▶ 名前変換:入力フォームを開く
【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.5(鏡の中の顔)
「……鏡の前で」と遥が答えたとき、ブラウスのポケットの中で、スマホの振動がようやく止んだ。翔太からの着信は、遥が出ないまま切れたのだ。その静けさが、なぜか遥の胸を締めつけた。出なかったのは自分だ。選んだのも自分だ。遥は男の上に跨ったまま、部屋の隅の古い姿見のほうへ、ゆっくりと視線を向けた。
堂島はソファから降り、姿見の正面の色褪せた畳の上に仰向けに寝そべった。動いたのは場所を移すためだけで、横になると、また両腕を畳の上に投げ出した。男のものが中から抜けた瞬間、遥は奥に空いた穴のような寂しさに驚いた。さっきまで痛みしかなかった場所が、今はもう、男の形を恋しがるように疼いている。
ストップウォッチは新しく五分に合わされ、男の胸の上に置かれた。遥は四つん這いに近い格好で畳を進み、もう一度、男の腰の上に脚を開いた。正面に、姿見がある。視線を少しでも上げれば、そこには逃げ場のない自分の姿がある。遥は顔を上げる前に、自分の手で男のものを握り、先端を入口に当てた。一度通った道は、もう遥を拒まなかった。腰を落とすと、濡れた肉が男の幹を滑らかに呑み込んでいく。
根元まで沈めたとき、遥の口から、自分でも驚くほど甘い息が漏れた。痛みはもうほとんどなかった。代わりに、奥の壁に先端が押し当てられた瞬間、下腹の底から、温かいものが湧き上がってくる。遥はその感覚を確かめるように、根元まで呑み込んだまま、小さく腰を揺らした。奥の一点が擦れ、また甘い痺れが広がっていく。
「顔を上げろ」と堂島が言った。遥は唇を結んだまま、伏せていた目を鏡のほうへ向けた。鏡の中に、ひとりの女がいた。乱れた黒いボブ、熱で赤く染まった頬、噛みすぎて腫れた唇。そして、その目は、とろけるように潤んでいた。焦点がどこにも合っておらず、半開きの唇からは、浅く速い息が漏れている。それが自分の顔だと理解したとき、遥は全身の血が逆流するような恥ずかしさに襲われた。
こんな顔を、自分はしていたのだ。翔太の前では一度も見せたことのない顔だった。いや、自分自身でさえ、一度も見たことのない顔だった。快楽にとろけかけた、だらしなく緩んだ女の顔。遥は目を逸らそうとした。けれど、鏡の中の女の目が、遥の目を捕らえて離さなかった。気持ち悪い、と思った。それなのに、目が離せなかった。
視線を少し下げると、鏡の中で、男の下腹と自分の脚の付け根が、隙間なく重なっていた。皺になった紺のスカートの裾の奥で、自分の茂みと男の茂みが濡れて絡み合っていた。その境目には、まだ赤い筋が残っていた。自分の身体が、男のどこまでを咥えこんでいるのか。それを、鏡は少しも容赦なく映し出していた。
遥は、根元まで呑み込んだまま、腰をゆっくりと前後に揺らした。鏡の中の女も、同じように腰を揺らす。その動きは、遥が思っていたよりずっと大きく、いやらしかった。前へ滑らせるたびに、男の下腹に押しつけられた茂みが濡れて光る。腰を引くたびに、濡れた肉がめくれるように男の幹にまとわりつき、また呑み込んでいく。
鏡の中の女の顔は、腰を揺らすたびに、さらにとろけていった。眉が寄り、目尻が下がり、唇がさらに緩む。遥はその変化を、まるで他人の顔を見るように見つめていた。嫌悪感があった。こんな顔をする女は、自分ではないと思いたかった。けれど、腰を揺らすたびに、鏡の中の顔と同じように、自分の顔の筋肉が緩んでいくのが分かった。
堂島は、何も言わなかった。畳の上に仰向けになったまま、濁った目で、鏡の中の遥と、本物の遥とを交互に見上げている。男の喉が、時々大きく上下した。遥が腰を揺らすたびに、中の男のものがわずかに跳ねる。その反応を、遥は自分の内側の肉で感じ取っていた。
天井の上は静かだった。上の部屋の明かりは、もう消えたのかもしれない。けれど、廊下に面したカーテンの隙間からは、薄い光が細く漏れている。誰かが覗けば、鏡の前で男に跨り、とろけた顔で腰を揺らす自分の姿が見えてしまう。そう考えても、遥の腰は止まらなかった。むしろ、見られるかもしれないという思いが、腰の動きをさらに滑らかにした。
腰を揺らしながら、遥は鏡の中の自分の目を見つめ続けた。見つめているうちに、恥ずかしさとは別の何かが、胸の奥に湧き上がってきた。この女は、自分の知らない自分だった。けれど、確かに自分の身体から生まれた顔だった。翔太の前で怖がって固まっていた自分の奥に、ずっとこの女が隠れていたのだと、遥は思った。
揺らすだけでは、もう物足りなかった。奥の一点を擦るだけでは、下腹に溜まっていく熱を逃がすことができない。もっと深く、もっと強く。鏡の中の女の顔が、そう訴えていた。遥は男のシャツに指を立て、震える太ももに力を集めた。持ち上げて、落とす。それを、自分の速さで、もっと速くしたい。
けれど、堂島はまだ何も命じていなかった。数字を告げることもなく、拍子を数えることもなく、ただ黙って遥を見上げている。速くしろとも、遅くしろとも言わない。だから、速くするとしたら、それは遥自身の意思だった。誰のせいにもできない。鏡の中の女が、自分の意思で腰を速める瞬間を、自分の目で見ることになる。
遥は唇を噛んだ。恥ずかしい。こんな顔のまま、自分から腰を速めるなんて。けれど、下腹の奥の熱は、もう遥の理性を待ってはくれなかった。膝に込めた力が、勝手に腰を持ち上げていく。中から男のものが半分ほど引きずり出され、鏡の中で、濡れた幹が光りながら姿を現した。
遥は鏡の中の自分と目を合わせたまま、息を止めた。ここから、どの速さで落とすのか。それを決めるのは、自分だけだった。鏡の中の女が、遥に答えを促すように、潤んだ目で見つめ返している。遥はその目に引きずられるように、膝の力をほどき、そして、これまでよりも少しだけ速く、腰を落とそうとしていた。
ここまで読んでくれてありがとう
選択を変えれば、結末は変わります。
別のルートを試すか、他の物語へ。



コメント