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【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.4(自分の腰で失う)
支えていたはずの膝が、自分の体重に負けた。崩れるように腰が落ち、残っていた指二本ぶんが一息に遥の中へ消えた。奥の、それまで誰も触れたことのない場所に、男の先端が深く突き当たる。目の前が白く弾け、遥は声にならない息を吐いて、男の胸の上に両手をついた。痛みというより、身体の芯を一本の熱い杭で貫かれたような衝撃が、腰から背骨を伝って頭のてっぺんまで駆け抜けた。
奥に当たった先端は、そこから先へは進まなかった。進む先がもう残っていないのだと、遥は身体で理解した。男のものは根元まで、遥の中にすべて収まっている。下腹の奥に、杭を打ち込まれたような重さがあり、息を吸うたびにその重さが内側から腹を押し上げてくる。男の胸についた両手が、汗で滑りそうになった。遥は指に力を込め、男のシャツの布地を握りしめて、崩れそうな上半身をなんとか支えた。
しばらく、何も考えられなかった。荒い息のたびに、中に収まった男のものの太さと長さを、内側の肉が勝手に確かめてしまう。根元まで呑み込んだ自分の脚の間を見下ろすと、浅黒い幹はもう少しも見えず、薄い肌が男の下腹に隙間なく重なっていた。その境目に、細い赤い筋が一本、にじんでいる。翔太に渡すはずだったものを、自分の腰で、この男に渡したのだと分かった。
不思議と、涙は出なかった。代わりに込み上げてきたのは、自分でここまで来たという、どうしようもなく恥ずかしい達成感だった。痛みはまだ奥で脈打っている。けれど身体はもう竦んでいなかった。翔太の前で二度も固まった身体が、四十を過ぎた男の上で、根元まで男を受け入れて、それでも震えながら座っている。遥は自分の下腹にそっと手を当てた。皮膚の向こうに、他人の硬さがあった。
目尻からこぼれたのは、痛みのせいなのか、別の何かのせいなのか、自分でも分からなかった。根元まで呑み込んだまま、遥は動けずにいた。少しでも腰を動かせば、内側で男のものが擦れて、引きつれるような痛みが走る。けれど、じっとしていても、奥の一点に押し当てられた先端の存在は消えない。息を吸うたびに下腹が膨らみ、中の男のものをわずかに締めつけ、その度に男の熱が奥へ伝わってくる。
「動け。止まってるぞ」と堂島が言った。胸の上の数字は、十五秒を切っていた。遥は慌てて腰を浮かせようとしたが、中で擦れた瞬間の痛みに、また動きが止まる。上げることも下げることもできず、遥はただ腰を小さく前後に揺らした。根元まで呑んだまま揺れると、奥の一点が男の先端にこすられ、痛みの中に、ほんのわずかな別の感覚が混じった。
あと五秒、四秒。遥は息を詰めて腰を揺らし続けた。ゼロになる直前、堂島の親指がようやく動き、ストップウォッチの数字が止まった。「十分だ。止まらなかったな」。遥は肩で息をしながら、男の顔を見下ろした。約束を守ったのだ。もう降りていいはずだった。なのに、膝に力を入れても、腰は男の上から浮こうとしなかった。
ゼロの手前で止まった数字を、遥はぼんやりと見つめた。九秒。それが、自分がやり遂げた証だった。男の胸の上で光る液晶の数字が、なぜか誇らしく見えた。痛かった。怖かった。何度も止まりかけた。それでも、最後まで自分の腰で沈め、自分の腰で揺らし続けた。翔太の前で二度も逃げ出した自分が、この十分間だけは、一度も逃げなかったのだ。
堂島は濁った目で遥を見上げ、低い声で言った。「降りるなら今だ。翔太とやらには、これで十分だろう」。遥は答えられなかった。中に収まっているものが、さっきより少し太くなったような気がする。痛みの引いていく奥で、まだ知らない何かが、男の形に吸いついている。降りたくない、という言葉が喉まで来て、遥は恥ずかしさに顔を背けた。
「延長するか」と堂島は言った。「俺は相変わらず動かん。ただ、やり方はお前が選べ」。男は顎で部屋の隅を示した。壁に立てかけた古い姿見が、蛍光灯の光を鈍く跳ね返している。次に、ソファの背にかけた白いタオル。最後に、テーブルの上の自分のスマホ。「鏡の前で跨り直すか。手首を縛って、手をつかずにやるか。撮られながらやるか」
男の言葉に、遥の頭の中で、ばらばらだった感情がひとつの形になっていく。翔太のために覚えたかったはずのこと。それはもう、果たした。けれど、果たしたからといって、ここで降りて部屋に戻り、何もなかったように眠れるとは思えなかった。中に収まったものの熱が、まだ下腹の奥で少しずつ広がっている。この熱の行き先を、遥はまだ知らなかった。
遥は息を呑み、男の胸についた指先に力を込めた。どれも、さっきまでの自分なら、聞いただけで逃げ出していたはずのものだった。鏡に映る自分の顔。後ろで縛られた手首。録画の赤い点。そのどれを想像しても、恥ずかしさと同じだけ、下腹の奥が熱く疼いた。中に収まったままの男のものが、その疼きをはっきりと感じ取って、わずかに跳ねた。
鏡を選べば、自分の顔を見ながら腰を振ることになる。タオルを選べば、両手を後ろで縛られて、自分の重さだけで男を呑み込むことになる。スマホを選べば、繋がったままの自分の姿が、誰かの画面に残ることになる。遥はひとつずつ想像して、そのたびに頬が熱くなるのを感じた。どれも、さっきまでの自分には考えられないことだった。
天井の上で、また床が鳴った。美咲はまだ起きている。遥は男の胸についた手を握りしめ、震える唇を開いた。「……選んだら、もう、戻れないですよね」堂島は何も答えず、ただ遥の言葉の続きを待っていた。三つのどれを選ぶのか。男を根元まで呑み込んだまま、遥は自分の口から出る次の言葉を、自分でも分からずに待っていた。
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