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【絶頂脱出】十回イくまで出られない部屋で、初めて潮を吹く遥:vol.6(命令の部屋)
「黒瀬さんの、言うとおりにします」
自分の言葉に、遥は息を呑んだ。黒瀬の腕の中で、ガラスに映った自分の顔が、驚いたように目を見開いていた。けれど、言い直しはしなかった。四つの部屋を抜けてくるあいだ、遥はずっと、自分で決めてきた。最後くらいは、誰かに決めてほしかった。
仕事でも、遥はいつも決める側だった。ツアーの行程も、客への提案も、全部自分で組み立ててきた。決めることには慣れていた。だからこそ、一度くらい、何も考えずに誰かの言葉に従ってみたかった。それが、こんな場所だとは思っていなかったけれど。
黒瀬は、遥を抱いていた腕をほどいた。それから、遥の正面に回り、顔を覗き込んだ。言うとおりにする、というのは、全部か。自分で触れと言ったら触る。言えと言ったら言う。それでいいのか。黒瀬の目は、真剣だった。遥は、小さく頷いた。
嫌になったら、と黒瀬は壁の赤いボタンを指さした。あれを押せばいい。命令より、ボタンが優先だ。それだけは忘れるな。遥はボタンを見て、もう一度頷いた。黒瀬は少しだけ表情を緩め、それから、声の調子を変えた。イヤホン越しに聞いていた、ゲームマスターの声だった。
「……はい」
ベッドに座れ、と黒瀬は言った。遥は言われたとおりに、ベッドの縁に腰を下ろした。脚を開け。遥は、膝をゆっくりと左右に開いた。もっと。遥はさらに開いた。太ももの内側の筋が、張り詰めた。照明の真下に、隠しようのない場所がまるごと晒された。
黒瀬は、遥の前に立ったまま、触れなかった。ただ、見下ろしていた。それから、次の命令を出した。自分の指で、開いて見せろ。遥は、顔が燃えるように熱くなるのを感じた。そんなこと、誰にもしたことがない。けれど、言うとおりにすると、自分で言ったのだ。
遥は、震える両手を脚の間に伸ばした。人差し指と中指で、濡れた襞を左右にそっと開く。中の、赤く濡れた場所が、照明の下にさらけ出された。遥は顔を背けた。黒瀬の声が、顔を背けるな、と言った。遥は、ゆっくりと顔を前に戻した。
「……こう、ですか」
そうだ、と黒瀬は言った。どうなっているか、自分で言え。遥は唇を震わせた。言えない。そう思った。けれど、黒瀬は待っていた。遥が言うまで、何もしないつもりだった。遥の指の下で、入口がひくひくと動いていた。それを、黒瀬はじっと見ていた。
黒瀬の視線は、遥の指先と、その下でひくつく入口とを、ゆっくり往復していた。言葉を待つ目だった。遥が何を見て、何を感じているのかを、遥自身の口から聞き出そうとする目だった。
「……濡れて、ます。すごく……」
それから、と黒瀬が言った。遥は、自分の脚の間を見下ろした。開いた襞の奥で、入口が何かを欲しがるように動いていた。遥は目を閉じて、震える声で続けた。中が、動いてます。何か、欲しがってるみたいに。言った瞬間、入口から、とろりと溢れたものが、指を濡らした。
言っただけで、溢れた。黒瀬が、静かに指摘した。遥は、恥ずかしさで息が止まりそうになった。けれど、指は離さなかった。命令は、まだ解かれていなかった。黒瀬は台車から、さっきのローターを取り上げ、遥の手に握らせた。自分で当てろ。突起に。
遥は、ローターを握った手を、自分の突起に近づけた。スイッチは入っていなかった。黒瀬が、壁のリモコンを手に取った。当てたら、入れる。遥は、ローターを突起の上にそっと載せた。その瞬間、ローターが震え始めた。遥の腰が跳ねた。
離すな、と黒瀬は言った。遥は、ローターを突起に押し当てたまま、歯を食いしばった。振動が、まっすぐ身体の奥に響いてくる。もう片方の手の指が、まだ襞を開いたままだった。開いた中から、溢れたものが流れ続けていた。
もっと強く押しつけろ。遥は言われたとおりにした。振動が、さらに深く突起に食い込んだ。内ももの筋が、ぴくぴくと勝手に跳ねだした。指を入れろ。遥は、襞を開いていた指を、そのまま中へ沈めた。二本。自分の指で、自分の中を。
「あ……っ、自分で……入れて……」
奥まで、と黒瀬が言った。遥は、指を根元まで沈めた。張り型の椅子で覚えた場所を、自分の指先で探る。届いた。お腹の側の、あの場所。遥は、そこを指先で押し上げた。命令されたわけではなかった。けれど、黒瀬は何も言わなかった。
自分の指で中を押し上げ、自分の手でローターを当てる。黒瀬は、一度も遥に触れていなかった。それなのに、遥の身体は、黒瀬の声に操られていた。声が出す命令が、遥の指を動かし、遥の手を動かしていた。遥は、それに気づいて、背中がぞくりと震えた。
イくときは、言え、と黒瀬が言った。黙ってイくな。遥は、喉の奥で声を詰まらせた。波が、もうすぐそこまで来ていた。言わなければ。けれど、言葉にするのが、恥ずかしかった。遥は、指とローターを動かしながら、唇を震わせた。
「イ……イきます、イっちゃいます……っ」
言った瞬間、波が来た。遥は自分の指を締めつけ、ローターを突起に押しつけたまま、声を上げてイった。壁の数字が、十、に変わった。扉が開く電子音が、小さく鳴った。遥は、ベッドの縁で、全身を震わせていた。
ローターの振動が止まった。黒瀬が、リモコンを置いた。遥は、自分の指を中に沈めたまま、荒い息をついていた。扉は開いた。命令は、まだ続いているのか。遥は、黒瀬の顔を見上げた。黒瀬は、遥を見下ろしたまま、何も言わなかった。
「……次の命令を、ください」
かすれた声で、遥は言った。黒瀬の眉が、ほんの少しだけ動いた。黒瀬は、遥の手首を取り、遥の指を中からゆっくりと引き抜かせた。濡れた指が、照明の下で光っていた。黒瀬は、その指を遥の目の前にかざした。そして、次の命令を口にした。
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