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【店長の脅迫】万引き一度の過ち:vol.40(遥と三人の男たち)
「次」という言葉が、部屋の空気を変えた。
ベッドの縁に座らされたまま、遥は息を整えることもできなかった。太ももの内側には、まだ舌の湿った感触が残っている。閉じようとした膝を、ひろしの視線が制した。
エアコンの低い唸りが、天井から降ってくる。それに混ざって、誰かの荒い息が、いくつも重なっていた。
眼鏡をかけた小太りの男が、手の甲で口元を拭いながら、ゆっくりと顔を上げた。レンズの奥の目は充血し、焦点が定まらない。ひろしが先ほど耳打ちした「まだ女を知らない」という言葉が、その落ち着きのない仕草に、生々しい輪郭を与えていた。
他の二人の男は、ネクタイを緩めながら、すでに遥の左右に腰を下ろしている。三人の体温と汗の匂いが、狭いベッドの縁に、逃げ場のない壁をつくっていた。
「遥。ブラウスのボタンを、上から外していけ。自分の手でだ」
ひろしの声は、命令というより、当然の手順を告げているようだった。
「……そ、それは……できません……」
喉から漏れた声は、かすかな息にしかならなかった。
「できない、か」
ひろしはカメラを下ろさないまま、もう一方の手でスマートフォンを取り出し、画面を遥に向けた。
映っていたのは、便所の個室で震える、自分の指先だった。小さな音声が流れる。
「あの映像、大学の連中に送ってやってもいいんだぞ。お前がどんな顔で、どんな声を出してたか。ゼミの連中は、きっと喜ぶ」
遥の指が、ブラウスの一番上のボタンにかかった。
指先が震えて、小さなボタンが、なかなか穴を通らない。ひとつ外れるたびに、ベッドの縁に座る三人の呼吸が、少しずつ荒くなっていく。
二つ目。三つ目。
胸元の名札が、指に引っかかって、かちりと小さく鳴った。「高橋」の二文字が、オレンジ色のスタンドの光を受けて、ささやかに光る。
白い布地の隙間から、汗ばんだ肌と、薄い下着の縁が覗いた。
「もっと開けろ。カメラに見えるようにな」
ブラウスの前が、大きく開かれる。布は肩から落ちる寸前で、腕に絡みついたまま止まった。
ブラウスの布が腕に絡み、肘から先の自由を奪う。自分で開いたはずの襟が、もう自分では閉じられない形になっていた。
冷えた空気が、露わになった胸元を撫でた。
左に座った男の喉が、鳴った。
その男の手が、遥の肩へ伸びる。太い指が、はだけたブラウスの縁を、確かめるようになぞった。
遥は、身を縮めた。逃げようとした背中に、右側の男の腕が回る。
右の男が、鼻先を遥の首筋へ寄せる。「石鹸と、汗と。若い子の匂いだ」低い声が、耳の裏をなぞった。
遥は、顔をそむけた。だが、そむけた先には、左の男の目があった。どちらを向いても、視線がついてくる。
「いい匂いがするな、この子。バイト帰りか」
汗と、洗剤の匂い。仕事の後の身体を、そんなふうに嗅がれることが、たまらなく耐えがたかった。
「……やめて……ください……触らないで……」
「三人とも、お客さんだ。ちゃんと、もてなさないとな」
ひろしが、笑いを含んだ声で言った。
ストッキングの裂け目に、右の男の指が入り込む。一度裂かれた黒い繊維は、指の力に負けて、さらに大きく口を開けた。
「もっと、手で破いてやれ」
布が裂ける乾いた音が、膝から太ももへと、ゆっくりと駆け上がっていく。
ストッキングの繊維は、白い肌の上で細い格子になって割れ、その隙間に、指の腹が、次々と押し込まれる。
ひろしが、ベッドの足元へ回り込み、カメラの位置を低くした。「足元から撮るぞ。全部、入るようにな」
遥の爪先が、シーツを掴んだ。白い布が、指の間で皺を寄せる。
オレンジ色のスタンドが、シーツの皺の一本一本に、細い影を落としている。その影の中で、遥の膝が、何度も閉じかけては、押し開かれた。
遥は、唇を噛んだ。裂け目から覗く肌に、男たちの視線が、ひとつずつ貼りついていくのが分かった。
