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【黒いゴースト催眠】操られる遥:vol.1(封鎖区画の実験台)
▶ 選んで結末が変わる物語(全11話・2結末)
二十七歳の研究員、遥は、地下三階の封鎖区画で人の形をした黒いゴーストを見た。廃棄予定の実験台の横。天井灯の届かない暗がりから、女とも男とも判別できない黒い輪郭が浮かび、青白い両目だけをこちらへ向けていた。
逃げようとした足が、床へ縫いつけられたように動かない。青い目が左右へゆっくり揺れるたび、遥の意識から帰り道と助けを呼ぶ言葉が抜け落ちた。黒いゴーストが指を動かす。すると身体は自分の意思に逆らい、古い実験台へ仰向けになった。
両手首と足首を革の固定具へ入れたのも、動かされた遥自身の指だった。透明な蓋が腹の上まで閉じる。監視画面へ黒い染みが広がり、催眠感度・第五段階という文字へ変わった。
「待って。設定が違う……」
返事の代わりに、黒いゴーストの声が頭蓋の内側へ直接流れ込んだ。
「青い光を見て。息を吐くたび、身体は素直になる」
天井の帯が青く染まった。右へ。左へ。また右へ。目を逸らそうとすると、固定具の内側が手首を浅く締めた。痛みはない。それでも逃げられないと分かった瞬間、呼吸だけが速くなった。
青い光が往復するたび、考えが薄く剥がれていく。十から逆に数えろと命じられた。十。九。八。七まで数えたところで、数字の順番が曖昧になった。まぶたが重い。身体の輪郭だけが、反対に鮮明になっていく。
首筋を流れた汗が、鎖骨へ届いた。普段なら意識もしない一滴だった。今は濡れた線が皮膚を引っ掻くように熱い。検査着が胸へ触れるたび、薄い布の繊維まで分かった。乳房の重みが左右へわずかにずれる。それだけで乳首が擦れ、下腹がきつく縮んだ。
「感度は五倍。羞恥はそのまま。声だけは抑えられない」
「そんな……聞いて、ない……」
言葉は途中で掠れた。黒いゴーストの身体が床へ溶け、何本もの長い腕へ分かれた。黒紫の影の腕は脈打つ肉のように膨らみ、透明な蓋の隙間から入り込んで遥の足首へ巻きついた。
冷たいと思ったのは一瞬だった。触れた場所から熱が染みた。ゴーストの催眠に上げられた感度が、その温度を何倍にも広げる。黒い影はふくらはぎを一周し、膝の裏へ滑った。柔らかな窪みを先端で押されただけで、遥の腰が寝台から跳ねた。
固定具が鳴った。足は開いたまま動かない。黒い影だけが、ストッキングの上をゆっくり這い上がる。繊維が擦れる細かな感触まで、皮膚の内側へ響いた。膝から太ももへ。内側の柔らかな肉へ。近づくほど、そこへ来るなという思いが強くなる。なのに腰は逃げる方向を失い、浅く浮いて黒い影を迎えてしまった。
黒い影の腹には、小さな吸盤が幾列も並んでいた。ひとつが肌へ触れるたび、丸い熱が残る。離れる瞬間には皮膚を軽く引かれ、その刺激まで増幅された。太ももには、見えない指で何度もつままれているような痺れが散った。遥は膝を閉じようと力を込めた。固定具はびくともしない。代わりに張りつめた筋肉の震えだけが、黒い影へ伝わった。
「抗うほど深く操られる。お前の鼓動も、呼吸も、もう私のものだ」
頭蓋の内側で声が響いた直後、黒い影の脈と遥の鼓動が重なった。一本が膨らむたび、胸の奥で心臓が強く打つ。次の脈では下腹が締まる。黒いゴーストに身体の拍子まで握られていた。速くなるなと念じるほど、脈は速くなる。そのたび内ももの熱も濃くなった。
透明な蓋の外では、記録用カメラの赤いランプが点いていた。映像は研究主任の端末へ送られる。そう気づくと、晒されている脚が急に重く感じられた。検査着の裾は腰までずれている。ストッキングに包まれた両脚の間へ、黒紫の肉が入り込んでいる。その姿が記録され続けていた。
遥は顔を背けた。だが天井の青い光は、どこを向いても視界の端へ入った。目を閉じれば声が近くなる。「見られるほど敏感になる」と囁かれる。開けばカメラが見える。どちらを選んでも、羞恥だけが身体を熱くした。
「やめて……そこは、だめ……」
青い光がまた横切った。嫌だと口にするたび、身体は言葉と逆の反応を覚える。そんな命令が、頭の奥へ静かに沈んだ。遥は否定しようとした。だが「嫌」という音を考えただけで、胸の先が硬く尖った。検査着の布が触れ、鋭い刺激が背中まで走った。
二本目の黒い影が脇腹へ入り込んだ。細い先端が腰の曲線をなぞり、胸の下で止まる。最初の一本は内ももを押し分けたまま、ショーツの縁へ丸い先端を当てた。布越しの圧だけだった。それなのに、増幅された神経は触れられた場所を熱い点として下腹へ刻んだ。
丸い先端は、すぐには動かなかった。遥が息を吐くたび、ほんの少しだけ圧を増した。吸うと緩み、吐くと沈む。催眠の呼吸に合わせ、黒い影が身体へ入り込む道を覚えさせている。深く吐くまいとしても、胸に巻きついた二本目が肋骨を締めた。堪えきれず息を吐く。そのたび、下着の上の熱が深くなる。
先端が一度だけ沈んだ。遥の喉から短い声が漏れた。もう一度。今度は布の上を数センチ滑った。自分の湿り気が内側へ広がるのが分かる。黒い影の粘液ではない。何も入れられていない。強く擦られてもいない。それでも身体だけが、先を急ぐように熱を増していた。
胸元へ回った黒い影が、検査着の合わせ目へ潜った。冷たい先端が素肌へ触れる。感度を上げられた乳房は、その一触れで大きく震えた。黒い影は丸みを下から持ち上げ、硬くなった先端の周囲をゆっくり狭めていく。直接触れられる直前で止まり、焦らすように円を描いた。
遥は唇を噛んだ。触れてほしくない。だが止まったままなのも耐えられない。催眠の声が、その迷いを見透かした。
「欲しい刺激を、自分の口で命じて」
「言わ、ない……」
黒い影が胸から離れた。内ももの先端も止まった。刺激が消えた瞬間、増幅された身体には空白そのものが苦痛になった。熱だけが皮膚の下へ残り、触れられていた場所が次を求めて脈打つ。遥は首を振った。青い光が視界を横切るたび、拒む言葉が遠ざかる。
「では感度を、もう一段上げる」
監視画面の数字が六へ変わった。空調の風が検査着を揺らしただけで、胸と太ももに細い痺れが走った。遥は声を抑えきれず、喉を震わせた。止まっていた黒い影が同時に動く。一本は胸の先端へ。もう一本は濡れたショーツの縁へ。細い先が布の内側へ潜り込もうとしていた。
ここまで読んでくれてありがとう
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