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【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.5(向けられたスマホ)
遥の視線が、テーブルの上のスマホに止まったまま動かなかった。それに気づいた堂島は、肘掛けの外に垂らしていた右手を、初めてゆっくりと持ち上げた。テーブルのスマホを掴み、また胸の前へ戻す。動いたのは、その片腕だけだった。「……それで、撮るんですか」と遥が訊くと、男は画面を指でなぞりながら、「嫌なら今降りろ」とだけ答えた。
降りる、という選択肢は、まだ確かにそこにあった。十分間の約束は果たしたのだ。今ここで腰を浮かせ、服を拾って部屋を出ても、この男は追いかけてこない。それは分かっていた。けれど、遥の膝は動かなかった。根元まで呑み込んだ男のものが、遥の中で、まだ熱く脈を打っている。それを置いて部屋に戻ることが、遥にはどうしてもできなかった。
堂島は、ストップウォッチを新しく五分に合わせ、胸の上に置き直した。そして、スマホを片手で持ったまま、レンズを遥のほうへ向ける。画面の端に、小さな赤い点が灯った。録画が始まったのだと、遥にも分かった。その赤い点を見た瞬間、遥の全身が熱くなり、中の壁が男のものを強く締めつけた。
「顔を上げろ」と男が言った。遥は首を横に振った。顔を伏せたまま、裸の胸を両腕で隠そうとした。「隠したら止まったのと同じだ」。遥は唇を噛み、腕を下ろした。それから、ゆっくりと顔を上げた。レンズの黒い丸が、まっすぐにこちらを見つめている。その向こうに、自分の姿が記録されていくのだと思うと、遥は息をすることさえ忘れそうになった。
男が、スマホの画面を遥のほうへ少しだけ傾けた。そこに、自分の顔が映っていた。乱れた黒いボブ、熱で赤くなった頬、噛みすぎて腫れた唇。目尻には涙の跡があり、それなのに瞳はどこか潤んでいる。画面の下のほうには、裸の胸と、たくし上げたスカートの陰で男と繋がった自分の脚の付け根が、はっきりと映り込んでいた。
遥は思わず目を逸らそうとした。けれど、画面の中の自分から、目を離すことができなかった。これが、今の自分なのだ。四十を過ぎた男の上に跨り、処女を失ったばかりの場所に男を根元まで呑み込んで、それを撮られている女。翔太が知っている遥とは、まるで別人だった。それなのに、画面の中の女の顔は、恥ずかしさと同じくらい、何かを待っているように見えた。
「動け」と堂島が言った。遥は膝に力を込め、腰をほんの少しだけ前へ滑らせた。画面の中の自分も、同じように腰を揺らす。その動きが、レンズを通して記録されていく。遥は自分の腰の動きが、画面の中でどれほどいやらしく見えるかを、目の当たりにさせられた。それでも、腰を止めることはできなかった。止まれば、終わる。
レンズの黒い丸を見つめているうちに、遥は、その向こうに誰かがいるような錯覚にとらわれた。いつか、この映像を見る誰か。顔も名前も分からない誰かが、画面越しに自分の腰の動きを見つめている。その想像が、男の視線とはまた違う熱で、遥の肌を炙っていった。遥は思わず、腰の動きを少しだけ大きくしていた。
画面の中で、結合部が濡れて光っていた。前へ滑らせるたびに、男の下腹に押しつけられた自分の茂みが光り、後ろへ戻すたびに、浅黒い幹の根元がわずかに覗く。その光景が、録画の赤い点と一緒に、小さな画面の中に収まっている。遥は自分の身体が、こんなふうに記録されていくことに、震えるほどの恥ずかしさを覚えた。
録画されていると思うと、身体の反応がまるで変わった。腰を揺らすたびに、下腹の奥が強く縮み、蜜が溢れ出していく。見られている。いや、それ以上に、残されている。いつか誰かが、この映像を見るかもしれない。そう思うだけで、遥の中は男のものを締めつけ、そのたびに擦れる感触が鋭くなっていった。
頭の上で、古い床板がきしむ音がした。美咲がまだ起きているのだ。遥は思わず天井を見上げ、慌ててレンズのほうへ顔を戻した。「誰か起きてるな」と堂島が言った。画面の中の遥の顔が、怯えたように歪む。その表情さえも、録画の中に収められていく。遥は唇を噛み、腰を揺らし続けた。録画の時間を示す数字が、画面の隅で一秒ずつ増えていった。その数字が増えるぶんだけ、自分の姿が残っていく。
堂島は、スマホを持った腕を少しずつ動かして、画面の角度を変えていった。最初は遥の顔、次に揺れる胸、そして結合部。レンズが自分の身体のどこを映しているのかを、遥はスマホの角度から読み取ることができた。レンズが下へ向くたびに、遥の腰は勝手に速くなった。見られている場所が、そのまま熱くなっていくようだった。
遥は男の胸に両手をつき、膝に力を込めた。前後に揺らすだけでは、もう物足りなくなっていた。持ち上げて、落とす。そうすれば、もっと深く届く。けれど、それをレンズの前でやることになる。持ち上げた腰が落ちる瞬間、男のものが奥まで呑み込まれていく様子が、すべて画面に映ってしまう。
「……これ、誰かに見せたりしないですよね」と遥は震える声で訊いた。堂島は答えず、ただ画面を遥の顔のほうへ戻した。答えないことが、答えなのかどうか、遥には分からなかった。けれど、その不安でさえも、今は下腹の奥の疼きを強くするだけだった。画面の中の女が、潤んだ目でこちらを見つめていた。
遥は膝に力を込め、腰を持ち上げ始めた。画面の中で、濡れた幹が少しずつ姿を現していく。半分ほど引き抜いたところで、遥は息を止めた。録画の赤い点が、相変わらず画面の端で灯っている。膝を緩めれば、それはまた一番深いところまで戻ってくる。その瞬間が、この画面の中に、永遠に残ることになる。遥は画面の中の自分の顔を見つめたまま、腰を落とそうとしていた。
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