眼鏡の男は、まだ動けずにいた。膝の上で握りしめた拳が、細かく震えている。
「震えてるな」左の男が、面白そうに言った。「寒いのか。それとも」言葉の続きは、笑い声に紛れた。
遥は、答えなかった。答える言葉を、持っていなかった。
「ところで、名前は。ちゃんと名乗らないと失礼だろう」ひろしの声が、背後から飛ぶ。
「……遥、です……」
「遥ちゃんか。いい名前だな」左の男が、舌の先で唇を湿らせながら繰り返した。
自分の名前が、他人の口の中で、知らない生き物のように転がる。それが、ひどく気持ち悪かった。
「大学生なんだって? どこの大学だ」右の男が、指を止めないまま尋ねる。
遥は、唇を閉ざした。答えれば、その場所に、この男たちの影が落ちる気がした。
「言えないか。まあいい。ゆっくり聞いてやるさ」
「おい、童貞くん。ぼうっとしてないで、見ろ。目の前だ」
「あ、あの……いいんですか、本当に……」
上ずった声が、おどおどと、ひろしへ向けられる。
「いいに決まってるだろ。お前のために、来てもらったんだ」
その言葉に、遥の胸の奥が、冷たく沈んだ。自分が、この男のために「用意された」のだという事実。
眼鏡の男が、遥の前に膝をつく。先ほどまで唇で触れていた場所へ、また顔が近づいた。
熱い息が、下着の布地を通して、肌に届く。
遥は、目を閉じた。だが、閉じた瞼の裏でも、感触は消えない。
濡れた布が、肌に貼りつく感触。そこを這う舌の、ためらいがちな動き。左右から差し込まれる指。
三つの手と、ひとつの舌と、ひとつのカメラ。どこを見ても、視線の逃げ場がなかった。
自分の呼吸が、三人の呼吸と同じ間隔で上下していることに、遥は気づいた。気づいた瞬間、背筋に冷たいものが走った。
身体の奥に、また熱が灯る。
遥は、その熱を、なかったことにしたかった。だが、熱は皮膚の下で、確かに脈を打っていた。
指の腹が、内腿の柔らかいところを、往復する。触れられるたびに、皮膚のほうが先に、覚えてしまう。
それは、望んだものではなかった。屈辱と嫌悪の底で、皮膚だけが、勝手に触れ方を覚えていく。拒むほどに、布の下が濡れていく。
「見ろよ、こんなに濡らして」
左の男が、下着の縁を、指で引いた。
「……や……っ……見ないで……」
「見せてるのは、自分だろ」
眼鏡の男の呼吸音が、部屋のなかで、いちばん大きかった。押し殺したような息が、途切れ途切れに、遥の膝へ落ちる。
ひろしがカメラを近づける。レンズが、乱れたブラウスの胸元、裂けた黒いストッキング、腰まで捲れたプリーツスカート、そして白い下着の染みを、順番に舐めていく。
遥のスカートは、いつの間にか、腰まで捲り上げられていた。太ももの付け根を隠すものは、湿った白い布だけになっている。
時間の感覚が、また曖昧になる。この部屋に入ってから、どれだけ経ったのか。窓のないその空間には、時計さえなかった。
「そろそろ、いいか」
右の男が、呟いた。喉の奥が、乾いた音を立てている。
ひろしは、答えの代わりに、カメラの位置を少しだけずらした。
スタンドの光が、遥の頬の涙の跡を、細い線として浮かび上がらせていた。
誰かの指が、遥の髪をかき上げ、うなじに息が触れた。
「いい子だ」ひろしが、低く言った。「その調子で、今夜は全部、見せてもらう」
耳の奥で、自分の心臓の音が、部屋の低い唸りと混ざる。
眼鏡の男が、ゆっくりと立ち上がる。膝についた埃も払わず、震える手で、ベルトに手をかけた。
他の二人も、遥から手を離さないまま、それぞれのベルトへ視線を落とす。
金具の外れる音が、重なって、部屋に響いた。
三人の影が、壁に、大きく重なって伸びている。
露わになった肉棒の影が、遥の膝の上に、長く伸びる。
遥は、ブラウスの前をかき合わせることもできず、目を逸らすことも、できなかった。
ここまで読んでくれてありがとう
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