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【騎乗位】自分で腰を沈めるしかない遥:vol.2(自分で外すボタン)
小さなボタンは、指先が震えるせいでなかなか穴を抜けなかった。ひとつ外すたびに喉元から鎖骨へ、蛍光灯の冷たい光が降りてくる。跨ったままなので、ブラウスの前が開いていく様子は、真下に寝そべる堂島の目にそのまま映っているはずだった。遥は男の顔を見ないように、壁の時計の秒針だけを見つめて三つ目、四つ目と外していった。最後のひとつが抜けると、薄い布は肩から自然に滑り落ち、白いブラだけが残った。
「それもだ」と言われ、背中に回した手がホックを探る。翔太の前でさえ、明かりを消してからでなければ外せなかったものだった。金具が外れた瞬間、締めつけが緩んで、小ぶりな胸がわずかに揺れた。肩紐を腕から抜き、丸めたブラを畳の上に落とすと、遥は両腕で胸を隠そうとして、途中で止めた。腕で隠せば、腰が止まる。止まれば終わる。遥は両手を膝の上に戻し、男の視線の下で、裸の胸を晒したまま腰を前へ滑らせた。
指先で胸の先に触れられたわけではない。それなのに、男の視線が乳首の上で止まるたびに、そこから下腹へ細い糸が引かれるような感覚が走った。前へ滑らせると、スウェットの布地が濡れた下着をさらに奥へ押し込み、後ろへ戻すと、布の擦れる感触が脚の付け根に残る。裸の上半身を晒したまま腰を揺らしている自分の姿を、遥は想像しないようにした。想像した瞬間、腰の奥がまた勝手に縮んで、下着の湿りが一段と重くなったからだ。
乳首が冷えた空気に触れて、痛いほど固くなっているのが分かった。堂島の目がそこに止まり、ゆっくりと下へ降りていく。たくし上げたスカートの奥で、湿った綿の下着が男のスウェットに貼りついている。「ずらせ。自分の指でな」。言われて遥は腰を少し浮かせ、右手を自分の脚の間へ伸ばした。指先が下着の縁に触れると、布は重く、自分がどれほど濡れているかを、指で確かめさせられる格好になった。
縁をつまんで横へ引くと、湿った肌が部屋の空気にさらされて、冷たかった。誰にも見せたことのない場所が、四十を過ぎた男の真上で、薄く口を開けている。堂島は何も言わなかった。ただ、胸の上のストップウォッチを顎で示しただけだった。液晶は四分十秒を示していた。遥は唇を噛み、下着をずらしたまま、剥き出しの場所を男のスウェットの上へ下ろした。厚い布越しでも、さっきより熱がはっきり伝わってきた。
「次は俺のを出せ。手でだ」。遥の手が止まりかけ、それでも腰だけは揺らし続けた。灰色のスウェットのゴムに指をかけると、思ったよりずっと固く引っかかる。男が腰を浮かせてくれることはない。遥は自分の体を後ろへずらし、両手でゴムを引き下げていった。下着ごと太ももの途中まで下ろしたとき、押さえつけられていたものが跳ね上がるように起き上がり、遥の手首に重く当たった。
遥の手首に当たったものは、驚くほど重かった。慌てて手を引こうとして、引けば腰が止まることに気づき、遥は手を引かずにそのまま膝で前へ進んだ。剥き出しになった男の下腹は、白髪の混じった茂みの上に、浅黒い幹が反り返るように立ち上がっている。下ろしたスウェットが男の太ももに絡まり、そのだらしない格好が、かえってこの部屋の現実感を強くした。
初めて間近に見る男のものは、想像していたよりずっと太く、浅黒く、血管が浮いていた。先端には透明な滴が光っている。翔太のときは暗がりで、目を閉じたまま受け入れようとして、怖さだけが先に来た。いまは蛍光灯の真下で、何もかもが見えている。「握れ」。遥は息を止めて指を回した。手のひらに伝わる熱と脈の強さに、思わず指がほどけそうになる。握った手の中で、男のものがわずかに跳ねた。
「それを、自分で当てろ」。三分五十秒。遥は握ったまま腰を浮かせ、膝立ちで男の真上に身体を運んだ。太ももがまた震え出し、膝の下で古いソファが沈む。片手で下着の縁を押さえ、もう片方の手で男のものの角度を自分のほうへ向ける。先端が濡れた場所のどこに触れているのか、自分の目で確かめなければならなかった。見下ろした先で、浅黒い先端が、自分の薄い襞のあいだに押しつけられていた。
握ったまま、遥はしばらくそれを見つめていた。手のひらの中で、男のものはさらに硬さを増していく。動かない男の身体の中で、ここだけが生きもののように脈を打っている。親指の腹が、先端の滴に触れてしまい、ぬめりが指に移った。遥はその指をどうしていいか分からず、ただ男のものを握ったまま、自分の脚の間の濡れた場所と、手の中の濡れた先端とを見比べた。
触れたところから、焼けるような熱が下腹へ駆け上がった。ほんの少し体重を預ければ、それはもう入口を押し広げ始める。翔太のときに身体を竦ませた、あの裂けそうな予感が、腰の奥でゆっくりと形になっていく。けれど今は、誰にも押し込まれていない。どこまで、どのくらいの速さで沈めるかは、遥自身の膝が決めることだった。堂島は相変わらず指一本動かさず、濁った目で結合の寸前の一点だけを見ている。
先端の熱が、入口の襞を通して、身体の内側にまで染み込んでくるようだった。ほんの少し腰を揺らすと、丸みが濡れた溝を上下になぞり、遥の膝はそれだけで崩れそうになった。翔太のときは、こんな近さまで来ることさえできなかった。暗がりの中で目を固く閉じ、相手の重さに押しつぶされるような怖さに、ただ身体を固くしていただけだった。今は、自分の手で角度を決め、自分の膝で深さを決めている。
壁の向こうで、誰かがドアを閉める音がした。遥は小さく肩を震わせ、それでも先端を離さなかった。ストップウォッチの数字が、三分三十秒を過ぎていく。「……ここから、どうすれば」と震える声で訊くと、堂島は「好きにしろ。俺は動かん」とだけ答えた。遥は男の先端を自分の入口に当てたまま、膝に力を込め、最初の一ミリを沈めるかどうかの境目で、息を詰めた。
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