【絶頂脱出】十回イくまで出られない部屋で、初めて潮を吹く遥:vol.1(最初の部屋)

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【絶頂脱出】十回イくまで出られない部屋で、初めて潮を吹く遥:vol.1(最初の部屋)

▶ 選んで結末が変わる物語(全25話・6結末)

雑居ビルの五階でエレベーターを降りると、黒い扉に小さな金のプレートが貼られていた。会員制、と書いてある。遥はスマホの画面をもう一度確かめた。親友の美咲から届いた最後のメッセージは、ごめん、熱が出た、一人で行って、予約もったいないから、だった。

大人向けの体験型脱出ゲーム。美咲がどこかで見つけてきて、二人で行こうと言い出したのだった。賞金が出るらしい、と美咲は笑っていた。何が大人向けなのか、遥はちゃんと聞いていなかった。扉を開けると、薄暗い受付に、黒いシャツの女性が一人座っていた。

「あの、予約していた……二名の予定だったんですけど、一人になってしまって」

受付の女性は、構いません、と微笑んだ。それから、一枚の紙を差し出した。参加の同意書だった。遥はそれを読み始めて、三行目で手が止まった。各部屋の扉は、参加者が決められた回数の絶頂に達すると開きます。

遥は顔を上げた。受付の女性は、表情を変えずに説明を続けた。部屋は全部で五つ。合わせて十回。すべての部屋を抜けたら賞金十万円。部屋には声の計測器があり、決められた大きさ以上の声を出さずにその部屋を抜けたら、一部屋ごとに二万円が上乗せされる。

「……ぜ、絶頂って、その……」

はい、と受付の女性は頷いた。部屋の道具を使って、ご自身で。途中でやめたくなったら、どの部屋にも赤いリタイアボタンがあります。押せばすぐに扉が開き、ここに戻ってこられます。その場合、賞金は出ませんが、参加費はお返しします。

帰るべきだ、と遥は思った。美咲が何を考えてここを選んだのか分からない。けれど、十万円という数字が頭から離れなかった。それに、リタイアボタンがある。嫌になったら、押せばいい。遥は震える指で、同意書に名前を書いた。

受付の女性は、遥にインカムを渡した。片耳だけのイヤホンだった。ゲームマスターの声が聞こえます、と彼女は言った。そして、廊下の奥の、一つ目の扉を指さした。中に入ると、扉は背後で、かちりと音を立てて閉まった。

部屋は四畳ほどの広さで、壁も床も淡い灰色だった。真ん中に、黒い革張りの椅子が一脚だけ置かれている。マッサージチェアのような、座面の厚い椅子だった。壁の上のほうに、小さな数字の表示が二つ。一つは、ゼロ、と光っていた。もう一つの表示には、声、と書かれていた。

イヤホンから、男の声がした。ようこそ。ゲームマスターの黒瀬です。落ち着いた、低い声だった。最初の部屋の課題は、その椅子に座って、二回。下着は脱いで、座面に直接座ってください。座面に、センサーがあります。

「……下着、脱ぐんですか」

誰も見ていません、と黒瀬の声が言った。カメラは、安全確認のためのものが天井に一台だけ。映像は保存しません。遥は天井を見上げた。黒い小さなドームがあった。遥は少しのあいだ迷ってから、スカートの中に手を入れ、下着をそっと下ろした。

脱いだ下着を鞄にしまい、遥は椅子に腰を下ろした。革の座面が、むき出しの肌にひやりと触れた。スカートの裾を整えると、黒瀬の声が、始めます、と言った。その瞬間、座面が低く唸り、細かく震え始めた。

「ひゃっ……」

小さな声が漏れた。壁の、声の表示が、ぴくりと動いた。遥は慌てて口を閉じた。震えは座面全体から来ていた。けれど、一番強いのは、ちょうど脚の間が当たるあたりだった。そこだけ、少し盛り上がっていて、遥の柔らかいところに、ぴたりと押し当てられていた。

振動は、だんだん強くなっていった。最初はくすぐったいだけだったのが、少しずつ、脚の間の奥へ沁みこんでくる。突起の根元が、じんと痺れた。遥は椅子の肘掛けを握り、腰を浮かせようとした。浮かせると、振動が少し遠くなる。けれど、それでは扉は開かない。

遥は、腰を下ろした。もう一度、柔らかいところが振動に押しつけられる。今度は、逃げずに受け止めた。誰も見ていない。そう自分に言い聞かせた。誰も見ていないなら、恥ずかしいことは何もない。黒瀬の声も、今は何も言わなかった。

座面の震えが、波のように強弱をつけ始めた。強くなるたびに、腰の奥に熱が溜まっていく。遥は唇を噛んで、声を押し殺した。気づけば、腰がわずかに前後に揺れていた。突起が、一番強く震える場所を、自分から探していた。

波が来た。遥は肘掛けを握りしめ、声を喉の奥に押し込めたまま、身体を震わせた。腰が座面に押しつけられ、つま先が床から浮いた。壁の数字が、ゼロから、一に変わった。声の表示は、ぎりぎり、赤い線の手前で止まっていた。

一回目、とイヤホンの黒瀬が言った。声は基準以下です。遥は荒い息をつきながら、天井のカメラを見上げた。誰も見ていない、と言っていた。けれど、黒瀬は回数を知っている。声の大きさも知っている。それが、ひどく恥ずかしかった。

座面は、止まらなかった。イったばかりの脚の間に、振動が容赦なく押し寄せてくる。さっきよりも、ずっと敏感になっていた。遥は腰を浮かせかけて、また下ろした。座面の革が、自分の溢れたもので濡れて、ぬるりと滑った。

二回目は、一回目よりも早く来た。そして、深かった。遥は声を我慢しようとした。けれど、波が背中を駆け上がった瞬間、喉が勝手に開いた。短く、高い声が、狭い部屋に響いた。壁の声の表示が、赤い線を越えた。

「あっ……ん、っ……」

座面の震えが止まった。壁の数字が、二、に変わった。扉の上の小さなランプが、緑色に灯った。黒瀬の声が、最初の部屋、クリアです、と言った。声の上乗せは、なし。遥は椅子の上で、肩で息をしながら、緑のランプを見つめていた。

立ち上がると、座面に、濡れた跡がくっきりと残っていた。遥は慌ててスカートの裾でそれを隠そうとして、どうにもならないことに気づいた。壁の赤いリタイアボタンが、目に入った。今なら、まだ戻れる。遥はそのボタンを見つめてから、目を逸らした。

「……次の部屋に、進みます」

小さな声で言うと、イヤホンの向こうで、黒瀬が少しだけ笑ったような気がした。では、二つ目の部屋へ、と黒瀬は言った。扉が、音もなく開いた。その先の廊下は、さっきよりも少しだけ暗かった。

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