【絶頂脱出】十回イくまで出られない部屋で、初めて潮を吹く遥:vol.5(道具のない部屋)

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【絶頂脱出】十回イくまで出られない部屋で、初めて潮を吹く遥:vol.5(道具のない部屋)

最後の部屋は、これまでのどの部屋とも違っていた。床には厚い絨毯が敷かれ、壁際に、白いシーツのかかった大きなベッドが置かれている。照明は柔らかく、ほんのりと暖かい色をしていた。そして、道具が一つもなかった。椅子も、機械も、張り型も、どこにもなかった。

「……道具、ないんですか」

遥がイヤホンに向かって聞いた。返事は、イヤホンからではなく、背後から聞こえた。ありません。振り返ると、開いた扉の前に、黒いシャツの男が立っていた。三十くらいで、背が高く、髪を短く整えている。黒瀬です、と男は言った。イヤホンと同じ声だった。

遥は思わず、濡れたブラウスの裾を両手で引っぱった。下着も、スカートも、もう身につけていなかった。ブラウス一枚の下で、脚の間がまだ濡れて光っているのが、自分でも分かった。この人が、ずっと声だけで、自分の数字を見ていた人なのだ。

黒瀬は部屋に入り、扉を閉めた。最後の部屋の課題は、一回、と黒瀬は言った。ただし、これは通常コースの最後の部屋の決まりです。最後の一回は、人の身体で。道具は使いません。黒瀬はそう言って、壁の赤いリタイアボタンを指さした。もちろん、ここでやめてもいい。

「……もし、やめたら」

九回までの記録は残りますが、賞金は出ません、と黒瀬は答えた。遥はリタイアボタンを見つめた。それから、黒瀬を見た。黒瀬の目は、穏やかだった。押しつけるような色は、どこにもなかった。ただ、遥の答えを待っていた。

遥は、自分の身体に聞いた。あと一回で、十万円。けれど、それよりも、知りたいことがあった。張り型でも、機械でもなく、人の身体でイくと、自分はどうなるのか。名器だと言われた自分の中が、人のものをどう締めつけるのか。

遥はリタイアボタンから目を逸らし、ベッドの縁に腰を下ろした。黒瀬は少しだけ目を細め、遥の前に立った。それから、遥の頬に、そっと指先で触れた。部屋に入ってから、初めて誰かに触れられた瞬間だった。張り型よりも、機械よりも、ずっと柔らかい感触だった。

「……ずっと、見てたんですよね。私の、数字」

見ていました、と黒瀬は正直に言った。三つ目の部屋で、記録を超えたときから、ずっと。声を聞いていた。数字を見ていた。それだけで、仕事にならなかった。黒瀬の声が、イヤホン越しに聞いていたときよりも、ずっと近くて、少しだけかすれていた。

黒瀬は遥の隣に腰を下ろし、ブラウスのボタンに手をかけた。一つ、また一つ。外されていくたびに、遥の胸が少しずつ露わになっていった。最後のボタンが外れ、ブラウスが肩から滑り落ちた。遥は、何も身につけていなかった。

黒瀬の手が、遥の胸に触れた。大きな手のひらが、柔らかい膨らみを包む。親指が、尖った先端をそっと撫でた。遥の身体がびくりと震えた。どの部屋でも、胸に触れられることはなかった。初めて触れられた場所は、驚くほど敏感になっていた。

黒瀬の手は、急がなかった。胸の形を確かめるように、ゆっくりと包み、離し、また包む。四つの部屋の機械は、どれも休みなく遥を責め立てた。この人の手は、遥が息を整えるのを、ちゃんと待っていた。

「ん……っ、そこ、……」

声が漏れた。壁を見ると、声の表示も、湿度の表示も、もう消えていた。この部屋には、計測器がない、と黒瀬は言った。声も、数字も、もう記録しない。数えるのは、回数だけだ。壁の上に、九、という数字だけが、静かに光っていた。

黒瀬は遥をベッドに横たえ、その上に覆いかぶさった。唇が、首筋に触れる。鎖骨に、胸に、胸の先に。唇が触れるたびに、遥の身体が小さく跳ねた。黒瀬の指が、脚の間に伸びた。入口に触れた指が、濡れたものをすくい上げ、突起にそっと塗り広げた。

九回もイったのに、と黒瀬が呟いた。まだ、こんなに濡れている。遥は顔を両手で覆った。言わないでほしかった。けれど、言われた瞬間、脚の間から、またとろりと溢れたのが分かった。黒瀬の指が、それを確かめるように、入口をゆっくりとなぞった。

指が、中に沈んだ。二本。張り型の部屋で、締めつけの記録が出た場所を、黒瀬の指は一度で探り当てた。押し上げられた瞬間、遥の中が指を強く締めつけた。黒瀬が、小さく息を呑んだ。数字で見るのと、指で感じるのとは、まるで違う。黒瀬は、そう呟いた。

「……違う、んですか」

全然違う、と黒瀬は言った。数字は、ただの数字だった。今は、指が奥へ引き込まれる。入口から奥へ、順番に締まってくるのが、指で分かる。黒瀬はそう言いながら、中の指をゆっくりと動かした。遥は、黒瀬の肩にしがみついた。

黒瀬は指を抜き、身体を起こした。シャツを脱ぎ、ベルトを外す。遥は、ベッドの上から、それを見ていた。黒瀬が最後の一枚を脱ぎ捨てた。遥は目を見開いた。三つ目の部屋の張り型と、よく似た形だった。けれど、張り型よりも太く、そして、かすかに脈打っていた。

あの張り型は、と黒瀬が言った。自分の形をもとに作った。遥の耳たぶまでが、かっと熱くなった。三つ目の部屋で、自分が跨って、腰を振って、名器だと言われた、あの張り型。それが、この人の形だった。知らないうちに、遥はもう、この人の形を身体で覚えていた。

黒瀬は遥の隣に横たわり、遥の顔を覗き込んだ。最後の一回を、どう迎えたいか、と黒瀬は聞いた。通常コースを最後まで来た人には、選んでもらうことにしている。一回でいいのか。それとも、もっとか。どんな格好がいいか。

「……選んで、いいんですか」

この部屋では、あなたが決める、と黒瀬は言った。遥は、黒瀬の顔を見つめた。それから、自分の身体の奥に聞いた。一回で終わりたいのか。もっと知りたいのか。答えは、もう決まっていた。遥は唇を開き、震える声で、最後の部屋での望みを口にした。

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