【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.3(数えられる残り時間)

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【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.3(数えられる残り時間)

入口に当てた先端の熱が、薄い襞を通して、まだ閉じている奥のほうにまで伝わってくるようだった。遥は男のシャツの裾を両手で握りしめ、ゆっくりと息を吸った。痛いのは分かっている。二度とも、その痛みに負けて逃げ出したのだ。けれど今夜は、誰も上から押さえつけてはいない。進むか止まるかを決めるのは、自分の膝だけだった。胸の上の数字が三分を切るのを横目で見ながら、遥は目を閉じ、覚悟を決めるように、男の先端に自分の重さを少しだけ預けようとした。

遥は膝の力を、ほんの少しだけ抜いた。先端が入口の襞を押し分け、閉じていた場所が無理やり丸く引き伸ばされていく。痛い、と思った瞬間には、もう腰が勝手に止まっていた。翔太のときと同じだった。身体の奥が固く縮んで、それ以上の侵入を拒もうとする。全身から冷たい汗が噴き出し、蛍光灯の光が滲んで見えた。「二分五十」と、堂島が胸の数字を見もせずに言った。

止まったら終わる。その約束は、遥が自分で頷いたものだった。ここで降りれば、翔太の前でまた同じことを繰り返すだけになる。遥は男のシャツの裾を握りしめ、息を細く吐きながら、もう一度膝を緩めた。先端の丸みがようやく入口をくぐり抜け、狭い肉の輪に締めつけられる。その感触が、痛みよりも先に、自分の中に他人がいるという事実として胸に落ちてきた。

入口をくぐったばかりの先端が、内側の狭い肉をこじ開けるように押し進んでくる。いや、押し進めているのは自分の腰だった。男は相変わらず、ソファに沈んだまま指一本動かしていない。だからこそ、どれだけ痛くても、誰のせいにもできなかった。遥は男のシャツの胸を握った手に力を込め、膝の震えを抑えながら、ひと呼吸ごとに、ほんの数ミリずつ沈めていった。

二センチ、三センチと沈むたびに、内側が引き裂かれるような鋭い痛みが走った。遥は唇を噛み、目を固く閉じて、膝が震えるのに任せて少しずつ体重を預けていく。男のものは太く、どれだけ沈めてもまだ根元は遠かった。止まりかけるたびに「二分」「一分四十」と数字だけが降ってくる。慰めも急かしもしない、ただの数字だった。それが不思議と、押されるより確かに遥の腰を下へ導いた。

天井の上で、床が鳴った。三〇二号室の美咲が、ベッドから降りたのだろう。足音が部屋の中をゆっくり横切り、また止まる。真下の管理人室で、自分が裸の胸を晒して男の上に跨り、処女の場所に男のものを半分呑み込んでいるなどと、彼女は想像もしていないはずだった。遥は声を殺すために拳を口に当て、涙の滲んだ目で天井を見上げたまま、また一ミリ、腰を落とした。

天井の床鳴りが止み、また静かになった。その静けさの中で、遥の荒い息だけが部屋に響く。押し殺そうとしても、沈めるたびに喉の奥から短い息が漏れてしまう。壁一枚隔てた隣の部屋にも、誰かが寝ているはずだった。遥は男の胸から片手を離し、自分の口を手のひらで覆った。片手を失った分、膝にかかる重さが増して、腰はまた少しだけ深く沈んだ。

半分まで来たとき、痛みの質が少しだけ変わった。鋭く裂けるような感覚が、鈍く重い圧迫に置き換わっていく。中が押し広げられ、男の形に馴染まされていくのが分かる。「……っ、入って、る」と自分でも意味の分からない声が漏れた。堂島は答えなかった。たるんだ喉が一度だけ上下し、肘掛けの外に垂れた指先が、かすかに握られた。動かない男が初めて見せた反応だった。

遥は自分の脚の間を見下ろした。浅黒い幹の半ばまでが、自分の中に消えている。そこから先がまだ見えていて、それをすべて沈めなければ終わらないのだと、目で突きつけられる。太ももの内側は汗と蜜で光り、膝はもう自分の体重を支えるだけで精一杯だった。浮かせることもできず、沈めることも怖く、遥は中途半端な高さで、男を咥えこんだまま震えていた。

男の喉が上下したのを見て、遥は自分でも説明のつかない感情に襲われた。この男は、自分が苦しんでいるのを見て興奮している。それは分かっている。けれど同時に、自分の腰ひとつで、動かないはずの男の身体を反応させているのも事実だった。痛みに顔をしかめながら、遥は男のたるんだ喉を見つめ、もう一度、膝の力を少しだけ抜いた。

「一分十」。声は低く、平らだった。遥は涙をこぼしながら、もう少しだけ膝を緩めた。奥へ進むたびに、内側のどこかが引きつれるように痛み、そのたびにまた腰が止まる。それでも、止まっている時間は少しずつ短くなっていた。痛みの波が引くのを待ち、引いた瞬間にまた沈める。そのやり方を、遥は自分の身体で覚えつつあった。誰にも押し込まれていないからこそ、できることだった。

男の根元まで、あと指二本ぶんほどだった。そこから先は、これまでとは違う深さに触れることになる。遥の膝は激しく震え、もう自分の意思では一ミリも動かせなくなっていた。下腹の奥で、まだ誰も届いたことのない場所が、男の先端の存在をはっきりと感じている。息を吸うだけで、中の男のものが自分の内側を押し上げる。

奥へ進むほど、中の肉は男の形に隙間なく吸いついていく。押し広げられた内側が、男のものの段差や血管の浮き出た凹凸を、ひとつずつ覚えさせられていくようだった。痛みの合間に、遥はそのひとつひとつを、恥ずかしいほどはっきりと感じ取っていた。自分の身体が、こんなにも細かく男の形を感じ取れるものだとは、思ってもいなかった。

「五十秒」と堂島が言った。その数字を聞いた瞬間、遥の膝から、最後の力が不意に抜けかけた。根元まであと少し、男の濁った目に見上げられたまま、遥は崩れ落ちる寸前の腰を、ぎりぎりのところで支えていた。

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