【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.7(増える数字)

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【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.7(増える数字)

画面の数字が、二十を超えた。遥は腰を上げては落とし続けながら、その数字を見ないようにしようとした。けれど、男はスマホを少しだけ傾けて、わざと遥にその数字が見えるようにしていた。二十二。二十五。遥が奥まで腰を落とすたびに、数字は少しずつ増えていく。まるで、遥の動きに引き寄せられるように、見知らぬ誰かが集まってきていた。

「読んでやろうか」と堂島が言った。遥は首を横に振った。けれど、男は画面に流れるコメントを、低く平らな声で読み上げ始めた。「もっと速く。胸がいい。声を聞かせろ」。遥は耳を塞ぎたかった。けれど、手は男の胸についていて、離せば腰が止まる。遥は唇を噛んで、男の声を聞き続けるしかなかった。

もっと速く。その言葉が、遥の頭の中で何度も繰り返された。見知らぬ誰かが、自分にもっと速く動けと言っている。それに従う理由など、どこにもないはずだった。それなのに、遥の腰は、少しずつ速くなっていった。持ち上げて、落とす。持ち上げて、落とす。画面の向こうの誰かの言葉に、自分の身体が応えている。

「同じ家の誰かも、見てるかもな」と堂島が言った。男の言葉に、上下していた遥の腰がわずかに鈍った。同じ家の誰か。美咲や、一階の子や、向かいの部屋の誰か。もし彼女たちの誰かが、今この配信を見ていたら。顔は映っていない。けれど、この部屋の壁の色や、古いソファの柄を見れば、ここがどこなのかは分かってしまうかもしれない。

天井の向こうで、誰かが歩くような軋みが一度だけ響いた。美咲の部屋だった。遥の指先が、一瞬で冷たくなった。まさか、と思った。美咲が、スマホでこの配信を見ているのかもしれない。真上の部屋で、真下の部屋で何が起きているのかを、画面越しに見ているのかもしれない。そう思った瞬間、遥の中が男のものを、これまでで一番強く締めつけた。

美咲が見ているかもしれないという想像は、遥の頭から離れなかった。朝、洗面所で歯を磨きながら挨拶をする美咲。休みの日に一緒にコンビニへ行く美咲。その美咲が、今、真上の部屋で、真下の管理人室にいる遥の身体を、画面越しに見ているかもしれない。想像するだけで顔が燃えるのに、腰は少しも遅くならなかった。

堂島の喉が、大きく上下した。男は画面を遥のほうへ傾け、数字を見せた。三十。遥はその数字を見つめたまま、腰を落とした。奥を突かれた瞬間、喉の奥から声が漏れそうになり、遥は慌てて唇を噛んだ。声を出せば、配信に入ってしまう。それだけは、どうしても避けたかった。

「……止めて、ください」と遥は掠れた声で言った。けれど、それが配信を止めてほしいという意味なのか、自分自身に向けた言葉なのか、遥にも分からなかった。堂島は答えなかった。代わりに、「お前が止まれば、数字は減る」とだけ言った。遥ははっとして、画面の数字を見た。

試しに、遥は腰の動きを緩めてみた。数秒後、画面の数字が、三十から二十八に減った。二十六。二十五。遥の腰が遅くなるたびに、見知らぬ誰かが離れていく。遥はその数字を見つめたまま、自分でも理解できない感情に襲われた。減っていく数字が、なぜか寂しく感じられたのだ。遥は、また腰を速くし始めた。

数字が、また増え始めた。二十八、三十、三十三。遥が速く動けば、人が集まる。遅くすれば、人が離れていく。画面の数字は、遥の腰の動きを、そのまま映し出す鏡のようだった。遥はもう、自分が何のために腰を振っているのか、分からなくなっていた。約束のためなのか、男のためなのか、それとも、画面の向こうの見知らぬ誰かのためなのか。

画面の数字が、遥の腰の動きに合わせて増えたり減ったりするのを、遥はいつのまにか目で追っていた。速くすれば増える。深く沈めれば増える。まるで、見知らぬ誰かが、遥の動きに点数をつけているようだった。その点数を上げたいと思っている自分に気づいたとき、遥は自分がどこまで変わってしまったのかを思い知らされた。

ストップウォッチの数字は、一分を切っていた。遥はそれに気づいていたが、もうどうでもよかった。時間が終わっても、この配信が終わっても、自分の身体の奥で膨らんでいく熱は、どこにも行き場がない。遥は男の胸に両手をついたまま、腰をさらに速く、さらに深く動かした。

中の男のものが、さっきよりもずっと太くなっていた。奥を突くたびに、張りつめた先端から、男の鼓動がじかに伝わってきた。その鼓動は、画面の数字が増えるのと競うように、どんどん間隔を詰めていった。男の額には汗が浮かび、スマホを持つ手がわずかに震えていた。動かないと言った男が、それでも抑えきれずに、喉を何度も上下させている。

遥の下腹の奥でも、熱が限界に近づいていた。腰を落とすたびに、奥で何かが弾けそうになる。見知らぬ誰かの視線と、男の熱い脈と、天井の上の床鳴りと。そのすべてが、ひとつの場所へ流れ込んでいく。遥は自分の身体が、どこか知らない高みへ向かって、急速に昇っていくのを感じていた。

画面の数字が、四十を超えた。男がその数字を告げる声が、途切れ途切れになっていた。「中に、出すぞ」と堂島が低く言った。何十人もの目の前で、と思った瞬間、遥の膝がこわばった。中に。それも、画面の向こうの何十人もの誰かが見ている前で。遥はその意味を理解したうえで、腰を止めなかった。

「……いい、です」遥は掠れた声で答えた。その声が、配信に入ってしまったかもしれない。けれど、もうどうでもよかった。視界の端で、数字がさらにひとつ繰り上がった。遥は男の胸に両手をついたまま、最後の数回のために、腰を持ち上げた。奥で、男のものが、最後の脈を打とうとしていた。画面の向こうの誰かも、その瞬間を待っていた。

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