【絶頂脱出】十回イくまで出られない部屋で、初めて潮を吹く遥:vol.5(壁の向こう)

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【絶頂脱出】十回イくまで出られない部屋で、初めて潮を吹く遥:vol.5(壁の向こう)

黒瀬はイヤホンを外したまま、遥の隣に腰を下ろした。まだ、止めないでほしい。遥のその言葉を、黒瀬はしばらく黙って受け止めていた。それから、壁のほうを見た。次の部屋に移る前に、一つ、話しておくことがある、と黒瀬は言った。

「……話しておくこと、ですか」

黒瀬は立ち上がり、壁の一面にかかっていた灰色の布を引いた。布の下から、大きなガラスの窓が現れた。窓の向こうは暗く、何も見えなかった。ガラスには、ベッドの上の遥の姿が、うっすらと映っていた。脚を開いたまま、ブラウス一枚で、濡れた太ももをさらしている女。

ハードモードの部屋には、観覧席がある、と黒瀬は言った。窓の向こうの部屋から、こちらが見える。こちらからは、向こうが見えない。会員の中には、それを目当てに来る人もいる。遥は息を呑み、反射的に脚を閉じた。窓の向こうに、誰かがいるのか。

「……今、誰か、いるんですか」

今日は、誰も予約していない、と黒瀬は答えた。観覧席は空だ。けれど、それを確かめる方法は、あなたにはない。黒瀬はそう言って、窓のガラスを指先で軽く叩いた。乾いた音がした。窓の向こうは、相変わらず真っ暗だった。

遥は、自分がいつからこんなふうになったのかを考えた。最初の部屋では、天井のカメラを気にして、下着を脱ぐのさえためらった。今は、誰かに見られているかもしれない窓の前で、脚を開いている。たった数時間で、自分の身体が、知らない誰かのものになっていくようだった。

遥は窓を見つめた。暗いガラスの向こうに、誰もいないと黒瀬は言った。けれど、もし誰かいたら。この三つの部屋で、自分がどんなふうにイって、どんなふうに潮を吹いたのか、全部見られていたとしたら。考えた瞬間、閉じた脚の間が、ひくりと熱を持った。

黒瀬は、遥のその反応を見逃さなかった。窓のことを話したら、また濡れた。黒瀬は静かにそう言い、遥の膝にそっと手を置いた。遥は首を振った。違う、と言いたかった。けれど、膝に置かれた手が、少しずつ脚を開かせていくのを、遥は拒まなかった。

「違います……そんなんじゃ、ないです……」

なら、確かめる、と黒瀬は言った。台車から、細いコードのついた小さな機械を取り上げる。卵形のローターだった。黒瀬はそれを、遥の入口に当て、指で中へそっと押し込んだ。小さな機械は、濡れた中に、するりと呑み込まれた。コードだけが、外に垂れていた。

スイッチが入った。中で、小さな機械が震え始めた。外から当てる電マとは違う、身体の内側から響いてくる振動だった。遥は思わず腰を浮かせた。黒瀬はその腰を両手で支え、遥を抱き起こして、窓の前まで連れていった。

「ん……っ、中で……」

奥でも入口でもない、ちょうど真ん中のあたりで、小さな機械が震えていた。どこにも逃げられない振動だった。腰をよじっても、機械は中で一緒に動く。遥は黒瀬の腕を掴み、その振動に耐えた。

ガラスに、遥の姿がはっきりと映った。ブラウスの前ははだけ、胸がこぼれ、脚の間から細いコードが垂れている。中で機械が震えるたびに、腰が小さく揺れているのが、ガラスに映っていた。遥はガラスから目を逸らそうとした。黒瀬が、後ろから遥の顎をそっと押さえた。

「やだ……見えちゃう、向こうから……」

誰もいない、と黒瀬は耳元で言った。さっき、そう言った。遥は首を振った。誰もいないと分かっていても、ガラスの向こうの暗闇が、自分を見ているような気がした。見られているかもしれない。その想像だけで、中の機械を締めつける力が、どんどん強くなっていった。

黒瀬は遥の両手を取り、ガラスにつかせた。冷たいガラスに、手のひらが貼りつく。遥の顔のすぐ前に、自分の映った顔があった。頬は赤く、目は潤み、唇は半開きになっている。黒瀬の手が、後ろから遥の胸を包んだ。もう片方の手が、垂れたコードを軽く引いた。

中の機械が、入口のほうへ引き寄せられた。入口の内側で、振動が暴れる。遥の膝が震えた。黒瀬はコードを引いたり緩めたりして、機械を中で行き来させた。奥へ、入口へ、また奥へ。遥はガラスに額を押しつけて、声を上げた。もう、我慢しなかった。

「あっ、それ、だめ……っ、ガラスの、前で……」

ガラスの前だから、と黒瀬が言った。いつもより、ずっと濡れている。遥は自分の太ももを、溢れたものが伝っていくのを感じた。ガラスの向こうの暗闇に向かって、自分はこんな姿をさらしている。波が、一気に押し寄せてきた。

遥はガラスに手をついたまま、イった。腰が跳ね、膝が崩れかけ、黒瀬の腕に支えられた。ガラスに押しつけた額と手のひらのまわりが、吐息で白く曇った。壁の数字が、九、に変わった。曇ったガラスの向こうは、相変わらず真っ暗だった。

遥は荒い息をつきながら、ガラスの曇りが少しずつ晴れていくのを見ていた。晴れていくガラスに、また自分の顔が映り始める。イったばかりの、だらしなく緩んだ顔。その顔が、暗闇の向こうに向けられていた。

黒瀬は機械のスイッチを切り、コードを引いて、中からそっと取り出した。それから、遥を後ろから抱きしめたまま、低い声で言った。最後の一回は、自分の身体で、と。ハードモードの最後の部屋には、道具がない。代わりに、どうやって最後を迎えるかを、あなたが選ぶ。

「……選ぶ、って」

黒瀬は三つの言い方をした。何も見えないように、目隠しをして。この窓の前で、このまま。それとも、自分の言うとおりに、全部、命令に従って。どれを選んでも、壁のリタイアボタンは、最後まで押せる。黒瀬の腕の中で、遥はガラスに映る自分の顔を見つめていた。

ガラスの中の女は、まだ物足りなさそうな顔をしていた。九回もイったのに。遥はそれを見て、自分が何を欲しがっているのかを知った。張り型ではなく、機械でもなく、後ろで自分を抱きしめている、この人のものを。遥は黒瀬の腕に、そっと手を重ねた。

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