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【絶頂脱出】十回イくまで出られない部屋で、初めて潮を吹く遥:vol.4(止まらない機械)
通常コースで、最後まで行きます。遥がそう答えると、黒瀬は、分かりました、と短く言った。その声が、少しだけ残念そうに聞こえたのは、気のせいだろうか。遥は張り型からゆっくりと腰を上げた。抜けきった瞬間、中に溜まっていたものがとろりと溢れ、座面を濡らした。
四つ目の部屋は、これまでで一番広かった。壁際に、低いベッドのような台が置かれ、その足元に、黒い金属の機械が据えつけられていた。機械の先からは、長い棒が伸び、その先端に、さっきと同じような肌色の張り型がついていた。棒は、台の上に向かって、斜めに構えられていた。
「……これ、動くんですか」
動きます、と黒瀬が言った。ピストンする機械です。四つ目の部屋の課題は、二回。台に仰向けになって、脚を開いて。位置を合わせたら、機械が自動で動きます。自分で止めることはできません。課題の回数に達したら、止まります。
自分で止められない。その言葉に、遥の脚の間がひくりと動いた。湿度の表示が、九十一、と光った。遥はスカートを脱ぎ、ブラウスの裾だけを残して、台の上に仰向けになった。膝を立てて、ゆっくりと脚を開く。機械の先の張り型が、脚の間のすぐ前にあった。
台の脇のボタンを押すと、棒がゆっくりと伸びてきた。先端が、入口に触れる。遥は息を止めた。棒はそこで一度止まり、それから、ゆっくりと押し込んできた。さっきの部屋で開かれた中は、張り型を抵抗なく呑み込んだ。奥まで届いたところで、棒が止まった。
始めます、と黒瀬が言った。機械が、低い音を立てて動き始めた。棒が引かれ、張り型が中から抜けていく。抜けきる寸前で止まり、また奥まで押し込まれる。一定の速さで、一定の深さで。人の動きではなかった。少しも乱れない、機械の動きだった。
最初は、ゆっくりだった。遥は台の縁を掴み、その動きに身を任せた。押し込まれるたびに、張り型の先端が奥に当たる。引かれるたびに、入口が擦られる。機械の正確さが、かえって逃げ場をなくしていた。どこに当たるか、いつ当たるか、全部分かっている。分かっているのに、毎回感じてしまう。
機械の唸りは、低く、規則正しかった。その音に合わせて、自分の身体が揺れる。人に抱かれているのとは違って、相手の息づかいも、汗の匂いもない。あるのは、冷たい金属の音と、自分の中を出入りする硬い感触だけだった。それなのに、身体は少しも冷めなかった。
「ん……っ、ん……」
声を我慢する。遥はそう決めていた。ここまで、声の上乗せはほとんどもらえていない。せめてこの部屋だけでも、と思った。けれど、機械の速さが、少しずつ上がり始めた。一往復が短くなり、奥に当たる間隔が詰まっていく。
締めつけの表示が、八十を超えた。湿度の表示は、九十五。遥は奥歯を噛みしめ、瞼に力を込めた。速い。さっきよりも、ずっと速い。張り型が奥を突くたびに、腰が台から浮きそうになる。浮かせても、機械は追いかけてきて、同じ深さまで突いた。
一回目の波が来た。遥は台の縁を握りしめ、声を噛み殺してイった。中が張り型を締めつけ、締めつけの表示が九十九で点滅した。壁の数字が、七、に変わった。声は、ぎりぎり基準以下だった。遥は大きく息を吐いた。あと一回。
機械は、止まらなかった。それどころか、速さがもう一段上がった。イったばかりの中を、張り型が休みなく突き続ける。遥は首を振った。待って、と言いかけて、口を閉じた。声を出したら、上乗せがなくなる。けれど、身体はもう、限界に近かった。
二回目は、一回目からほとんど間をおかずに来た。遥は台の上で背中を反らせ、声を上げた。我慢できなかった。中が張り型を何度も締めつけ、脚の間から、温かいものが噴き出した。二つ目の部屋と同じだった。しぶきが、機械の棒に当たって、床に散った。
壁の数字が、八、に変わった。声の表示は、赤い線を大きく越えていた。これで課題は終わり。遥はそう思った。けれど、機械は止まらなかった。張り型は、相変わらず同じ速さで、遥の中を突き続けていた。
「……と、止まらない……っ、終わった、はずじゃ……」
イヤホンの黒瀬が、静かに言った。課題の回数は、扉を開けるための回数です。機械が止まるのは、この部屋の終了の合図が出てから。終了の合図は、扉が開いてから三十秒後です。遥は扉の上を見た。ランプは、まだ緑に変わっていなかった。
三十秒が、永遠のように長かった。機械は休まず、遥の中を突き続けた。イったばかりの、敏感になりきった中を。遥は台の縁を掴み、腰をよじり、声を上げ続けた。三回目の波が、二回目の波が引く前に押し寄せた。壁の数字が、九、に変わった。
「やだ、もう、三回目……っ」
声に出してしまってから、遥は口を押さえた。回数を自分で数えて、自分で言ってしまった。イヤホンの向こうで、黒瀬が何かを書きとめるような気配がした。遥は台の上で身をよじり、両手で顔を覆った。
課題よりも多く、イかされた。遥はそれに気づいて、顔が燃えるように熱くなった。黒瀬は見ていないと言った。けれど、壁の数字は、黒瀬にも見えている。課題は二回だったのに、三回イったことを、黒瀬は知っている。
ようやく、機械が止まった。張り型が、ゆっくりと中から引き抜かれていく。抜けきった瞬間、遥の中から、溜まっていたものがどっと溢れ、台の上に広がった。遥は脚を閉じることもできずに、天井を見上げて荒い息をついていた。
扉の上の小さなランプが、ようやく緑に変わった。黒瀬の声が、四つ目の部屋、クリアです、と言った。合計、九回。最後の部屋の課題は、一回で足ります。遥はその言葉を聞いて、ぼんやりと思った。あと一回で、十万円。あと一回で、ここから出られる。
けれど、身体は、出たいとは言っていなかった。脚の間はまだ疼いていて、中はまだ、何かを求めてひくひくと動いていた。遥は台から起き上がり、濡れたブラウスの裾を引っぱった。最後の扉が、ゆっくりと開いた。その向こうの部屋には、明かりがついていた。
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