▶ 名前変換:入力フォームを開く
【処女喪失】弱みを知られた上司に、二十七歳の初めてを教わる遥:vol.7(ガラスに映る顔)
桐生は何も言わずに、ランプから手を離した。部屋の明かりは、そのままだった。窓ガラスには、ランプの光に照らされた遥の裸が、夜景に重なってうっすらと映り続けていた。遥はガラスの中の自分と、向かいのビルの明かりを、同時に見ていた。
後ろで、桐生がシャツを脱ぐ気配がした。ベルトのバックルが外れる金属音。ジッパーが下ろされる音。遥は振り返らなかった。ガラスに映る影で、桐生が服を脱いでいくのが、ぼんやりと見えていた。自分の影の後ろに、男の影が重なっていく。
ガラスの中で、桐生の影が、遥の影にぴたりと寄り添った。背中に、桐生の胸が触れた。熱かった。素肌と素肌が触れ合うのは、これが初めてだった。部長室では、いつも桐生は服を着たままだった。遥の背中が、その熱さに驚いて小さく震えた。
桐生の胸板は、思っていたよりも厚かった。背中全体が、その胸に包まれている。会社で毎日見ていたスーツの下に、こんな身体があったのだ。遥はガラスの中の二人の影を見つめた。重なった影は、もう上司と部下には見えなかった。
それから、尻の谷間に、硬いものが当たった。遥は息を呑んだ。熱い。指とは比べものにならないほど太く、硬い。ガラスの中の自分の顔が、驚きに目を見開いているのが映っていた。その後ろで、桐生の影が、静かに遥の首筋に顔を寄せていた。
「……当たって、ます」
当てている、と桐生は言った。それから、遥の首筋に唇を当てたまま、腰をゆっくりと動かし始めた。硬いものが、尻の谷間をなぞって上下する。濡れた入口のすぐ近くを通り過ぎ、また戻ってくる。ガラスの上で、遥の指が強張った。
ガラスに、遥の吐く息が白く広がった。曇った部分だけ、夜景がぼやけて見えなくなる。息が収まると、また夜景が戻ってくる。遥の呼吸に合わせて、窓の外の世界が現れたり消えたりしていた。そのたびに、向かいの明かりが滲んでは、また鮮やかに浮かび上がった。
桐生が、一度遥から離れた。小さな包みを破る音がした。遥はガラスに映る桐生の影が、何かを自分のものに被せていく手つきを見ていた。避妊具だ、と分かった。遥のために。初めての遥のために。そう思うと、胸の奥が少しだけ温かくなった。
二週間、毎晩部長室で指を受け入れながら、遥は何度も、今夜のことを想像した。窓の前で。夜景を見ながら。けれど、想像の中の桐生は、いつも服を着ていた。裸の桐生が、自分のために避妊具を付けている。その光景は、想像よりもずっと生々しく、ずっと優しかった。
桐生が戻ってきた。今度は、硬いものが、尻の谷間ではなく、もっと下に当てられた。遥の脚の間。濡れた入口のすぐ手前。桐生の手が遥の腰を引き寄せ、尻を少し後ろへ突き出させた。遥はガラスに両手をついたまま、自然に脚を開いていた。
先端が、入口の縁に触れた。遥の全身が、びくりと強張った。ガラスに映る自分の顔が、ぎゅっと目を瞑っていた。遥は慌てて目を開けた。目を開けていろと、さっき言われたのを思い出した。ガラスの中の自分と、目が合った。
桐生は先端を入口に当てたまま、動かさなかった。代わりに、片手を遥の顎に添え、顔を少しだけ持ち上げさせた。見ろ、と桐生が言った。ガラスに映る君の顔を。これから初めてを迎える女の顔を。
遥はガラスの中の自分を見つめた。ランプの淡い光が、汗で光る頬と、半開きの唇を照らしていた。目は潤み、眉は不安そうに寄っている。それなのに、その表情の奥に、何かを待ちわびるような熱があった。こんな顔をしているなんて、知らなかった。
会社で、この顔を見せたことは一度もない。企画会議でも、取引先の前でも、遥はいつも隙のない顔を作ってきた。後輩には頼られ、同期には怖がられ、誰にも弱みを見せなかった。その遥が、今、ガラスの中で、こんな無防備な顔をしている。
その顔の向こうに、夜景が広がっていた。向かいのビルの窓。さっきの人影は、もういない。けれど、別の窓に、また明かりが灯った。誰かが、今、部屋に戻ってきたのだ。遥の喉が、こくりと鳴った。
「部長、向こうに、また明かりが……」
見えているかもしれない、と桐生は言った。今、ガラスに手をついている女が、これから何をされるのか。遥の脚の間で、入口が勝手にひくついた。当てられた先端に、吸いつくように。桐生もそれを感じたのか、喉の奥で低く笑う気配がした。
桐生が、先端で入口の縁をなぞり始めた。上から下へ。下から上へ。入りそうで、入らない。溢れたものが先端に絡みつき、なぞられるたびに粘ついた音が鳴った。ガラスの中の遥の顔が、少しずつ崩れていった。
二週間、指で慣らされ続けた身体だった。入口は、もう三本の指を受け入れられるほど柔らかくなっている。それなのに、桐生は先端を押し込もうとしなかった。遥が自分で言うのを、待っていた。いつもそうだった。最後の扉は、いつも遥の手の中にあった。
遥は、ガラスについた自分の手を見た。それから、その向こうの夜景を見た。二十階の高さ。数え切れない明かり。その一つ一つの中に、遥の知らない誰かの夜がある。その中の誰かに、今の自分が見えているかもしれない。
怖い、と思った。けれど、その怖さの底に、ぞくりとするような甘さがあった。誰にも見せたことのない自分を、誰か知らない人に見られるかもしれない。その可能性が、遥の脚の間を、さっきよりもずっと熱く濡らしていた。
箱を見せられたあの金曜の午後、遥は弱みを握られたのだと思い込んでいた。誰かに見られたら終わりだと思っていた。けれど今、遥は、見られるかもしれない窓の前に、自分から立っている。弱みは、いつの間にか、自分で選ぶものに変わっていた。
先端が、入口の真ん中で止まった。桐生の息が、遥のうなじにかかった。熱く、少しだけ荒かった。この人も、ずっと我慢しているのだ。遥はガラスの中の桐生の影を見つめ、それから自分の顔を見つめた。
「このまま、窓の前で」
ここまで読んでくれてありがとう
選択を変えれば、結末は変わります。
別のルートを試すか、他の物語へ。



コメント