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【店長の脅迫】万引き一度の過ち:vol.8(足を自分で開いて懇願して)
泣き声が密室に滲んでいた。
遥の涙は、もう乾く間もなく流れ続けていた。頬に幾筋もの跡をつけ、唇の端に塩辛い滴を残し、顎からぽたぽたと落ちている。
ひろしはスマートフォンのカメラをゆっくりと下ろし、遥の全身を映し出す。レンズが今この瞬間の彼女のすべてを、余すことなく記録していた。
それでも遥の喉から、言葉にならない訴えは漏れてこない。声帯が怯えで強張って、うまく震えてくれない。ただ、震える下唇と、ひっきりなしにこぼれ落ちる涙だけが、彼女の内側の悲鳴を伝えていた。
自分の手で脚を開いている。
それが一番、耐えがたかった。
誰かに無理やり開かれるのとは、違う痛みだった。自分の意思で、自分の指を太ももの内側に当てて、震えながら押し広げた。まるで自分が自分を裏切ったような、深いところからくる恐怖と恥辱が、腹の底にじっとり澱んでいた。
「……やめて……これ以上……ひろしさんの……やだ……」
その言葉は、遥がこれまで生きてきた二十年の中で、口にしたことのない種類の言葉だった。喉から絞り出すというより、全身を締め付けていた羞恥の重さに押しつぶされてこぼれ落ちた、そういう声だった。
ひろしは無言で、レンズを遥の顔に近づける。
「いい子だ」
その声は穏やかだった。まるで飼い犬でも褒めるような、静かで冷たい声。遥の胸の中で何かがひどくねじれる。褒められた、という感覚と、侮辱された、という感覚が同時に走って、思考が一瞬白くなった。
「そのまま、もっと見せろ。お前の顔を、ちゃんとカメラに向けろ」
遥は首を横に振った。けれどひろしの視線は揺らがない。カメラは揺らがない。この部屋から出る方法は、これしかないという事実も、揺らがない。
「もっと、もっと、足を開いて。”お願い、入れて”って言い続けろ」
命令の言葉が、密室の空気を重くする。
遥は唇を震わせながら、もう一度、自分の手で内腿を押し広げた。太ももの筋肉が細かく震えている。指先が、自分の肌の温度を感じている。それがひどく嫌だった。自分の身体に触れているのに、まるで他人に触られているような気持ち悪さがあった。
「……お願いです……許してください……もう……やめて……私……お願いします……」
涙声で、何度も繰り返した。
繰り返すたびに、言葉の意味が遥の中に染み込んでいくような気がして、それがひどく恐ろしかった。”普通”という言葉。”入れてください”という言葉。自分の口が、自分の意思とは関係なく、ひろしの望む形に整えられていく感覚。
ひろしがゆっくりと立ち上がった。
その動作が、遥の心拍を跳ね上げる。今まで距離があった。それが、縮まる。
「お前が頼んだんだからな。ちゃんと覚えておけ。俺が強制したんじゃない。お前が自分の意志で、そう言ったんだ」
遥は何も言えない。
否定したかった。違う、頼んでいない、強制された、そう言いたかった。でも声が出なかった。喉の奥で詰まって、代わりにただ息が震えるだけだった。
ひろしの影が、遥の上に落ちる。
硬い床の冷たさが、剥き出しの皮膚に当たっている。遥は両手を自分の下腹部の前に持ってきて、反射的に隠そうとした。しかしひろしの指が、そっとその手首を払いのける。
「今さら隠すな」
低い声だった。威圧感があった。遥の手は、力なく落ちた。
ひろしがゆっくりと身を屈める。その体重が、遥のすぐそばに来る。熱がある。男の体の熱が、遥の肌のすぐ近くに感じられた。それが現実感を持って、全身に怖気を走らせる。
遥は両腕を胸の前に引き寄せようとした。しかしそれも、静かな声ひとつで制された。
「腕を退かせ」
