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【処女喪失・羞恥】会社のパソコンの閲覧履歴を見られた、うぶなOL・遥:vol.1(昼休みの履歴)
▶ 選んで結末が変わる物語(全12話・6結末)
昼休みの経理課には、遥のほかに誰もいなかった。みんな外へ食べに出て、戻ってくるのは一時近くになる。遥はコンビニのおにぎりを机の端に置いたまま、パソコンのブラウザを開いた。お気に入りの奥に、一つだけ名前を変えて入れてあるページがあった。
官能小説を無料で読めるサイトだった。一か月前、取引先の社名を調べていて、たまたま行き着いた。最初は驚いて閉じた。けれど翌日、気がつくとまた開いていた。それから毎日、昼休みの三十分だけ、遥はこっそり続きを読むようになった。
二十四年間、恋人がいたことは一度もない。キスもしたことがない。会社の飲み会で恋愛の話になると、いつも笑ってごまかしてきた。知らないことばかりだった。その知らないことが、画面の中には全部、書いてあった。
今日の話は、年上の男に初めてを教わる女の人の話だった。男の指がどこに触れるのか。女の人がどんな声を出すのか。読みながら、遥は膝をぎゅっと閉じた。スカートの中が、じわりと熱くなっていくのが分かった。
会社でこんなふうになるなんて、どうかしている。分かっていた。それでも、続きを読む指は止まらなかった。太ももを擦り合わせると、下着が湿って肌に貼りつく。遥は小さく息を吐き、画面をもう一行だけ送った。
廊下で足音がした。遥は慌ててブラウザを閉じ、表計算の画面を開いた。入ってきたのは隣の課の女性で、忘れ物を取りに来ただけだった。遥は何事もなかった顔で、おにぎりの包みを開けた。心臓が、うるさいくらい鳴っていた。
午後、全社にメールが届いた。来週からセキュリティの点検を強化します。業務と関係のないサイトの閲覧は控えてください。送り主は情報システム課だった。遥はそのメールを、何度も読み返した。指先が、少し冷たくなっていた。
大丈夫、と自分に言い聞かせた。何百人もいる会社だ。一人ひとりの画面なんて、誰も見ていない。そう思うことにして、遥は伝票の山に向かった。数字を打ち込んでいるあいだだけは、昼休みのことを忘れていられた。
定時を少し過ぎたころ、誰かが遥の机の横に立った。顔を上げると、紺のカーディガンを着た細身の男だった。首から下げた社員証に、情報システム課、久住とある。何度か、プリンターの修理で見かけたことがあった。
「経理の、遥さんですよね」
少しいいですか、と久住は小さな声で言った。周りに聞こえないように、気をつかっている声だった。遥の背中を、冷たいものが走った。断る理由が見つからず、遥は立ち上がって、久住のあとについていった。
連れていかれたのは、フロアの端の小会議室だった。久住は扉を閉め、ブラインドの角度を少し変えてから、一枚の紙を机に置いた。細かい文字が並んでいた。日付と時刻、そして、ページの題名だった。
上から順に読んで、遥は息ができなくなった。初めての夜。教えてください、先生。声を聞かれて。どれも、遥がこの一か月、昼休みに開いていた話の題名だった。端末番号の欄には、遥の席の番号が並んでいた。
久住は向かいの椅子に座り、何も言わずに遥の顔を見ていた。責める目ではなかった。かといって、笑っている目でもなかった。遥は紙の上に視線を落としたまま、唇を噛んだ。耳の奥で、自分の脈の音が鳴っていた。
▶ 別の道へ飛ぶなら
→ 「すみません、もうしません……っ」
(このまま読み進めてもOK)
「……全部、見たんですか」
声が震えた。久住は少しだけ目を伏せ、それから正直に答えた。題名は全部見た。点検の仕組みが、そういう種類のサイトを自動で拾う。拾ったものを確かめるのが、自分の仕事なのだと言った。
それから久住は、紙の端を指で叩いた。この記録は、もう消してあります。上には報告していない。この紙も、ここで破って捨てる。ただ、会社の端末で開くのはやめてください。次は、自分以外の誰かが見るかもしれないから。
遥は膝の上の手ばかり見つめていた。報告されないと分かって、少しだけ息ができるようになった。けれど、恥ずかしさは少しも減らなかった。この人は、全部の題名を読んだのだ。自分が毎日、何を読んでいたのかを。
「中身も……読みましたか」
聞かなければよかったと、言ってから思った。久住は少しのあいだ黙っていた。それから、一つだけ開いた、と答えた。危ないページでないか確かめるために。いちばん最後に開かれていた話を、一ページだけ。
今日の昼休みに読んでいた話だった。十いくつも年上の男が、何も知らない女に一つずつ教えていく物語。遥の頬が、一気に燃えるように熱くなった。あの一ページを、この人も読んだ。自分が膝を閉じて読んでいた、あの場面を。
久住は破った紙を、さらに細かく裂いてポケットにしまった。話はそれだけです、と言って立ち上がりかける。遥はとっさに、その袖を掴んでいた。自分でも何をしているのか分からなかった。久住が驚いた顔で振り返った。
「あの……変だと、思いましたか」
二十四にもなって、ああいうものを会社で読んでいる女。そう思われたのではないかと、遥は怖かった。久住は袖を掴まれたまま、ゆっくりと椅子に座り直した。思っていない、と静かに言った。誰にでも、知りたいことはある。
ただ、と久住は続けた。読むなら家で読んだほうがいい。それだけだ。そう言って、久住は少しだけ笑った。目尻に細い皺が寄った。この人は、こんな顔で笑うのかと、遥は思った。プリンターを直していたときは、一度も笑わなかった。
その笑顔を見た瞬間、遥の脚の間が、またじわりと熱くなった。昼休みの続きのような熱だった。この人が、あの一ページを読んだ。読んで、何を思ったのだろう。考えるほど、身体の奥がざわついて落ち着かなかった。
遥は袖から手を離し、膝の上で両手を握りしめた。スカートの中が、はっきりと湿っていた。こんなときに、と思う。こんな話をしているときに。それでも、熱は引かなかった。知りたい、という気持ちが、恥ずかしさの下から顔を出していた。
小会議室の外で、誰かが帰りの挨拶をする声が聞こえた。フロアの人の気配が、少しずつ減っていく。久住は腕時計を見て、遅くなるから、と言いかけた。遥は顔を上げた。言うなら今しかないと思った。
ここまで読んでくれてありがとう
選択を変えれば、結末は変わります。
別のルートを試すか、他の物語へ。




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