【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.5(縛られた手首)

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【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.5(縛られた手首)

「……縛って、ください」自分の口からその言葉が出たとき、遥は耳まで熱くなった。鏡もスマホも、誰かの目に自分の姿が残ることが怖かった。縛られるなら、見ているのはこの男だけだ。そう考えて選んだはずなのに、口に出したとたん、それが一番恥ずかしい答えだったような気がしてきた。堂島は表情を変えず、ソファの背にかけた白いタオルを片手で引き寄せ、遥の膝の上に放った。

「自分で後ろに回せ。結ぶのは俺がやる。動くのはそれだけだ」。遥は根元まで男を呑み込んだまま、膝の上のタオルを手に取った。古い洗剤の匂いがする、何度も洗われて薄くなった布だった。それを両手で持ったまま、遥はしばらく動けなかった。手を後ろに回してしまえば、もう男の胸に手をついて身体を支えることはできない。自分の膝だけが、自分の重さを支えることになる。

胸の上のストップウォッチは、新しく五分に合わされていた。数字はまだ動いていない。遥が手首を差し出すまで、堂島は待つつもりらしかった。遥は唇を噛み、タオルを自分の腰の後ろに回して、両手首を重ねた。背中で交差した手首に、薄い布が軽く絡まる。それだけで、肩が後ろに引かれ、裸の胸が男の目の前に突き出される格好になった。

堂島の手が、初めて遥の身体に触れた。いや、触れたのは遥の手首に巻かれたタオルだけだった。男の太い指が、布の端を器用に結び合わせていく。強くもなく、緩くもない。けれど、遥がどれだけ手首をひねっても、自分ではほどけない程度の結び目だった。結び終えると、男の手はまた肘掛けの外へ戻り、そこから二度と動かなかった。ストップウォッチのボタンが押された。

結ばれた手首を、遥はそっと引いてみた。布は肌に食い込むほどきつくはないのに、どう動かしても、両手は背中から離れなかった。自分で頼んだことだった。それなのに、ほどけないと分かった瞬間、胸の奥で何かが落ちた。もう、この男の胸に手をついて逃げることはできない。降りることさえ、自分ひとりではできないかもしれない。その心細さが、なぜか下腹の奥を熱くした。

両手を失ったとたん、遥の身体は思っていたよりずっと不安定になった。上半身がわずかに前へ傾くだけで、膝にかかる重さが変わり、中に収まった男のものの角度が変わる。慌てて背中を起こすと、今度は腰が後ろへ沈み、奥の壁に先端が強く当たった。遥は短く息を呑み、肩を震わせた。手をつけないということが、こんなにも心細いものだとは思っていなかった。

膝で身体を支えようとすると、太ももの内側がすぐに震え出した。さっきまでの十分間で、脚の筋肉はもう限界に近づいていた。両手で男の胸を押していたからこそ、なんとか腰を浮かせていられたのだと、遥は今になって気づいた。今は、膝だけしかない。その膝が、わずかに緩むたびに、遥の身体はゆっくりと男の上に沈み込んでいく。

「上げてみろ」と堂島が言った。遥は膝に力を込め、腰を持ち上げようとした。中から男のものが少しだけ引きずり出される。けれど、数センチ持ち上げたところで、太ももの震えが一気に強くなった。支えがない。手をつけば楽になるはずなのに、手首は背中で結ばれていて、ほどけない。遥の腰は、持ち上げた高さを保つこともできずに、また少しずつ沈み始めた。

沈んでいくあいだ、遥は自分の中を男のものがゆっくりと押し進んでくるのを、逃げ場なく感じ取らされた。自分で沈めているのではない。自分の重さに負けて、勝手に沈んでいくのだ。止めようとしても、膝に力が入らない。内側の壁が男の幹を擦りながら呑み込んでいき、その一ミリごとの感触が、手で身体を支えていたときよりもずっと鮮明に、遥の頭に届いた。

真上の部屋で、誰かが寝返りを打ったように床板が小さく軋んだ。遥ははっとして、背中で縛られた手首を思わずひねった。結び目は、少しもほどけなかった。もし今、誰かが扉を開けたら、自分は胸も脚の間も隠すことができない。両手を後ろで縛られ、男の上に跨ったまま、ただそこに晒されることになる。その想像だけで、遥の中は男のものを強く締めつけた。

膝の下で、古いソファのスプリングが軋んだ。遥が身体の均衡を取り直すたびに、座面がわずかに沈み、そのたびに中の男のものの角度が変わる。手で支えていたときには気にもしなかった小さな揺れが、今はすべて、身体の奥に直接響いてくる。遥は目を閉じて、膝にかかる自分の重さと、奥に当たる男の先端の位置とを、ひとつずつ確かめようとした。

堂島の喉が上下した。男は、遥が自分の重さに負けていく様子を、濁った目でじっと見上げていた。手を使えない女が、膝だけで必死に腰を支えようとし、それでも少しずつ沈んでいく。その姿が、この男には何より面白いのだろうと遥は思った。そう思うと恥ずかしさで頬が焼けるのに、その恥ずかしさが、また下腹の奥の疼きを強くしていった。

遥は肩で息をしながら、なんとか背中をまっすぐに保とうとした。少しでも前に傾けば、腰が後ろへ沈む。少しでも後ろに反れば、奥に当たる。身体の均衡を保つだけで、全身の神経を使わなければならなかった。そのあいだにも、ストップウォッチの数字は減り続けている。止まってはいけない。けれど、手のない身体で、どう動けばいいのか分からなかった。

手首を縛られてから、まだ一分も経っていなかった。それなのに、遥にはもう何十分も経ったように感じられた。数字が減っていくのを見るたびに、残された時間がどれほど長いかを思い知らされる。四分と少し。そのあいだ、手を使わずに、膝だけで、この男の上で止まらずにいなければならない。遥は自分の太ももを見下ろし、その震えの大きさに、思わず息を呑んだ。

「……どう、動けば」と震える声で訊くと、堂島は短く答えた。「好きにしろ。止まらなきゃいい」。遥は唇を噛み、膝の力をほんの少しだけ緩めてみた。すると、身体が自分の意思とは関係なく、ゆっくりと沈み始めた。止めようとしても、もう太ももには力が残っていない。支えを失った遥の腰は、自分の重さに引かれて、奥へ向かって沈み込んでいこうとしていた。

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