥は悲鳴を上げながら、その紙をビリビリに破り捨てようとしたが、指先がガタガタと震えて力が入らない。
あの日の、自分。
カメラの前で、豚のような男たちに蹂躙され、
膣を貫かれ、
大量の精液を注がれた瞬間の、決定的な証拠映像。
それがついに、世に放たれようとしている。
遥は狂ったようにDVDをプレイヤーに叩き込み、テレビの画面を見つめた。
なぜ再生するのか、自分でもわからない。ただ、自分の人生が終わったという事実を、この目で確認しなければ狂ってしまいそうだった。
テレビの画面に、映像が映し出される。
――制服姿の自分。
まだ何も知らない、普通の女子大生だった頃の自分。
そして、画面が切り替わり、地獄が始まる。
怯えた目。震える唇。
無理やり押し倒され、衣服を剥ぎ取られ、巨大な肉棒が処女膜を突き破る瞬間。
「あ……やだっ……やめて……見ないでぇっ!!」
映像の中の遥は、完全に恐怖と苦痛で顔を歪め、ボロ雑巾のように扱われていた。
チャプターが進むたび、
彼女の尊厳は完全に破壊されていく。
口を犯され、
嘔吐しながら精液を飲まされ、
膣内に深く挿れられ、
大量の白濁を中に出される。
――ビュチュッ、グチュグチュッ……!!
画面越しに、精液が直接子宮に叩きつけられる生々しい音が、スピーカーから無慈悲に響き渡る。
遥はテレビ画面を見つめたまま、過呼吸で肩を上下させていた。
(わたし……これを、世界中の人に見られるんだ……お父さんや、お母さんにも……)
自分が、レイプされる姿を記録され、数百円の娯楽として消費されるという事実。
それが、彼女の精神の最後の防壁を木っ端微塵に粉砕した。
画面の中の遥が、二回目の中出しをされた直後、
とろとろと血の混じった精液を垂れ流しながら、白目を剥いて痙攣し、完全に意識を飛ばすシーンで映像は終わった。
遥は、無意識に自分の下腹部を強く、強く殴りつけた。
「……っ……死ねっ……こんなの……死ねばいいっ……!! わたしも……これもっ!!」
胃がねじ切れるような吐き気。
呼吸ができない。
視界が真っ暗に明滅する。
自分の人生は、あの契約書にサインした瞬間に、完全に終わっていたのだ。
大学を辞め、家族から勘当され、一生消えないデジタルタトゥーを背負いながら、お腹の中のレイプ魔の子供に怯え続けるだけの、地獄の余生。
遥は、その場に崩れ落ちた。
足を閉じて、両膝を抱え、床に額を擦り付けて、ただ獣のようにうめき声を上げ続ける。
身体の中にも、世界中のネットワークにも、
彼女の消えない『汚辱の証』が、永遠に刻み込まれてしまった。
(……たすけて……お母さん……たすけて……)
誰にも届かない悲鳴が、薄暗い部屋の中に虚しく吸い込まれていく。
彼女の心は、完全な暗闇の中で、二度と浮上することなく壊れ去っていった。

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