【処女喪失・羞恥】トイレの声を用務員に聞かれた、うぶな女子大生・遥:vol.3(用務員室の告白)

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【処女喪失・羞恥】トイレの声を用務員に聞かれた、うぶな女子大生・遥:vol.3(用務員室の告白)

その言葉を口にしたのは、一階の裏にある用務員室だった。四畳半ほどの畳の間に、古い机と湯沸かしポット、壁際に掃除道具の棚がある。窓の外では、どこかの部活の掛け声が遠く響いていた。遥は畳の端に正座し、膝の上で両手を握りしめていた。

扉の前に立つまで、遥は自分が本当にここへ来るのか、半分は信じていなかった。廊下の掲示板を読むふりをして、何度も引き返そうとした。それでも足は止まらず、気づけば古い木の扉の前にいた。

用務員室の扉を叩くまでに、遥は廊下を三往復した。ノックの音は思ったより大きく響き、中から、開いてる、と低い声がした。扉を開けると、岩城は湯呑みを手に振り返り、遥の顔を見て、ほんの少しだけ眉を上げた。それから黙って、畳の上を顎で示した。

岩城は机の前の椅子に座り、黙って遥を見ていた。聞かれていると思ったら、止まらなくなった。それが、遥がようやく絞り出した言葉だった。言ってしまってから、取り消したくなった。けれど、もう遅かった。岩城の目が、わずかに細くなった。

机の上には、使い込まれた湯呑みと、鉛筆で何か書き込まれた業務日誌があった。壁には、各棟の鍵の番号が書かれた古い表が貼られている。この小さな部屋で、この人は毎日を過ごしているのだ。遥は自分が、その日常の中に無理やり入り込んでしまったような気がした。

「最初は、怖かったんです。でも……」

言いかけて、遥は唇を噛んだ。でも、の先を言うのが怖かった。言えば、自分がどんな人間なのか、この人に知られてしまう。けれど、もう半分は知られているのだ。昨日、扉の外で。遥は膝の上の手を握り直し、続きを口にした。

モップの音が止まったとき、心臓が止まりそうだった。なのに、指が止まらなかった。扉の外に人がいると思ったら、身体の奥が勝手に熱くなった。遥は俯いたまま、それを全部話した。話しながら、自分の声が震えているのが分かった。

一度話し始めると、言葉は止まらなかった。半年前から、あの場所でしていたこと。誰にも見つからないと思っていたこと。昨日、扉の外にいると気づいた瞬間、怖いのと同時に、身体の奥が勝手に熱くなったこと。全部話してしまったら、もう取り繕えるものは何も残っていなかった。

岩城はしばらく何も言わなかった。やがて、低い声で、それで何がしたいんだ、と聞いた。責める口調ではなかった。遥は俯いたまま、畳の目を見つめていた。何がしたいのか。分かっていた。分かっていて、言葉にするのが怖かった。

部活の掛け声が、窓の外で一度途切れた。部屋の中は、湯沸かしポットのかすかな音だけになった。遥は、自分の息の音がうるさいと思った。岩城が湯呑みを机に置く小さな音にさえ、肩がびくりと跳ねた。

キスもしたことがない、と遥は言った。恋人がいたこともない。全部、小説で読んだだけ。だから、知りたい。文字じゃなくて、本当のことを。言いながら、顔から火が出そうだった。最後のほうは、ほとんど聞き取れないくらいの声になっていた。

岩城は深く息を吐き、椅子から立ち上がった。遥の前の畳に腰を下ろし、目線を合わせる。日焼けした顔に、細かい皺がたくさん刻まれていた。俺はお前の父親より年上だ、と岩城は言った。分かって言ってるのか。

目線が同じ高さになると、岩城の目は思っていたよりも穏やかだった。鋭く睨むような目ではない。ただ、遥の言葉の重さを、正確に量ろうとしている目だった。遥はその目から、逃げずに見返した。

遥は頷いた。分かっているから、誰にも言えなかったのだ。岩城はもう一度ため息をつき、それから条件を三つ出した。嫌になったら、すぐに言うこと。この部屋の外では、今までどおり他人でいること。それから、無理をしないこと。

三つの条件は、どれも遥を守るためのものだった。岩城自身を守るものは、一つもなかった。そのことに気づいて、遥の胸がじんと熱くなった。この人は、自分のことより先に、遥のことを考えている。

「……はい。約束します」

岩城の大きな手が、遥の頬に触れた。ざらざらとした、硬い手のひらだった。仕事で荒れた手だ、と思った。遥は目を閉じた。顔が近づいてくる気配がして、唇に乾いた温かいものが重なった。ほんの一瞬で、すぐに離れた。

手のひらが頬に触れた瞬間、遥は小さく身を震わせた。ざらついた皮膚が、柔らかな頬の上でゆっくりと動く。その感触だけで、膝の上の手に汗が滲んだ。小説の中では、この場面はいつも甘い言葉と一緒だった。現実の岩城は、何も言わなかった。

目を開けると、岩城が遥の顔を見ていた。嫌じゃないか、と聞かれる。遥は首を横に振った。声が出なかった。二十一年間で、初めてのキスだった。小説で読んだような、甘い味はしなかった。お茶の匂いと、少しだけ煙草の匂いがした。

唇に残った感触を、遥は舌の先でそっと確かめた。乾いていて、少しだけかさついていた。それが現実のキスだった。文字で読んだどんなキスよりも、ずっと短くて、ずっと重かった。

もう一度、と遥は言った。岩城は少し驚いた顔をして、それから今度はさっきよりゆっくりと唇を重ねた。唇が軽く吸われ、離れ、また重なる。遥の肩から力が抜けていった。膝の上で握りしめていた手が、いつの間にか岩城の作業着の袖を掴んでいた。

唇が離れたとき、遥は自分の息が上がっているのに気づいた。脚の間が、はっきりと湿っていた。キスだけで、こんなふうになるなんて。小説には書いてなかった。岩城は遥の髪を一度だけ撫で、それで、どうしたい、と静かに聞いた。

岩城の作業着の袖を、まだ握ったままだった。指をほどこうとして、ほどけなかった。離したら、この人がまた窓の外へ目を逸らしてしまう気がした。

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