命令の言葉に、遥の身体が条件反射のように従ってしまう。それが一番怖かった。意識が抵抗しているのに、身体が先に動いてしまう。震えながら、腕を横に落とした。自分の身体が、もう自分のものではないような感覚があった。
ひろしの視線が、遥の全身をゆっくりと辿る。まるで所有物を確認するような、静かで冷酷な眼差しだった。遥はその視線に晒されているだけで、首のつけ根から耳のあたりまでが熱くなる感覚があった。羞恥だった。ただの羞恥だった。それ以外の何物でもなかった。
遥は目を閉じた。
このまま意識が遠のけばいい、と思った。だが現実は、そんなに都合よくできていない。皮膚の感覚は、嫌になるほど鮮明だった。ひろしの手が、遥の膝に触れた。その感触が、電気のように全身を緊張させる。
「……っ……」
声にならない息が漏れる。拒絶でも、受容でも、快楽でもない。ただ、未知のものへの恐怖が喉を詰まらせた、そういう息だった。
ひろしの手が、遥の内側の柔らかい部分をゆっくりと確かめるように動く。その指の感触が、遥の皮膚を粟立てる。気持ち悪い、という感覚が最初に来た。男の指の、硬い感触。自分の肌とは違う、異質な温度と質感。
遥はきつく唇を噛んだ。
全身の筋肉が、拒絶しようとして硬直する。膝を閉じようとする本能的な反応が走ったが、ひろしの手がそれを許さなかった。静かに、しかし確実に、遥の脚の自由を奪ったまま動いている。
「泣いていいぞ。誰にも聞こえない」
その言葉は、ひどく残酷だった。
泣いていい、という許可を与えることで、泣くことしかできない状況をはっきりさせる言葉だった。遥は唇をわなわなと震わせながら、嗚咽を必死に噛み殺した。泣きたくなかった。これ以上泣いたら、自分が完全に崩れてしまう気がして。
ひろしの肉棒の熱さが、遥の秘部に触れた瞬間、遥は今夜初めて本当の意味で絶叫しそうになった。しかし喉から出てきたのは、細い、蚊の鳴くような音だけだった。
未知の、圧倒的な存在感。
熱い。硬い。脈打っている。それが遥の身体の、これまで誰にも触れられたことのない場所に当たっている。そこが自分の身体の一部だということを、今この瞬間初めて意識する、という奇妙な感覚があった。
遥の喉の奥から、自分でも予期しない音が漏れた。
「……っ……ぁ……」
声ではなかった。息だった。恐怖と緊張が限界まで高まったとき、身体が勝手に逃がした空気。それだけのことだった。それだけのことなのに、ひろしが静かに口の端を持ち上げる気配がして、遥の羞恥は更に深く、重くなった。
下腹部に、じわりと痛みに似た圧迫感が広がる。
痛みではなかった。まだ、痛みではない。ただ、何か大きなものが自分の身体のすぐ近くに存在しているという、圧倒的な異物感だった。遥はそれが怖かった。怖いとしか言えなかった。身体の奥が本能的に収縮して、この侵入を拒もうとしているのが分かった。しかしひろしは動じない。
「力を抜け」
静かな、冷たい声。
遥は力の抜き方が分からなかった。恐怖で全身が硬直している。膝の裏が、爪の先が、喉の奥までもが、強張って固まっている。それを「抜け」と言われても、どうすればいいのか分からない。ただ、涙が頬を伝い落ちるだけだった。
「声を出すなよ。外に聞こえる」
ひろしは静かに告げる。
遥は唇を引き結び、目を強く瞑った。全身が恐怖で硬直している。膝が、足の指が、何かを掴もうとするように細かく震えていた。
答えは分かっていた。自分が万引きをしたから。それだけのことで、今夜の全てが始まった。その事実が、腹の奥でひどく重く澱んでいた。
身体も心も、すべてをさらけ出して。
必死の抵抗もむなしく、遥は己の意思で屈辱の頂点を越えていった――。
ここまで読んでくれてありがとう
選択を変えれば、結末は変わります。
別のルートを試すか、他の物語へ。



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