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【絶頂脱出】十回イくまで出られない部屋で、初めて潮を吹く遥:END(暗闇の中の名器)
替えないで、という遥の言葉に、黒瀬はしばらく動かなかった。遥の中に根元まで沈めたまま、じっとしていた。暗闇の中で、遥には黒瀬の顔が見えなかった。けれど、自分の中で黒瀬のものが、ひときわ大きく脈打ったのが分かった。
目隠しは、外さなくていいのか、と黒瀬が聞いた。遥は首を振った。外さなくていい。見えないほうが、全部、身体で分かる。黒瀬の形も、熱さも、脈も。見えないぶん、中で感じることだけが、遥の世界のすべてだった。
「このまま……見えないまま、最後まで」
黒瀬は、遥の両手を取った。指を一本ずつ絡めて、遥の頭の上のシーツに押しつける。両手を押さえられて、目も見えない。遥は、身動きが取れなくなった。動けるのは、腰だけだった。その腰の奥に、黒瀬のものが深く沈んでいた。
黒瀬が、ゆっくりと動き始めた。引いて、沈めて。見えない暗闇の中で、遥は、黒瀬のものの形を、中の壁でなぞっていた。反った幹。張り詰めた先端。三つ目の部屋の張り型と同じ形。けれど、全然違うもの。今はもう、間違えようがなかった。
遥は、さっきの当てっこを思い出していた。一度目は外した。黒瀬のものを、張り型だと思った。今なら、絶対に間違えない。中で跳ねるこの脈も、少しずつ角度を変えるこの動きも、張り型には決してできないものだった。
うなじのあたりに、ふいに柔らかい感触が落ちた。どこに触れられるか、分からない。分からないまま、首筋から耳たぶへ、耳たぶから頬へ、唇が移っていく。突かれながら、見えない場所に口づけられる。遥の中が、口づけのたびに、黒瀬のものを締めつけた。
唇が、遥の唇に重なった。初めてのキスだった。五つの部屋を抜けて、何度もイかされて、潮まで吹いて、それなのに、キスはまだ一度もしていなかった。遥は、暗闇の中で、黒瀬の唇を探すように、自分から顔を傾けた。舌が触れ合った。
「ん……っ、んん……」
キスをしたまま、黒瀬の動きが深くなった。遥の声が、黒瀬の口の中に吸い込まれていく。絡めた指に、力がこもった。遥は黒瀬の指を握り返した。見えない。動けない。けれど、怖くはなかった。黒瀬の指と、唇と、中のものが、遥を繋ぎとめていた。
十四。十五。壁の数字が変わる小さな音が、遠くで聞こえた。遥は、数を数えていなかった。暗闇の中では、どこからが一回で、どこまでが次なのか、分からなかった。ただ、黒瀬が突くたびに、身体の奥で、光のようなものが弾けていた。
黒瀬は、遥の手を離し、膝の裏に手を差し入れた。遥の脚を持ち上げ、自分の肩に担ぐ。角度が変わった。見えない遥には、それがどんな格好なのか分からなかった。ただ、先端が、さっきよりもずっと深いところに届いたのが分かった。遥の口から、悲鳴のような声が漏れた。
「深い……っ、どこまで、入って……」
全部、と黒瀬は言った。見えないから、分からないだろう。今、根元まで入っている。黒瀬の言葉が、遥の頭の中に、見えない光景を描いた。脚を担がれて、根元まで貫かれている自分。その光景を想像した瞬間、中が強く縮み、遥は大きな波に呑み込まれた。
噴き出したものが、黒瀬の腹にかかったのが分かった。見えなくても、温かいしぶきが肌を打つ音が聞こえた。遥は恥ずかしさに顔を覆おうとして、手がシーツの上を空しく掻いた。黒瀬はその手を掴み、自分の胸に当てさせた。速くて強い鼓動が、手のひらに伝わってきた。
黒瀬の動きが、乱れ始めた。黒瀬の吐く息が短く切れはじめ、腰の動きが小刻みになった。遥の手のひらの下で、黒瀬の胸が大きく上下していた。暗闇の中で、遥は、黒瀬が限界に近いことを、その鼓動で知った。見えなくても、全部分かった。
「黒瀬さん……中に……見えないまま、中に、ください」
黒瀬が、最後の数回を深く打ち込んだ。遥の脚を肩に担いだまま、根元まで沈めて、動きを止める。遥の奥で、熱いものが脈打ちながら、溢れ出した。見えない暗闇の中で、その熱だけが、まるで光のように、遥の身体の奥を照らした。
その熱に包まれて、遥はもう一度イった。今度の波は、静かで、深くて、いつまでも引かなかった。中が、黒瀬のものを最後まで絞り取るように、ゆっくりと締めつけ続けた。黒瀬が、遥の胸に額を押しつけて、長い息を吐いた。
どれくらいそうしていたのか、遥には分からなかった。黒瀬の重みと、汗の匂いと、まだ中に残っているものの熱。遥は暗闇の中で、それだけを感じていた。やがて、黒瀬がゆっくりと腰を引いた。抜けていく感覚のあとで、中から、温かいものがとろりと溢れ出した。
黒瀬の指が、遥の後頭部の結び目にかかった。外すぞ、と黒瀬が言った。遥は小さく頷いた。布がほどけ、目の上から滑り落ちた。部屋の明かりが、目に刺さった。遥は何度もまばたきをして、ようやく、目の前のものに焦点を合わせた。
黒瀬の顔が、すぐそこにあった。汗で前髪が額に貼りつき、目の縁が少し赤くなっていた。暗闇の中で、何度も想像した顔。想像よりも、ずっと優しい顔だった。遥は手を伸ばして、黒瀬の頬に触れた。初めて、見ながら触れた。
「……やっと、見えた」
黒瀬は少しだけ笑った。それから、窓のほうを顎で示した。観覧席は、最後まで空だった、と黒瀬は言った。遥は窓を見た。暗いガラスに、ベッドの上の二人が映っていた。誰にも見られていなかった。見ていたのは、暗闇の中の遥の身体だけだった。
受付で賞金を受け取ったとき、受付の女性が、黒い布を一枚、封筒と一緒に差し出した。ゲームマスターからです、と彼女は言った。遥はそれを受け取り、鞄の奥にしまった。帰りの電車で、遥は鞄の中に手を入れ、柔らかい布の感触を、指先でそっと確かめた。
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