【処女喪失・撮影】嫌と言えない遥が、カタログ撮影の代役で初めてを撮られる:vol.2(視線の中のレース)

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【処女喪失・撮影】嫌と言えない遥が、カタログ撮影の代役で初めてを撮られる:vol.2(視線の中のレース)

「……皆さんの前で、着ます」

自分の声が、ひどく遠くに聞こえた。三上が手を叩き、決まり、と言った。遥はカーテンで仕切られた隅で服を脱ぎ、白いレースのセットを身に着けた。鏡を見る余裕はなかった。カーテンを開けると、照明の熱がまっすぐに肌へ当たった。

三上と二人の先輩が、壁際の椅子に並んで座っていた。腕を組み、脚を組み、遥を上から下まで眺めている。意外と胸あるじゃん、と誰かが言い、笑い声が起きた。遥は両腕で身体を隠しかけて、やめた。隠したら、もっと笑われる気がした。

学生時代も、そうだった。大学のサークルで、飲み会のたびに一発芸を押しつけられた。嫌だと言えず、笑われる役を引き受け続けた。社会人になれば変わると思っていた。変わったのは、笑う人の顔ぶれだけだった。

壁際の先輩たちは、まるで見世物でも眺めるように頬杖をついていた。一人がペットボトルの水を飲み、もう一人が脚を組み替える。そのたびに視線がこちらへ戻ってくる。遥は背景紙の白さの中で、自分だけが裸よりも裸にされている気がした。

レースの肩紐が、少しだけずれていた。直そうとして腕を上げると、脇の下まで照明に晒される。遥は途中で手を止めた。湊が、そのままで、と短く言った。直さなくていい。ずれているほうが、生きた感じが出る。遥は腕を下ろし、ずれた肩紐の感触を、肌の上で意識し続けた。

湊はカメラを構えたまま、先輩たちのほうを一度も見なかった。白い背景紙の中央に立ってください、と静かに言う。肩の力を抜いて。顎を少し引いて。指示は短く、遥の身体にだけ向けられていた。シャッターの音が、乾いたリズムで鳴り始めた。

カーテンの陰で脱いだ服を、遥は畳む余裕もなく籠に押し込んでいた。ブラウスの下に着ていたのは、量販店で買ったベージュの下着だった。それを外し、新作の白いレースに替えたとき、肌に触れる生地の薄さに驚いた。身体を覆っているというより、身体の上に模様を描かれているようだった。

カシャ、と鳴るたびに、肌の上を何かが撫でていくような気がした。レンズの向こうで、湊が自分を見ている。その後ろで、先輩たちが見ている。こんなにたくさんの目に、下着姿を晒したことは一度もなかった。

右を向いて。左手を腰に。目線はレンズの少し上。湊の指示に合わせて身体を動かすたびに、レースが肌の上でかすかに擦れた。胸の先が、生地の裏で固くなっていくのが分かる。花の刺繍の隙間から、その形が浮いて見えているかもしれない。遥は顎を引き、レンズの少し上だけを見つめた。

先輩の一人が、スマートフォンを取り出して画面をこちらに向けた。撮影は禁止です、と湊が静かに言った。振り返りもせずに。先輩は舌打ちをして、スマートフォンを膝に伏せた。そのやりとりのあいだも、湊のレンズは遥から外れなかった。

それなのに、と遥は思った。嫌だという気持ちの奥に、別の何かがあった。見られている。自分の身体が、ちゃんと見られている。いつも誰の目にも留まらない雑用係の自分が、今だけは、この部屋の真ん中にいる。

胸の奥で、心臓がうるさく鳴っていた。照明の熱が、肩から胸、腹へとゆっくり降りてくる。汗とは違う湿り気が、肌の表面にうっすらと浮いていた。シャッターが鳴るたびに、その湿り気ごと、自分の全部が切り取られていくような気がした。

脚の間が、じわじわと熱を持ち始めた。だめだ、と遥は思った。よりによって、こんなときに。白いレースは、薄い。濡れたら、すぐに分かってしまう。遥は太ももに力を入れ、膝をぴたりと閉じた。

太ももの内側に、じっとりとした熱がこもっていく。立っているだけなのに、走ったあとのように息が浅くなった。遥は背景紙の白さを見つめ、何も考えないようにした。考えないようにするほど、身体のその一点だけが、はっきりと自分の中で存在を主張した。

膝は、少し開いてください、と湊が言った。カタログの立ち姿は、脚の間に少し隙間があったほうがきれいに見える。遥は、はい、と答えていた。答えてから、しまったと思った。膝を開くと、閉じ込めていた熱が、とろりと下へ降りていった。

「……っ」

布地の内側が、湿っていくのが分かった。照明の熱で、そこだけ冷たく感じる。遥は唇を噛み、視線を床に落とした。先輩たちに気づかれたら、終わりだ。明日から、どんな目で見られるか分からない。それなのに、見られていると思うたびに、濡れはひどくなった。

三上が、何か小声で隣の先輩に囁いた。笑い声が上がる。自分のことを言われているのだと分かった。濡れていることに気づかれたのかもしれない。そう思った瞬間、膝の裏に冷たい汗が流れ、脚の間には逆に熱が溢れた。

シャッターの音が、不意に止まった。湊がカメラを下ろし、照明の角度を替えます、と言った。三十分ほどかかるので、先に昼に行ってください。三上が、えー、と不満そうな声を上げたが、湊は、照明は僕の仕事なので、とだけ答えた。

先輩たちが出ていくと、スタジオは急に静かになった。遥は背景紙の真ん中に立ったまま、動けなかった。湊が棚からタオルを取り、遥のほうへ歩いてくる。遥の顔ではなく、少し下のほうを、一度だけ見た気がした。

三上は出ていく前に、遥のほうを振り返った。口の形だけで何か言い、にやりと笑った。何と言ったのかは分からなかった。分からないことが、かえって怖かった。先輩たちの笑い声が、廊下の向こうへ遠ざかっていく。遥の顔から、ゆっくりと血の気が引いていった。

照明を替えるというのは、本当だろうか。それとも、と遥は思った。タオルを差し出す湊の手を見つめながら、遥は自分の脚の間に、まだ熱が残っているのを感じていた。湊は何も言わなかった。言わないことで、遥に聞く順番を譲っているようだった。

湊が差し出したタオルを腰へ当てても、濡れたレースは肌から離れなかった。布越しの冷たさと、その下で脈打つ熱がいっそう鮮明になる。遥は染みの位置を隠すように両手を重ねたが、湊の視線が一度そこへ落ちた事実まで消すことはできなかった。

誰もいなくなった白い空間で、シャッターの残響だけが耳の奥に続いていた。先輩たちに笑われた羞恥とは別に、湊ひとりへ見抜かれたことが甘い疼きへ変わっていく。腿を寄せるほど、湿った生地が襞へ食い込み、濡れた輪郭を自分自身へ知らせた。

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