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【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.5(鳴り出したスマホ)
遥の視線は、震え続けるスマホから離れなかった。画面に浮かんだ「翔太」の二文字が、蛍光灯の光の中で、やけに鮮やかに光っている。「……出ます」と遥が言ったとき、自分でもその答えに驚いていた。鏡も、タオルも、選ばなかった。選んだのは、男の上で繋がったまま、恋人の声を聞くことだった。
堂島は、肘掛けの外に垂らしていた腕を伸ばし、畳の上のブラウスからスマホを抜き取った。それ以外の身体は、ソファに沈んだままだった。男はスマホを遥の手に渡し、低い声で言った。「降りるなよ。降りたら、そこで終わりだ」。遥はスマホを握りしめたまま、男の上に跨り続けた。根元まで呑み込んだ男のものが、遥の奥で脈を打っている。
ストップウォッチが、新しく五分に合わされた。数字が減り始める。スマホの振動は、まだ続いていた。遥は画面を見つめたまま、なかなか指を動かせなかった。この通話に出れば、男の上で繋がったまま、翔太の声を聞くことになる。翔太のために覚えたかったことを、翔太の知らない男の上で、翔太の声を聞きながら続けることになる。
遥は息を整えようとした。けれど、中に収まった男のものが、遥の呼吸に合わせて奥を押し上げ、息がうまく整わない。声を出したら、きっと震えてしまう。そう思った。それでも、遥の指は、通話のボタンに向かってゆっくりと動いていった。出ないという選択肢は、もう遥の中に残っていなかった。
ボタンを押す直前、遥は男の顔を見下ろした。堂島は相変わらず、濁った目で遥を見上げている。表情は何も変わらない。けれど、その目の奥に、何かを待つような色があった。遥は男の目から視線を外し、スマホを耳に当てた。親指が、画面の上の緑色の丸に触れた。
通話が繋がった瞬間、遥の全身に緊張が走った。スマホの向こうから、かすかな雑音が聞こえる。翔太の部屋の音だった。テレビの音、何かを置く音。いつもの、翔太の夜の音だった。遥は唇を噛み、腰を動かさないように、膝に力を込めた。けれど、止まれば終わる。遥は、ほんのわずかに腰を前へ滑らせた。
翔太の部屋の音を聞いているうちに、遥の頭に、翔太の部屋の光景が浮かんできた。小さなローテーブル、積み上げた漫画、窓際の観葉植物。二度、遥がそこで身体を固くしてしまった、あのベッド。翔太は今、あのベッドに寝転がって電話をかけているのだろう。遥はその光景を思い浮かべながら、男の上で、ほんのわずかに腰を揺らした。
奥の一点が擦れて、遥は思わず息を止めた。こんなときに。翔太の声が聞こえる前に、身体が勝手に反応してしまった。遥はスマホを耳に当てたまま、目を閉じた。中の男のものが、遥の息の乱れに合わせて、わずかに跳ねた。堂島の喉が、一度だけ上下した。
「……もしもし」と遥は言った。自分の声が、思っていたよりもずっと普通に聞こえて、遥は驚いた。震えてはいなかった。少なくとも、自分の耳にはそう聞こえた。スマホの向こうで、翔太が小さく息を吐く音がした。それから、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「もしもし、遥。起きてた?」翔太の声だった。三日前の夜、怒ったように靴を鳴らして出ていったときとは違う、少し申し訳なさそうな声だった。遥はその声を聞いた瞬間、胸の奥が冷たくなった。それと同時に、中の壁が男のものを強く締めつけた。翔太の声を聞いただけで、身体が反応してしまった。翔太の謝る声は、優しかった。その優しさが、男の上にいる遥の胸を細く刺した。
翔太は、三日前のことを謝りたかったのだと言った。急に帰ってごめん、怒ってないから、と。遥は「うん」とだけ答えた。それ以上の言葉を出したら、声が震えてしまいそうだった。翔太の声を聞きながら、遥は男の上で、根元まで呑み込んだまま、ほんのわずかに腰を揺らし続けていた。
止まれば終わる。けれど、動けば声が乱れる。遥はその境目で、必死に均衡を保とうとしていた。腰を揺らすのは、ほんの数ミリだけ。それでも、奥の一点が擦れるたびに、下腹の奥に甘い痺れが広がる。遥は唇を噛んで、その痺れを声に出さないように堪えた。
堂島は、相変わらず動かなかった。ただ、濁った目で遥の顔を見上げ、遥が翔太と話すたびに、喉を上下させている。この男は、遥が恋人と話しながら、自分の上で腰を揺らしているのを見て、興奮しているのだ。遥はそれを感じ取りながら、それでも腰を止めることができなかった。
「遥、なんか声、変じゃない?」と翔太が言った。遥の心臓が、大きく跳ねた。中の壁が、男のものを強く締めつける。「……ううん、寝てたから」と遥は答えた。嘘だった。翔太に嘘をつくのは、これが初めてだった。その嘘が、口から出た瞬間、下腹の奥が熱く疼いた。
翔太は、そうか、と言って笑った。疑ってはいないようだった。遥はほっとして、思わず腰を少しだけ深く沈めてしまった。奥に先端が当たり、遥の喉から短い息が漏れかける。遥は慌ててスマホを口元から離し、唇を噛んで息を飲み込んだ。それから、またスマホを耳に戻した。
翔太の声が、また聞こえてきた。来週の誕生日の話だった。どこかに行こう、と翔太は言った。遥のために、店を予約したと。遥はその言葉を聞きながら、男の上で腰を揺らし続けていた。翔太の声と、奥で擦れる男のものの感触とが、遥の頭の中で混じり合っていく。
遥は、翔太の声に答えなければならなかった。けれど、口を開けば、何が出てくるか分からない。奥に収まった男のものが、遥の嘘を面白がるように、ひとつ跳ねた。遥はスマホを握りしめたまま、翔太の声に耳を傾け、男の上で、止まれない腰を揺らし続けていた。翔太の「もしもし、聞いてる?」という声が、遥の耳に届いた。
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