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【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.5(姿見の前)
姿見の前、と口にした瞬間、遥は自分が選んだものの意味を、まだ半分も分かっていなかった。ただ、手首を縛られることも、スマホで撮られることも、まだ怖すぎた。鏡なら、少なくとも自分の目で何が起きているかを確かめられる。そう思って選んだはずだった。けれど、堂島が姿見の前に寝そべるのを見たとき、遥は、確かめられるということが、どれほど逃げ場のないことなのかを、ようやく理解し始めていた。
「……鏡の前で」と遥が言うと、堂島は初めて自分から身体を動かした。ソファから降り、部屋の隅の姿見の正面、色の褪せた畳の上に仰向けに寝そべる。動くのは場所を移すためだけで、横になったあとは、また両腕を畳の上に投げ出した。中から男のものが抜けた瞬間、遥は空っぽになった奥の寒さに驚いた。さっきまで痛みしかなかったはずの場所が、急に心細く疼いていた。
ストップウォッチは新しく五分に合わされ、また男の胸の上に置かれた。遥は膝で畳を這うように近づき、男の腰を跨ぎ直した。今度は、正面に姿見がある。顔を上げれば、そこに自分がいる。乱れた黒いボブ、涙の跡の残る頬、たくし上げた紺のスカート。その下で、裸の胸が浅い呼吸に合わせて上下している。遥は思わず目を伏せた。伏せた先には、濡れて光る男のものが、自分の脚の間で立ち上がっていた。
姿見の鏡面は古く、端のほうが少し曇っていた。それでも、蛍光灯の真下で、跨った自分の全身ははっきりと映っている。肩から落ちたブラウスの袖が肘に絡まり、たくし上げたスカートが腰の上で皺になっている。脱ぎかけの服がかえって、裸よりもずっと淫らに見えた。遥はブラウスを肘から抜き、畳の上に落とした。少しでも、鏡の中の自分をまともに見えるようにしたかった。
自分の手で、もう一度それを握る。さっきより熱く、硬くなっている気がした。先端を入口に当て、ゆっくりと腰を落としていく。一度通った道なので、痛みはさっきほど鋭くはなかった。それでも、狭い肉が押し広げられていく感触に、遥の腰は何度も止まりかけた。止まると、堂島が数字を告げる。遥は唇を噛んで、また沈めた。根元まで呑み込んだとき、遥は深く長い息を吐いた。
「顔を上げろ」と、男が言った。遥は首を振った。「目を逸らしたら、止まったのと同じだ」。遥はゆっくりと顔を上げた。鏡の中に、見知らぬ女がいた。頬は熱で赤く染まり、唇は噛みすぎて腫れている。目尻には涙が溜まり、それなのに瞳の奥はどこか潤んで、焦点が定まらない。それが自分の顔だと理解するまでに、ずいぶん時間がかかった。
視線を少し下げると、男の下腹と自分の脚の付け根が、鏡の中で隙間なく重なっていた。たくし上げたスカートの陰で、薄い茂みの下に、浅黒い幹の根元だけがわずかに覗いている。その境目には、まだ赤い筋が乾ききらずに残っていた。自分が今、どこに何を呑み込んでいるのか。それを、逃げ場のない明るさの中で、自分の目で見せつけられていた。
鏡の中の女は、遥が目を逸らしかけるたびに、まるで責めるようにこちらを見つめ返してきた。その目から逃げようとすると、胸の上の数字が減っていく。遥は男の胸に手をついたまま、少しずつ、鏡の中の自分の目を見つめ続けることに慣れていった。見つめ続けるほどに、そこに映っているのが自分だという感覚が、薄れていくような気がした。
遥は思わず目を閉じた。「減ってるぞ。四分四十」。慌てて目を開けると、鏡の中の自分と目が合った。恥ずかしさで顔をそむけたいのに、そむけることができない。見ていなければ止まったことになる。そのルールを受け入れたのは自分だった。遥は鏡の中の自分を見つめ返しながら、根元まで呑み込んだ腰を、小さく前後に揺らした。
腰を揺らすたびに、遥は鏡の中の自分の表情が少しずつ変わっていくのを見た。最初は恥ずかしさで強張っていた口元が、ゆっくりとほどけていく。眉間に寄っていた皺が、困ったような形に緩んでいく。自分の顔がこんなふうに変わるのを、遥は生まれて初めて見た。それが、腰の動きひとつで起きているのだと思うと、また中が締まった。
鏡の中の女も、同じように腰を揺らした。その動きは、自分が思っていたよりずっと大きく、いやらしく見えた。前へ滑らせるたびに、男の下腹に押しつけられた自分の茂みが濡れて光る。後ろへ戻すたびに、浅黒い幹がわずかに姿を現し、また吸い込まれていく。自分の身体が、こんなふうに男を咥えこんでいるのだと、遥は生まれて初めて知った。
天井の上は、今は静かだった。けれど、この部屋の窓は廊下に面していて、カーテンの隙間から、薄い光が細く漏れている。もし誰かが覗いたら、鏡の前で男に跨る自分の姿が、正面からも背中からも見えてしまう。そう考えたとたん、下腹の奥が強く縮み、中の男のものを締めつけた。鏡の中の女が、小さく口を開けて、声にならない息を吐いた。
自分の動きを見ているうちに、遥は鏡の中の女がどう動けば一番深く届くのかを、目で確かめるようになっていた。少し前へ傾けば、男のものが入口に近いお腹側を擦る。背中を反らせば、奥の壁に先端が当たる。鏡は、自分の身体の中で起きていることを、外側から教えてくれる地図のようだった。その地図を読み取るたびに、遥の腰は少しずつ迷いをなくしていった。
「揺らすだけか」と堂島が言った。「上げて、落とせ。鏡を見たままな」。遥は男の胸にそっと手をつき、膝に力を込めた。鏡の中の自分と目を合わせたまま、腰をゆっくりと持ち上げていく。中から男のものが引きずり出され、濡れた幹が鏡の中で光りながら姿を現す。半分ほど抜けたところで、遥は息を止めた。ここから落とせば、また奥まで届く。鏡の中の女が、その瞬間を待つように、自分を見つめ返していた。
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